2022-01-01から1年間の記事一覧

フォードが作ったATG映画!

ジョン・フォード『肉弾鬼中隊』 原題の方がいいと思いますが… フォードが初めて作った戦争映画が、ATG級の低予算映画であった。という事実は、今やほとんど知られていないのではないでしょうか。 上映時間も70分に満たない作品であり、登場人物もほぼ分隊の…

早すぎたニューシネマ!

ジョン・フォード『捜索者』 ジョン・ウェインが演じた役の中でも最も異様なキャラクターであろう、イーサン。 ジョン・フォードの傑作西部劇にして、恐ろしく歪んだ異形の作品。 ジョン・ウェインが演じるイーサンという男の、アメリカ文学の古典、メルヴィ…

スピルバーグの父はフォードであった!

ジョン・フォード『周遊する蒸気船』 前半のオフビート感(ジム・ジャームッシュの出現の遥か前です!)、からの後半のチキチキマシン猛レースへの見事な転換。 しかも、メインテーマは冤罪で逮捕された甥の救出。という、コレだけでは何の事だがわからない…

サイレント期に馬を主人公にした映画が作られていたのです!

ジョン・フォード『香も高きケンタッキー』 なんと、馬が主人公のお話しなのです! サイレント期のジョン・フォードを見ている人って、もうあんまりいないと思いますし、そもそも、ジョン・フォードの映画見ている人がいないような気がするのですが、コレは…

1950年代の狂気を描いた痛快作!

ジョン・カーペンター『クリスティーン』 「不死身の自動車」が襲いかかる。というアイディアがとにかく素晴らしいですね! カーペンターという人はとにかくうまいとしかい言いようのない、真のアルチザンですね。 1970-80年代にハイペースに作られた諸作は…

現在の日本の問題がすべて網羅されているのが、フォードの最終作であるという事実に驚嘆せざるを得ない。

ジョン・フォード『荒野の女たち』 アメリカ映画とは、ジョン・フォードの事なのである。コレほど多くのジャンルを作り上げた映画監督は皆無であろう。 巨人ジョン・フォードが最後に作った映画。 驚きました。 なぜならば、とんでもない傑作であり、かつ、…

ギリシャ史にして「映画史」!

テオ・アンゲロプロス『エレニの旅』 時代に翻弄される、エレニとアレクシスのお話しです。 邦題が「そうなのか?そんなに旅してないけど」という気がしますけども、まあ、それはそれとして。 アンゲロプロスが3部作の第1作として発表した作品で、相変わら…

今こそ見るべきアンゲロプロス作品!

テオ・アンゲロプロス『こうのとり、たちずさんで』 映画製作中に交通事故で惜しくも2012年に亡くなった、テオ・アンゲロプロスの1991年作。 テオ・アンゲロプロス監督。 アンゲロプロスの初期の作品、とりわけ、『旅芸人の記録』、『狩人』、『アレクサンダ…

これぞドライヤーの傑作です!

カール・テオドア・ドライヤー『奇跡』 デンマーク、ひいては映画史に名を残す巨匠の最高傑作。 購入したパンフレットを見ると、ドライヤーかんとはチャップリンと同い年なのですね(1889年生まれ)。 カール・テオドア・ドライヤー監督。若い頃はジャーナリ…

石原慎太郎がこんな軽佻浮薄な小説を書いてたんですね(笑)しかも川島雄三が映画化

川島雄三『接吻泥棒』 石原慎太郎原作の小説の映画化ですけども(松山善三が脚色)、東京都知事の頃の彼しか知らない人には、この猛スピードで展開するラヴコメディとあのタカ派政治家はほとんど結びつきません(笑) なんと、カメオ出演してます(笑) ちな…

手塚治虫オマージュが込められた室町時代のロッキーホラーショー!

湯浅政明『犬王』 なんなのだ、この大傑作は! とにかく浴びるように映画館で見るべし! スマホで見るなど論外です。 「浴びる」事でまずは全身を感動させ、然る後にディテールを確認するためにサントラやDVDで隅々までチェックする。 コレが本作を見るため…

おじさん達の涙腺を刺激しまくるまさかの痛快作!

ジョセフ・コシンスキー『トップガン マーヴェリック』 まさかの続編がとうとう公開です! この作品の続編を望んでいた人はほとんどいなかったと思いますし、やる必然性もほとんど感じなかったです。 正直なところ言いまして、トム・クルーズが続編を作りた…

2022年、なんでスパークスが急に注目を浴びているのか?

レオス・カラックス『アネット』、 エドガー・ライト『スパークス・ブラザーズ』 現在のスパークスのお二人。左が兄のロン、右が弟のラッセルのメイルズ兄弟です。この2人を不動のメンバーとするのがスパークスです。 スパークスというロックバンド、という…

ようやく日本でも全国公開となりました!

ロベール・ブレッソン『湖のランスロ』 いきなりこんな殺伐とした映像の連続で始まります! 12世紀後半の詩人、クレティアン・ド・トロワによる『ランスロまたは荷車の騎士』という中世の物語詩を主な原作とする、孤高の映画監督、ロベール・ブレッソンの197…

ベン・アフレックのあのラストシーンを表情!必見です!!

ガス・ヴァン・サント『グッド・ウィル・ハンティング』 主人公のウィル(Will)があのような環境で良い意志(Good Will)を得る(Hunt)のは難しい。というダブルミーニングのタイトルです。 ガス・ヴァン・サント監督は、どうも題材が苦手で見ていませんでした…

ハウス・オブ・イヌガミ!

市川崑『犬神家の一族』 『エヴァンゲリオン』でも使われた、おなじみの文字組みです。 コレほど、もうすっかり見た気になってしまう古典は現在ないでしょうね(古典というのは、そういうモンですけど)。 しかし、実際に見てみると、あのスケキヨ。と認知さ…

なぜ、トランプ政権は出現したのか?を描く傑作伝記映画!

アダム・マケイ『Vice』 下院の実習生でしかなかったディック・チェイニーは如何にして最高権力を手に入れたのか? コレはですね、『Don’t Look Up』と合わせて見る必要があると思います。 このViceとは何なのか?と言いますと、vice-presidentの略でして、…

人類は危機に於いて団結できるのか?

アダム・マケイ『Don’t Look Up』 もし地球に巨大な隕石が100%の確立で衝突し、地球上の生物を残滅させる事がわかったとしたら? と、なんだかどこかで見たことがあるような設定ですが(笑)、マケイ監督は、「絶対に人類は団結しない!そんなのはウソ!」と…

レジェンド級の傑作に挑んだスピルバーグに拍手を!

スティーヴン・スピルバーグ『West Side Story』 アーサー・ローレンツ脚本、スティーヴン・ソンドハイム作詞、レナード・バーンスタイン作曲による、1957年に初公演されたミュージカルを、1961年にロバート・ワイズ版、ジェローム・ロビンス振り付けによっ…

衝撃のゴダール的わらしべ長者話でした(笑)

クリント・イーストウッド『クライ・マチョ』 なんでこんな素っ頓狂なタイトルなのか?は見てのお楽しみなのです。 イーストウッド監督作品をすべて見ましたが、コレはイーストウッド作品史上、最も緩い作品です(笑) いやー、驚驚くべき冒頭シーンでした。…

リドリー・スコットによる『蜘蛛巣城』!

リドリー・スコット『ハウス・オブ・グッチ』 見ていてすごく驚いたんですよ。 80歳を過ぎたリドリー・スコット監督が全く枯れていないんですよ。 2022年1月で84歳。未だに創作意欲が衰えない、リドリー・スコット監督。 このところ、映画の制作ペースがイ…

2021年、年間映画ベスト!

2021年年間映画ベスト(同不順) 【新作】 原一男『水俣曼荼羅』 ジェイムズ・ガン『ザ・スーサイド・スクワッド』 クエストラヴ『The Summer of Soul』 シドニー・ポラック『アメイジング・グレイス』 フレデリック・ワイズマン『ボストン市庁舎』 ロド・サ…

アリーサの光と影を描いた秀作!

リースル・トミー『リスペクト』 アリーサ・フランクリンは、ソウル史上最高の女性ヴォーカリストです。 まず、この点を押さえておきたいのです。 飛行機恐怖症であった事もあり、アリーサは2018年8月16日に亡くなるまで(なんと、エルヴィス・プレスリーと…

スパッと90分で終わる、川島雄三の遺作!快哉!

川島雄三『イチかバチか』 本作の公開前に亡くなった川島雄三。享年45歳。 川島雄三の遺作にして、なんと社会派。 本作の公開の直前に自宅で急死してしまいました。 もともと、難病のALSを抱えながら映画監督をしていたんですよね。 しかし、そういうものを…

水俣病は実は何も解決していないのです!

原一男『水俣曼荼羅』 強烈な映画を撮り続ける原一男監督は拍子中するほど穏やかでユーモラスな方です。 制作年数なんと20年!(編集だけで5年かかったそうです)、上映時間6時間を超える超大作ドキュメンタリー。 2021年に、フレデリック・ワイズマン『ボス…

アメリカの伝説的人物のエピソード1をアニメ化!

レミ・シャイエ『カラミテイ』 コレは驚きました! とにかく、何の予備知識もなしに映画館に行くことをオススメしたい。 なので、見たい人はコレは見てから読んでくださいね。 いいですかな? では、続けます。 フランスとデンマークの合作映画の西部劇しか…