2020-01-01から1年間の記事一覧

座頭市シリーズ史上、最も凄惨な傑作!

勝新太郎『新座頭市物語 折れた杖』 『顔役』に続き、勝新太郎が監督、主演した、おなじみ座頭市。 『顔役』のあまりの凝りっぷり、ナチュラルな壊れっぷり(故に愛さざるを得ないのですが)への酷評に反省したのか(?)、勝新太郎最大の当たり役である座頭…

香港というアジアの楽園を撮った快作!

陳果(フルーツ・チャン)『香港製造Made in Hong Kong』 1997年に香港が中国に返還される年に公開された、いわゆる「返還三部作」の第1作目。 香港映画の魅力は、やはりというか、あの香港というカオス的な空気感が画面の中に見事に捕らえられている事であ…

アホっぽいタイトルに油断することなかれ!

スティーヴン・ヘレク『ビルとテッドの大冒険』 2020年にまさかの続編が公開される、まだ無名時代のキアヌ・リーヴス主演の作品。 ロックスターになりたいのにギターがロクに弾けないビルとテッド(笑)。 タイムトラベルものなのですが、『バック・トゥ・ザ…

勝新太郎度120%の振り切れた怪作!

す勝新太郎『顔役』 1971年に公開された、製作、監督、主演、脚本がすべて勝新太郎という、大阪ヤクザの抗争に介入していく型破りな刑事を描いた映画。というと、おお、なかなか面白そうじゃないですか。と思いますよね、普通。 しかしですね、この映画はそ…

タランティーノが多大な影響を受けた大傑作!

セルジオ・レオーネ『Once upon A Time in The West』 そんな映画あったっけ?in Americaの間違いでは?といわれそうですが、たしかにこの映画は存在しており、in The Westなんです。 タイトル通りの西部劇なのですが、マカロニ・ウェスタンの監督が、このジ…

本作をもって巨匠と呼ぶにふさわしい監督になったのではないか。

奉俊昊(ボン・ジュノ)『パラサイト』 アカデミー賞受賞式のボン監督。 カンヌでパルムドール、アカデミーで作品賞を取ってしまった作品。 しかも、アジアでの作品でアカデミーで作品賞を取ったのは史上初。 アカデミー賞というのはグラミー賞と同じで、ア…

永遠の映画少年の遺作にしてまたしても問題作!

大林宣彦『海辺の映画館キネマの宝箱』 いやもう、圧倒されました。 大林宣彦は長編デビュー作『HOUSE』から常に問題作を作り続けていたんですけども、遺作までもが問題作とは! およそ、その穏やかなタイトルからは微塵も読み取れないような、躁病的な実験…

ボン・ジュノは最初からボン・ジュノだった!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『ほえる犬は噛まない』 『グエムル』でも活躍するぺ・ドゥナ。 奉監督の長編デビュー作であり、彼の作品は見たものはすべて好きなのですが、私はコレが一番愉快で好きですね(笑)。 韓国のとある団地で起こる珍事件を描いた、一体ど…

猟奇的な事件をある種のユーモアを交えて描く傑作!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『殺人の追憶』 1980年代から90年代にかけて、実際に起こった連続殺人を元に作られた衝撃作。 シリアルキラーものそれ自体は、アメリカなどで既に多く作られてきたので、それ自体は目新しさはないのですが、その描き方がとても新鮮で…

変化とは単線的には起こらない。

ジャ・ジャンクー(賈樟柯)『長江哀歌』 自らの故郷である、山西省(黄河中流域)を描くことの多い賈監督が、タイトル通りに長江の、しかも、なかなか中国では取り上げにくい題材と思われる、三峡ダムの建設によって水没していく事運命の町を舞台とした傑作…

3つの世代を通じて描かれる、韓国現代史!

キム・ボラ『はちどり』 長編第1作との事ですが、普通、処女作というのは、やったるぞ感となんでも盛り込みすぎ気味をどんな監督でもやってしまうものですが、この風格と余裕と完成度には相当度肝を抜かれましたね。 キム・ボラ監督。 1994年の夏から秋にか…

レノンとモローによる『シン・突然炎のごとく』

グレタ・ガーヴィク『Little Women』 この原題でないと、ラストの意味が失われるので敢えてこうしました。 幾度となく映像化されてきた、ルイーザ・メイ・オルコット『若草物語』の映画化。 何の予備知識もなく見始めた最初の印象は、正直、 「なんだかいそ…

今こそイマヘイ作品のバイタリティを!

今村昌平『赤い殺意』 動物をメタファーとして使うのが実にうまいですね。 1960年代の今村昌平の映画はすべてオススメですけども、たまたま見返した本作は、やっぱり凄かったです。 今となっては、ソープオペラ的な題材でしかないかもしれませんが(事実、何…

コレはニーチェの運命愛の映画である!

イ・チャンドン(李滄東)『ペパーミント・キャンディ』 もはや、現代を代表する巨匠の一人である、イ・チャンドン。 イ・チャンドンはそんなに多くの映画を撮っている人ではないのですが(脚本家であり、小説家でもあるので、そちらの仕事がむしろ多いです…

『じゃりン子チエ』の手法を更に過激に推し進めた傑作

高畑勲『ホーホケキョ となりの山田くん』 こんなスカスカな絵をスムーズに動かすのは、正気の沙汰ではない。 「もうリアリティは極めた」とし、線のヨレ、色のムラをそのまんま活かした動画。という言葉にしてしまえば簡単ですが、実際の作業はほぼ冥府魔道…

カーニー監督は「ココロのマッサージ師」である。

ジョン・カーニー『シング・ストリート』 日本での劇場公開3作目ですが、カーニーは一作も外れなく、すべてオススメですね。もうとにかく素晴らしいという他ない。 アイルランド出身でダブリンを舞台する作品でどれも低予算なのですが、青春映画としてすべ…

峰岸徹オンステージな痛快作!

大林宣彦『ねらわれた学園』 2020年に惜しくも亡くなった大林宣彦の角川映画の痛快青春映画。 『時をかける少女』が余りにも有名で、その陰に隠れてしまった感がありますがこちらも傑作です。 眉村卓の、現在で言うところのラノベを原作としますが、コレも筒…

喜劇的としか言いようのない悲劇!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『母なる証明』 ポン・ジュノが『グエムル』の次に放ったのは、なんと、知的障害を持つ冤罪事件でした。 キム・ヘジャ演じる母親の熱演が見事でした! コレが熊井啓なら、超がつくシリアスに、野村芳太郎だったら、後味がものすごく悪…

まさかのエリントン映画でした!

ミシェル・ゴンドリー『うたかたの日々』 ボリス・ヴィアンの同名小説を、天才PV監督が忠実に映画化。という説明で実はすべてが完結している映画だと思います(笑)。 それでは味も蓋もないので、もう少し説明いたしますが、ビョークが世界的な大スターにな…

単なるモンスター映画どころか韓国映画を代表する傑作!

奉俊昊(ボン・ジュノ)『グエムル』 『パラサイト』によって、アジア人で初めて、アカデミー作品賞、脚本賞という主要部門を受賞しただけでなく、カンヌ映画祭でパルム・ドールまでも受賞してしまったポン・ジュノですが、彼の名が、世界規模となったのは、…

『シン西部戦線異状なし』と言ってよいでしょう。

ピーター・ジャクソン 『They Shall Not Glow Old』 ピーター・ジャクソンと言えば、かの『指輪物語』3部作という、空前の大作を作り上げまた監督ですが、もともとはB級ホラー映画を撮っていたニュージーランド人監督でした。 そんな彼がトールキンの世界的…

またしても見てしまいました!しかも復元バージョンです!

セルジオ・レオーネ『Once Upon A Time in America』補論 この、ただコーヒーを飲むだけのシーンがヌードルスの凄みを表現してますね。 実は、完全版を見た後に、更に20分ほどのレオーネが泣く泣くカットしたシーンを補った、ホントの完全版がある事を知りま…

少年時代の美しさを描いた超大作!男の子は必見です!!

セルジオ・レオーネ『Once Upon A Time In America』 現行版はレオーネ監督が最終的にオーケーしたバージョンで、なんと、3時間50分もある大作です。 ニューヨークのユダヤ人ゲットー中心としたお話しです。 セルジオ・レオーネは、『Once Upon A Time In〜…

ヒトラーとチャップリンは紙一重なのです。

トッド・フィリップス『JOKER』 アーサー・フレックはいかにしてジョーカーとなりしか。 「このモンスターはいかにして生まれたのか?」を作って大失敗した双璧が『スターウォーズ』1~3部と、『羊たちの沈黙』の前日譚、『レッド・ドラゴン』でしょう。 それ…

2019年の映画ベスト!

特に順位はありませんが、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』と『JOKER』が特に凄かったですね。最近見たというのもありますが。 前者は今後、ますます評価が上がっていくでしょう。単なるシーン追加ではなく、全く別の作品であり、同じシーンやセリ…