2019-01-01から1年間の記事一覧

『東京オリンピック』はこうして見よう!

市川崑『東京オリンピック』 1964年第18回オリンピック東京大会を撮影した、市川崑を代表する作品であり、最晩年に監督の意図する通りの作品としてデジタル・リマスターされ、更に再編集を行ったものが、現行版です。 自らカメラを回す、市川崑。 当時、オリ…

トラヴィス→ミシマ→トーラー

ポール・シュレイダー『魂のゆくえ』 ホアキン・フェニックスが狂気の悪役、ジョーカーを演じて話題となった『JOKER』。 DCコミックスを代表する悪役キャラクター、ジョーカー、というよりも、クリストファー・ノーラン監督による『バットマン』3部作におけ…

祝!スパイク・リー復活!!

スパイク・リー『ブラック・クランズマン』 1979年をお話を敢えて1972年に変えて映画化しています。 『ドゥ・ザ・ライト・シング』、『マルコムX』という強烈なインパクトを与える作品を撮りながらも、その後はあまりパッとしない作品を作り続け、知らないう…

音楽使い方がヌーヴェル・ヴァーグとはまるで違う!

パヴェウ・パヴリコフスキ『COLD WAR あの歌、二つの心』 ズーラとヴィクトル。 映像を見て驚きましたね。 まるで、1960年代のポーランド映画みたいで。 ロマン・ポランスキとか、アンジェイ・ワイダの若い頃の作品を思い出しました。 絵作りは明らかに意識…

自殺願望の男を優しく見つめる傑作。

アッバス・キアロスタミ『黄桃の味』 驚きました。キアロスタミにはいつも驚かされますが、本作もまんまとやられましたね(笑)。 ジグザグ三部作がとても素晴らしかったので、コレも見てみたんですけども、予想を上回る面白さでしたし、またしても驚きの作…

シリアルキラーの日常を淡々と描く作品!

ジョン・マクノートン『ヘンリー』 「あー、なんだか疲れたなあ」 の後に、普通は「飲みに行く」とか「バッティングセンターに行く」「サウナに入る」「ジムに通う」などなどが入るわけですよね。 しかし、本作の主人公であるヘンリーさんは、「殺人」が入る…

1970年代のソウルミュージックを映像にしたような見事な作品!

バリー・ジェンキンス『ビール・ストリートの恋人たち』 ウィリアム・ボールドウィン(先ごろ、彼にちなんだドキュメンタリー、『私は二グロではない』が公開されました)の小説、『もしビール・ストリートが話す事ができたなら』の映画化。 前作『ムーンラ…

タランティーノ流ハリウッド、ひいてはアメリカ史への鎮魂作品。しかも多幸感満点!

クエンティン・タランティーノ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』 ディカプリオとブラピが冴えないハリウッド人を演じます。 面白かったですねえ。 またしても3時間近い大作ですが、今回は『デス・プルーフ』のような二部構成になっていて、…

アメリカの凄さがわかるドキュメンタリーでした!

フレデリック・ワイズマン『ニューヨーク公共図書館』 図書館は市の予算と寄付によって成り立っています。 3時間半近い大作ドキュメンタリーだが、全く飽きなかった。 内容はタイトル通りで、ニューヨーク市の公共図書館はどういうものなのかを淡々と見せる…

娯楽映画は90分で充分!

三隅研次『剣鬼』 大映はタイトルカットがいつもカッコいいですよね。 剣三部作の第3作目にして、最高傑作。 三隅研次は大映を代表する職人監督ですが、その彼の代表作は何か?と問われたら、本作を含めた剣三部作を挙げない人はいないでしょう。 『斬る』(1…

フォークナー→村上春樹→イ・チャンドン

李滄東(イ・チャンドン)『バーニング』 イ・チャンドンの8年ぶりの新作。 原作は村上春樹の短編『納屋を焼く』で、コレを韓国に置き換えて、坡州(バジュ)を舞台にしたお話となってます。 もともと、NHKが村上春樹の短編をドラマ化するというプロジェク…

ブニュエルは最後までブニュエルであった(笑)。

ルイス・ブニュエル『欲望のあいまいな対象』 フェルナンド・レイの語る、奇妙なお話し。 最後のシュルレアリストにして、うなぎのような反骨精神を貫いたブニュエルの遺作。 と言っても別にそんなに重く受け止める必要はなく、シルベルマン/カリエールと組…

オーソン・ウェルズのシェイクスピア劇の集大成!

オーソン・ウェルズ『オーソン・ウェルズのフォルスタッフ』 愛すべき怪人、フォルスタッフ。 シェクスピアのいくつかの戯曲に出てくる、架空の巨漢の騎士、サー・ジョン・フォルスタッフを主人公とした、ウェルズの主演・監督作。 お話しの大枠としては、ヘ…

政府による壮大なヤラセ!

ピーター・ハイアムズ『カプリコン1』 火星へ向けて打ち上げられる花火られる「カプリコン1」 コレは面白かった! 70年代のアメリカ映画は私の好みにバッチリ合いますが、コレも最高でした。 本作はNASAの宇宙開発をめぐる、とんでもないヤラセ事件(実際に…

じゃない方の『クラッシュ』です!

ポール・ハギス『クラッシュ』 この映画の事を全く知らないまま、テレビでの放映で見ました。 ロサンジェレスの一日の出来事を、特定の主人公なしに、かなりの登場人物が複雑に絡み合いながら、進んでいく作品で、キャスティングはなかなか豪華ですが、それ…

この作品でゴダールは作風を確立しました。

ジャン=リュック・ゴダール『気狂いピエロ』 この斬新なデザインは後世に計り知れない影響を与えましたね。 https://youtu.be/ZXiFjS9uLTQ 2019年に89歳となるにもかかわらず、未だに作品を発表し続ける孤高の天才ゴダールの、1960年代の最高傑作(というこ…

「後味悪い映画」の中でもコレは相当な上位なのではないか。

野村芳太郎『疑惑』 おなじみの、野村芳太郎の松本清張映画ですが、今回の見どころは、なんと言っても、桃井かおりと岩下志麻のぶつかり合いですね。 バディものでもライバル対決でもないという、かなり異色のドラマです。 というのも、桃井かおりは富山県の…

今村昌平が蘇ってきたような濃厚なドラマでした!

イ・チャンドン『oasis』 2002年の作品で、『シークレット・サンシャイン』の前作です。 この監督は一作ごとの入魂の度合いがハンパではなく、それが寡作にならざるを得ない最大の原因ですが、本作の入魂度は、1960年代の今村昌平に匹敵する凄さがあります。…

サム・ペキンパーもビックリな凄絶な戦争映画です!

岡本喜八『血と砂』 経営が傾いてきた東宝を救うべく、三船敏郎は、三船プロダクションを設立し、数百人の従業員を抱える経営者となりました。 コレが、時間拘束がとても長い黒澤明との仕事を困難にしてしまった。というのが映画評論家春日太一氏の説ですが…

内田吐夢の怒りが見事な様式美に昇華した快作!

内田吐夢『浪速の恋の物語』 とにかくね、後半がすごいの。 タメにタメまくった飛脚問屋の婿養子である、中村錦之助の鬱憤が大爆発。 近松門左衛門の『冥途の飛脚』などを原作とした、この頃の内田が連作していた作品の一つなんですけども、どうも評価されて…

ゴダール初期の怪作!

ジャン=リュック・ゴダール『女は女である』 すんごい(笑)。 こんなに音楽というものが出鱈目に貼り付けられている映画というものがあるのだろうか。 私はゴダールの作品を20本も見てないと思いますが、こんな素朴な疑問がムツカシそうなゴダールを批評し…

3作すべて見ることをオススメします!

アッバス・キアロスタミ『そして人生はつづく』 『友だちのいえはどこ』の撮影を行ったコケル周辺が1990年に、大地震の被害を受けました。 なんと、死者は約3万人以上! その安否を確かめるために映画監督(キアロスタミではなく役者が演じてます)とその息…

まるで松竹映画見ているようであった。

アッバス・キアロスタミ『オリーブの林をぬけて』 『友だちのいえはどこ』に感銘を受けたので、早速次々作(実際にはドキュメンタリーを劇映画の合間にも撮っているので、正確な言い方ではない)を見ました。 なんと、またしても舞台は同じコケル。 映画監督…

とにかく見せ方のうまさに感心しました。

クレイグ・ギレスピー『アイ、トーニャ』 正直、そんなに期待して見たわけではないんですけども、コレがめちゃくちゃ面白かったですね。 ナンシー・ケリガン選手が、リレハンメル・オリンピックの直前に何者かに殴打された事件は、まあ、大々的に当時騒がれ…

ベルイマン的な抉りのすごい映画を久しぶりに見ました!

イ・チャンドン(李滄東)『シークレット・サンシャイン』 寡作な監督なので、実は全く知らない監督でした。 新作の『バーニング』(なんと、原作は村上春樹の中編です)の前々作で、2007年公開です。 イ監督は、脚本家、小説家、プロデューサーでもあるので…

アクションなしでもフリードキンはすごい!

ウィリアム・フリードキン『真夜中のパーティ』 ハリウッド映画で、恐らくは真正面からゲイをテーマとした最初の映画。 あの大傑作『フレンチ・コネクション』の前年に公開されたのが本作というのが驚きですねえ。 70年代のフリードキンは、まさに絶頂期と言…

タヴィアーニ兄弟+戦前の小津安二郎=アッバス・キアロスタミ

アッバス・キアロスタミ『友だちのいえはどこ?』 コレはホントにうまいなあ。と見ていて何度も唸りましたね。 タイトル通りの内容が展開していく、90分に満たない短い映画なんですけど、8歳の少年には、自分の住んでいる集落コケルから隣の集落のポシュテの…

B級感覚が戻ってきたイーストウッドの痛快作。

クリント・イーストウッド『運び屋』 ※公開直後ですので、写真はナシです。 現在、88歳のイーストウッドが久しぶりに自作の主演に復帰して撮ったのは、90歳の麻薬の運び屋。をモデルとした作品。 イーストウッドは、昔から大学教授や写真家という、どう見て…

久々のウディ・アレン監督、主演!!

ウディ・アレン『ウディ・アレンの6つの危ない物語』 あらかじめ断っておきますが、本作は映画ではなく、アマゾンプライムでしか見ることのできないドラマでして、一本が大体25分くらいで、タイトル通り6作からなります。 久しぶりにウディ・アレンが主演を…

ノーザン・ソウルを知らなくても充分楽しめる青春映画の逸品!

エレイン・コンスタンティン『ノーザン・ソウル』 鬱屈したイングランドの街。 面白かった! 最高でした! ソウルへの愛に満ちた傑作!! 1970年代の、財政が慢性的に悪化して経済が停滞しまくっていたイギリスのドンヨリした感じがホントに素晴らしかった。…