ノーザン・ソウルを知らなくても充分楽しめる青春映画の逸品!
エレイン・コンスタンティン『ノーザン・ソウル』
鬱屈したイングランドの街。
面白かった!
最高でした!
ソウルへの愛に満ちた傑作!!
1970年代の、財政が慢性的に悪化して経済が停滞しまくっていたイギリスのドンヨリした感じがホントに素晴らしかった。
高校をドロップアウトして、ソウルミュージックにドップリと入れ込んでいく男の子たちのお話なんですけども、この、「ノーザン・ソウル」という、あんまり知られていない世界を扱っているのが、この監督の素晴らしさですよね。
扱っている音楽があまりにもマニアックだったので、映画を作るためのお金を集めるのがまず大変だったそうで、作ったら作ったで、単館で短い期間しか上映できなかったんだそうですけど、それを覆してお客さんがものすごく来てしまい、あっという間に上映館が増えていって、大ヒットとしまいました。
ちなみに、2014年のイギリス映画でございまして、日本での上映は、なんと、2019年になってようやくなのです。
しかも、上映館が少なすぎ!
さて。
この問題の「ノーザン・ソウル」なのですが、実は、アメリカの北部の方のソウルとかそういう意味ではないのでした。
ロンドンのレコード店で、サッカーを見にやってくるイングランド北部の人たちが、ヒットチャートなど目もくれず、黙々と聴いたこともないような60年代から70年代初頭のソウルのシングル盤ばかりを買いあさっていたんだそうです。
そのレコード店で、そういうレコードの事を「ノーザン・ソウル」と呼んでいて、それが一般的な呼称になっていったんだそうです。
ですので、ミュージシャンはほぼ無名であり、むしろ、有名である事を拒否すらしている、独特のカルチャーだったんだそうです。
そういうレコードを夜通し流して踊りまくる(時には、ドラックが結びついていました)という、北部イングランドのユースカルチャーなんです。
聴いた感じは、モータウンっぽい(60年代はモータウン全盛期です)、洗練度の低い、ちょっとB級なソウルなんですけども、そういう中にキラッと光る隠れ名曲があって、ノーザン・ソウルのDJは、そういうのを見つけると、ワザとシールを貼って、曲をわからないようにして、流していたんです。
停滞しきったイギリス経済の中でフラストレーションを発散するには、コレしかなかったのでしょう。
劇中で名前の知ってるミュージシャンは、フランキー・ヴァリとマーヴィン・ゲイだけでした(笑)。
そういう狭くて、かなりディープな世界を描いているものの、映画はそういうマニアックな知識は一切なくても、大変面白く、非常に優れて青春映画でありまして、でなければ、イギリスで大ヒットするはずもなく。
特に有名な役者は出てきませんが、イギリスの役者は基本的にみんな上手いですよね。基本ができているというか。
サントラが欲しくなりました。
公開したばかりなので、写真少なめです。