アート映画である事とエンタメ映画である事を絶妙に裏切る快作!

オリベル・ラシェ『SIRĀT』

 

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この親子の人探しが映画のスタートになります。

 


映画を見た。というよりも体験した。というのが適切な映画ですね。


カンヌで賞取りました。というのがウリなわけですけども、いわゆる、ゲージツ映画感は表面上あんまりしないように作ってます。


ただ、カンヌ受賞作はやっぱりアート作品ですので、よくよく見ますとちゃんとアートです。


「ネタバレさせんな!」的な圧がすごいですけども、あらすじ説明しても、「えっ、それ、おもしれえの?」というくらいにシンプルなので(それこそ、『さるかに合戦』級です)、監督の演出のほとんどは、「どう見せるのか」に心血を注いでおりますので、バレていようといまいと、見てみないとその面白さはわからないと思います。

 

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で、冒頭の「体験する」につながるんですけども、ラシェ監督の演出意図は、映画館という空間で体験することで、初めて感得できるもので、たとえば、自宅に100インチのミニシアターがあるという環境で、配信やDVDで鑑賞しても、多分、感銘度は落ちると思います。

 

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スマホ&ヘッドフォンで見たら、「なんじゃコレ。ただのB級映画じゃないか。おもろない」になるでしょうね。


この映画は、まずは、「映画館で体験する」という、今どき古風な鑑賞を要求する映画である事が、ある意味、コンセプチュアル・アートなところなのかもしれません。


しかし、映画それ自体は、特に後半部のかなり不条理な、しかしながら、ホントにそういう状況に追い込まれている人々が現在進行形で存在しているという、SF(凄絶に不条理)作品となってきます。


アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『恐怖の報酬』、ミケランジェロ・アントニオーニ『砂丘』、ジョージ・ミラー『マッドマックス 怒りのデスロード』、ミシェル・フランコ『ニューオーダー』という、どれも歴史的重要作でありながら、普通は同じカテゴリーに入る事は考えられないものが、なぜか矛盾なく同居しているポップ感覚、そして、冒頭のレイヴシーンだけでなく、全編にわたって使われる秀逸なサントラは、モロッコと思しき北アフリカの砂漠地帯の映像(実際に撮影はモロッコで行ったようです。しかし、作中はどこなのか特定してません)は、見事なまでにマッチしていて、この音を体験するためにも、映画館鑑賞は必須です。


本作はある種のロードムービーであり、しかしながら、同時進行で、ヨーロッパや北アフリカで戦争が起こっているらしく、どこか、アンドレイ・タルコフスキーの遺作、『サクリファイス』を思わせる、終末的な世界なのですが、この作品は北欧の小島の話ですけども、コチラは、北アフリカの砂漠地帯です。

 

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セッティングされたスピーカーの山と、その背後に巨大な岩が映る冒頭シーンは、否応なく、本作のテーマを表現しています。

 

「スピーカーの山」と「岩山」という、人工物の自然そのものの対比です。

 

本作は一貫して、自然と人工物、そして、生と死が対比的に表現されます。

 

舞台としての砂漠地帯は、ほぼ死の世界てあり、否応なしに登場人物たちの生を際立たせます。

 

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レイヴを砂漠地帯で行う。という事自体、ヨーロッパのある程度の経済的地位を持った人々が日々の生活で失われがちな人間が持っている「野生」を、「死」に近い場所で踊るという事で取り戻そうという行為ですが、それ自体への批判も、遊牧民の少年と登場人物たちが出会うシーンで描かれます。


また、タイトルである、「シラート」については冒頭で説明がある通りで、ある選択をしてしまった登場人物たちが受ける、かなりの報いがストーリーのメインになってくるのですけども、では、そうではない方を選択した、多くの人々は助かったのか?とは一切言ってません。


私は、救われているとは思えず、彼ら彼女らもまた、相当な受難の道になった事想像されます。


それは、ラストシーンにも言えていて、私には、全くの救われているように思えなかったですね。


線路の先が全くわからないまま、というか、砂漠しか見えない映像で終わるあの最後のショットは、更なる悲劇の到来しか見えてこない。


メキシコと思しき国に「新秩序」の誕生と「反逆者」の絞首刑のシーンで終わる、ミシェル・フランコ『ニューオーダー』と同じものに思えてなりません。

 

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NATO軍がチラチラとできますが、それが意味するところはあまり明らかになりません。


本作は極端な、言ってしまえば、「予算の潤沢なATG映画」にも見えますし、「低予算のSF映画」にも見える、面白い体験でしたが、その極端さゆえに、ある意味、いろんな現実的事象が当てはまる。すなわち、あの不条理は誰にでも当てはまりうるし、それは実際、現在進行形の出来事である事を言わんとしていたのではないでしょうか。


ゆえに、見るだけとか聞くだけでは足りなくて、体験しなくてはならない。そういう事なのではないでしょうか。


上映館はさほど多くなく、もう、上映が終わっていてもおかしくない7月の中旬の平日でも結構なお客さんがコンスタントに入っているというのは、その辺の事情が口コミレベルで着実に広がっているのかもしれません。

 

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スコシージがこんなにサラッとした映画を撮っていたのでした!

マーティン・スコシージ『The Color of Money』

 


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どうでもいいシーンですが、妙に記憶に残ります。


私が小中学生の頃、結構テレビで放送していた気がするんですけども、なぜか、ちゃんと最初から最後まで見た記憶がなくてですね、改めてブルーレイで見直しました。

 

新旧のスターを起用し、なんと、有名作品の続編を作りました(原題にはどこにも2とは書いてませんが)。というのは、多分、コレしかないですよね?多分。


結論からいうと、オリジナルの『ハスラー』は全く見なくてもいいと思います。


「ポール・ニューマン演じる、元ハスラーがかつては名うての凄腕だったんだけど、かなり前にリタイアしてしまった」という、劇中でわかる事実さえわかれば、何の支障もないように作っています。


つまりですね、続編のフリをした、スコシージのオリジナル作品と言っても差し支えないです。


しかも、原作を改変し、黒澤映画のようなニューマンとトム・クルーズの師弟関係がそのまんま、2枚目スターの世代交代になっているという、なかなかシャリコマに乗りつつも、偉大なる巨匠へのオマージュにもなっているのはさすがです。


まず、なんといっても、トム・クルーズのプリンプリンのフレッシュネスとやんちゃぶり!黒澤作品における三船敏郎の役割なのですけども、トムはひたすらにかわいいいのです。

 

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ヴィンス役のトム・クルーズ。こんなアホなTシャツを着てイキっているキャラとして登場します。


対する、志村喬にあたるポール・ニューマンは、案外、そのまんまかもしれません。

 

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黒澤明における、志村喬、三船敏郎は意識したと思われます。

 


ただ、黒澤作品にあるような、「オヤジ超え」を描いているように見せかけて、その実、「まだまだオマエには負けねえよ!」という映画なのであって、トム・クルーズを利用して、ポール・ニューマンの健在ぶりをブリブリにアピールする映画でもあり、その辺が一筋縄ではいきません。


ニューマンは初のアカデミー主演男優賞を受賞なのは当然でしょう。

 

80-90年代のスコシージ作品の、ものすごいシャープなカメラワークとキレキレの編集で見せる演出は冴えわたっていて、本作の1番の見せ場である、ビリヤードのシーンがとにかくカッコいい。

 

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静止画では全く伝わらないのが残念!


しかし、私が1番ココロ奪われた登場人物は、そのカッコイイ、ニューマンではなくて、ホンの5分くらいしか出てこない、フォレスト・ウィテカーであるのは、ご覧になった方にはわかりますよね?

 

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ウィテカーの登場シーンはホントに短いですが、全部持っていきますよ!


笑福亭鶴瓶を思わせる、ユーモラスな風貌で今もっていろんなタイプの映画に出演し続ける方ですけども、多分、彼が映画業界にその存在感、演技力をアピールしたのは、多分、本作じゃないですかね?


このシーンは中学校くらいの頃に日曜洋画劇場でやってたのを見た時にも同じ感銘を受けたんです!


まあ、トム・クルーズには、同年に、『トップガン』という、ウルトラメガヒットした映画があるので、もう、知名度は完全に世界規模ですから、この作品でそんなにアピールしなくてもいいですよね。

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説明無用の大ヒット作、『トップガン』!ヴァル・キルマーがよかったですねえ。シズル感がありすぎる映像が印象に残ります。


トムはこのまま演技派の道を歩む事もできたと思いますが、ある時点でそれを完全にかなぐり捨てて、脅威のアクションスター(そこまでやれって誰もいってなくね?でも、面白いです!)に変貌し、『トップガン』の続編すら作り、更に第3作目まで作ってしまうという(やっぱり、ホルムズ海峡ですか?)。


スコシージ的には、マスターピース級というわけでもないですし、彼にとっては余裕の作品なのでしょうけど、3人の役者のそれぞれにものすごくいい影響を与えた快作として、妙に忘れられない映画なんですよね。

 

配信ではDisney +という、ちょっとミスマッチなところでのみ視聴可能なので、ブルーレイで見るのが今は1番いいかもしれません。

 

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久々の更新です!しびれまくりの大傑作でした!!

ジャン=ピエール・メルヴィル『サムライ』

 

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アラン・ドロン演じるジェフ・コステロを一体どれほどの映画、アニメ、マンガがパクったことでしょう!


まあ、その。

タイトルはですね、フランス人が得意とする所の、「観念としての日本」というやつですね。

実際の武士道とかとは、別に関係ないでしょうし、そもそも、冒頭に出てくる文章の出典がよくわかりません(もし、出典わかる方いましたら、教えてください!)

 

が、冒頭の固定された、主人公ジェフ・コステロの自宅のショットは、ジェフの人間性を端的に示しており、そして、それは、凄絶なラストシーンをも想起させます。


カラー作品なのに、ほとんど色が意識されない映画なのもすごいですよね。


冒頭だけ見てると、てっきり白黒作品なの錯覚してしまうほどです。

 

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冒頭シーン。なにゆえにこんな部屋なのかは見ているとわかってきます。


断捨離?というか、ほとんど綾波レイみたいなワンルームのアパートに住んでいるジェフの自宅には、ほぼ生活感がなく、カゴの中のインコくらいが唯一ジェフに人間性みたいなものを感じさせるものです。

 

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インコちゃんはちゃんと活躍シーンがあるんです!


トレンチコートにソフト帽。というのが、どうも稼業である殺し屋(そうなのです。主人公は一匹狼の殺し屋なのです)のユニフォームであり、それが彼のこだわりらしいのですが、それ以外は極端なまでに部屋には何もないんですね。

 

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この帽子をかぶるシーンのカッコよさ!コレだけでモトが取れるというものです!


あとは、使っているのか不明の冷蔵庫とベットはありますけど。

土曜日に始まり、月曜日に終わる。わずか、3日の出来事を描いたドラマを、これ以上ないほどストイックに描いた映画はないでありましょう。

登場人物も、ジェフ以外には、愛人、ジェフを殺人犯と疑う刑事、ジャズピアニスト/オルガニストくらいなもので、それぞれの人物の内面は何ひとつ描かず、冷徹なまでに、それぞれの人物たちの知恵くらべを追いかけるんですね。

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ドラマの重要なカギを握る、ファム・ファタール。

 

全部合わせても、ジェフを演じるアラン・ドロンのセリフは一体どれだけでしょうか。


本作は、組織vs組織ではなくて、1人vs殺し屋組織&警察ですから(まあ、正確にいうと、ドロンには協力者がいるんですども)、明確な過失とかではなくて、疑惑レベルで双方から追い回されるのが、結構異色かもしれません。

 

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地下鉄を使ったサスペンスは、『フレンチ・コネクション』と双璧です!


こういう、勝ち目のない戦いを演じるアラン・ドロンの演技がもう、絶品という他なく、1960年代のヨーロッパ映画の寵児だったドロンの、ついにキャリアハイが叩き出された瞬間だと思います。そして、メルヴィルのしびれるような演出を見事にフィルムに焼きつけた、アンリ・ドカの極端にまで色調を抑えたキャメラ。

メルヴィルのストイシズムはアクションシーンにまで及び、全部合わせても、3分もないんじゃないのか?というくらいに少ないのですが、ゆえに無常感がより引き立ちます。

 

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その数少ないアクションシーンの1つ。どのシーンなのかは見てのお楽しみに!

 

この極端なまでのストイシズムに貫かれた美学を、「サムライ」と表現しているのでしょうけども、まあ、実際の武士というのはそんなもんじゃないですよね(笑)

とはいえ、この「素敵なウソ」を映画好きが愛さないわけにはいかないのである!

とにかく、しびれる、あこがれるゥ!!

とにかく映画館で見なさい。可能な限り。

と、映画館をジェフ・コステロのように静かに出るのであった。

 

 

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デイヴィッド・リンチの総決算的傑作です!

デイヴィッド・リンチインランド・エンパイア

 

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ローラ・ダーンがコレでもか!というくらいに出まくる映画です!

 

この作品は、リンチ作品の奥の院のようなものですから、この作品からいきなり見るのはやめた方がいいでしょうね。

ただ、虚心坦懐に見ると、この作品はストーリーの大まかな部分はそんなに難解ではありません。

これは、「囚われの身となった女性を、主人公が救出する」というものです。

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冒頭の隣人との会話からして、もう、リンチです!


ただ、リンチなので、冒頭からして、もう彼独特の魔術がありまして、「えっ?コレ、どうなってんの?どこからが映画の撮影なの?え?え?」となってしまい、「わけわらん映画」という映画になると思われます。


しかし、リンチ作品というのは、そういうプロットが大切なんじゃない。という事に何作か見る事で気がつけば、彼の作品はさほど難解でもないし、彼が言わんとする事はちゃんと見る側に伝わります。

 

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こういうシーンが唐突に最後まで何の説明もなく出てきます。複数の世界がやがてつながっているようないないような事が描かれていくのですが。


当時人物の、一見、意味不明、というか、あまりにもシンプルすぎると、唐突すぎる事でわからないセリフが実は、ほぼそのまんまの意味である、たとえば、本作だと、冒頭に出てくる隣人の「もし、今日が明日だとしたら、アナタはあの椅子に座っているでしょう」という、意味不明なセリフが、この作品の構造そのものをその通りに説明している。とかにも、『ツインピークス』とかで慣れてくると、本作はスンナリと入りやすいのですね。


その意味で、本作を見るにあたって少なくとも、テレビドラマで、最後に主人公が発狂して終わる、『ツインピークス』(そして、遺作となった完結編はその発狂後を描いてます)は見ておく事で、「リンチ文法」と言いますか、リンチの語り口を知っておく必要があるでしょうね。  


本作も、説明ができない異世界が何の気なしに出てきます(笑)

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映画監督役のジェレミー・アイアンズが出てくるシーンは、普通です(笑)

 

しかし、それはアタマで理解する事ではなくて。


そうではなくて、時間も空間もはちゃめちゃになっているこの3時間に及ぶ大作は、言うてしまえば、夢なのだ。という事に気がつくべきですね。


実際、夢って、唐突じゃないですか。


リンチの作品にほとんど一貫しているのは、この夢を見ているようなものとして、映画やドラマが作られていると言う事です。


だから、デイヴィッド・クローネンバーグ の『ビデオドローム』のようなドラッグを介した、正気と幻想の境界が壊れたもの。を、あくまでも理性で描くのではなくて、もう、丸ごと、リンチが見た夢をそのまんま映像化している。というものに近いのだと思います。

 

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この作品でも、どうやら、「囚われの女性」を救う。という行為は、どうも、俳優である主人公の救済にも見えますし、あの女性は主人公のココロの中にいるようにも見えるんです。

 

構造を敢えてあやふやなまま提示し、しかも、監督自身をあまり映画について、解説したり、説明する事をあまりしたがらないのは、1つの結論に収斂していく事を避けているのではなく、見る人それぞれに救済があり得るからであり、それはその人自身が自分で見つけ出す事なのだ。という考えがあるのだと思います。


なので、俳優たちにも完成した脚本は渡して、読ませる事はリンチの作品にはなく、その日に撮影するシーンの分の脚本しか渡されないので、全体像は役者全員はわからないまま、撮影するのだそうです。

 

本作を脚本が完成してから、撮影するのではなく、リンチの脚本が完成したところまでを撮り続けるというスタイルのため、当初は、プロデューサーもつかず、自分でキャメラを持って撮影しており、要するに、ほとんど自主制作映画でした。


しかし、主演のローラ・ダーンがプロデューサーを引き受けた事でスタッフも充実してきたようで、ものすごく贅沢な自主制作映画となりました。

 

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なんと、裕木奈江がでできます!結構重要な場面です!


リンチの初商業デビュー作は、何年もかけて資金を集めながら、自主制作した、『イレイザーヘッド』でしたから、ある意味で、最初と同じ体制を、しかも、それまでに培ってきたキャリアのすべてを注ぎ込んで作った、彼の映画監督としての総決算とも言える作品となりました。

 

よって、この後に長編映画を作る機会はいくらでもありながら、それが実現しなかったのも、ある意味納得でありますし、それくらいの映画です。

 

本作のすごさはどこにあるのかというと、手持ちカメラによる、異様なまでのヨリの絵の多さ(一体、ローラ・ダーンの顔のドアップのショットが何度出てくるのでしょうか)と、もう一つが、サウンドエフェクトです。

 

リンチ作品はある時点から、サウンドエフェクトを自ら担当しているのですが、本作は3時間もの間、サントラよりも、「ブウウウン」とか「ズズズズズズ」とか一貫して、通奏低音としてノイズが流れていまして、それを真っ暗な映画館の空間の中で浴びるように観客に聴かせる事を意図しております。

 

そして、その効果はホントに絶大で、ホームシアターでは得難い体験です。

 

できうれば、本作は劇場での鑑賞が必要であると思います。


DVDや配信で見るのは。あくまでも確認作業と思った方がよいかとおもいます。


2026年初頭に映画で上映されている4K リマスター版はリンチ自ら行ったものですので、是非是非、劇場で体験してください。


本作を見てチンプカンプンだった方が、そのまま『ツインピークス』や『マルホランド・ドライブ』を見るのも、いいかもしれません

 

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こんなアメリカはもう取り戻す事はできないのであろうか。

デイヴィッド・リンチ『ストレイトストーリー』

 

脳梗塞で倒れた兄に会うために、小型のトラクターに乗って、アイオワ州からウィスコンシン州まで時速8kmで進むという、ホントにそれだけの作品。

 

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シシー・スペイセク演じる娘と暮らす、老人のお話しです。


リンチからお得意の、謎のボスキャラ、変態的な犯罪者、異世界からの指令?みたいなのを全部禁じ手にすると、ピースフルなアメリカの内陸部の物語が残るわけですが、こうなると、特にファンでもない人にも安心してオススメできる映画なんですよね。


ブルーベルベット』を見て、「こんな気持ち悪い映画はない!」と、極度にリンチ嫌いになった、ピーター・バラカン氏でもこの作品は絶賛なのです。

 

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この、異常なまでにメインキャストの年齢の高い映画は、リンチが『ロスト・ハイウェイ』と、『マルホランド・ドライヴ』という、リンチ度を上げて全力で作った2本の間に位置していて、いい意味で、リラックスになった作品ですね。

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途中、様々な人々に出会い、助けてもらいながらゆっくりと進みます。

 


ツインピークス』を見ているとわかりますが、リンチはホントにじいちゃんが大好きで、特にそのスローな動きに並々ならぬ愛着があるようで、グレート・ノーザンホテルで働いている、巨人の化身であるおじいちゃんをワンショットで執拗に撮るシーンは、この作品の序盤の名シーンですけども、あそこまで、時間がドローン効果を出してはいませんが、ある意味、老人の時間の緩慢さへの愛着を、プロデューサーである元奥さんのアンダーコントロールの元で作られた、ロードムービーとしての完成度が非常に高い逸品だと思います。

 

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シロウトとおじいちゃんが大好き。という点で、フェリーニと似たような資質を持ってますね。

 


恐らくですが、前作『ロスト・ハイウェイ』は、かなりフルスロットルに、破天荒に壊れた作品だったので、興行収益が結構厳しく、リンチが今後も安定的に映画を撮るには、黒字を作ることができる監督である事も示さなくてはならなかった。という、かなりリアルな問題があったのではないかと思います。


そこで選ばれたのが、『ニューヨークタイムズ』で連載された、アルヴィン・ストレイト氏がトラクターで病気の兄のもとに行ったというエッセイをもとに、「じいちゃんロードムービー」を撮られせよう!という事です。


この映画はリンチの確かな演出力、そして、普通の映画も撮れる監督である事を世に示した、プロデューサーのメアリ・スウィニーの腕前による成功という側面が大きいですね。


そして、この成功がリンチの最高傑作とする評価もある(私はこの意見には賛同しませんが)、『マルホランド・ドライヴ』の大成功につながります。


そして、この成功をうけて、心底リンチが撮りたかったであろう、彼の映画作家としての総決算と言ってよい、『インランド・エンパイア』を撮ることができました。

 


ツインピークスの住民、というか、リンチの考えるアメリカ人というのは、こういう人なのだ。という、ホントに善良な人しか出てこない映画で、麻薬、アルコール、失業、ホームレス、移民との軋轢で、ボロボロのアメリカが取り戻さなくては、ならないのは、こういう世界なんじゃないのですか?と言いたくなります。

 

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ツインピークス』のエドが出演しているのは、嬉しいですね。


アルヴィン・ストレイトを演じた、リチャード・ファンズワースはアカデミー主演男優賞にノミネートされました。


しかし、ガンの苦しみに耐えかね、映画公開の翌年に自殺してしまいました。享年80歳。

 

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2025年、こんな映画を見ました!

2025年度映画ベスト

 

特に順位はありません。

しかし、『アノーラ』、『ワンバト』は群を抜いてますね。


【新作】

ショーン・ベイカー『アノーラ』

PTA『ワン・バトル・アフター・アナザー』

ジェームズ・ガン『スーパーマン

エアロン・シンバーグ『顔を捨てた男』

アリ・アッバシ『アプレンティス』

パトリシオ・グスマン『最初の年』(日本初公開なので)

ブラディ・コーベット『ブルータリスト』

エドワード・ベルガー『教皇選挙』

デイヴィッド・ヘルツォーク・デシテク『ミシェル・ルグラン

堀貴秀『JUNK WORLD』

モーガン・ネヴィル『ファレル・ウィリアムズ: ピース・バイ・ピース』

ウォルター・サレス『アイム・スティル・ヒア』

 

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【旧作】

デイヴィッド・リンチイレイザーヘッド』、『ブルーベルベット』、『ロスト・ハイウェイ』、『ストレイト・ストーリー』、『マルホランド・ドライヴ』、『インランド・エンパイア

エルンスト・ルビッチ『結婚哲学』

宮崎駿もののけ姫』、『崖の上のポニョ

深作欣二県警対組織暴力』、『北越代理戦争』

マーティン・スコシージ『Wolf of Wall Street 』

パトリシオ・グスマン『チリの戦い』

マノエル・ド・オリヴェイラアブラハム渓谷』

ブルース・ウェーバー『Let’s Get Lost』

フィリダ・ロイドマーガレット・サッチャー

ジャック・ドゥミロバと王女

石井隆『ヌードの夜』

呉美保『そこのみにて光輝く

イ・チャンドン『ポエトリー』

エリア・カザン『波止場』

ブライアン・デ・パルマミッション:インポッシブル

ジョン・ウーミッション:インポッシブル2』

J.J.エイブラムズミッション:インポッシブル3』

ブラッド・バードミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

クリストファー・マカリー『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』

クリストファー・マカリー『ミッション:インポッシブル フォールアウト』

ロバート・バトラージャグラー

PTA『ファントム・スレッド

市川崑細雪

 

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昭和はこんなにキワドイ映画を作っていたんです!

深作欣二県警対組織暴力

 


菅原文太広島県警の刑事。という、天地逆転映画ですが(笑)、結局のところ、県警はほとんどヤクザなので、実は、菅原文太の役回りは同じで(笑)、バディは松方弘樹です。

 

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結局、菅原文太のキャラクターは『仁義なき戦い』の広能と同じです。


というか、メインキャストが

ほぼ、『仁義なき戦い』なのでした(笑)


それにしても、こんなタイトルの映画、よく作りましたなあ。


ポパイとハリー・キャラハンが合体して、ほとんどヤクザ。というのが、菅原文太の役回りでして、それは、冒頭のシーンからハッキリとわかります。


出入りに向かう途中で、腹ごしらえをしているヤクザたちを待ち構えていた菅原文太が、「オマエらみたいなモンを逮捕しても、税金のムダや!はよ殴り込みに行って、死んでこいや!」と言うんですね(笑)


悪徳刑事とも違いまして、要するに組の抗争を絶妙にコントロールしているんです。


待ち伏せできているのも、対立する勢力のいずれにも警察という地位を利用して情報を得ているので、すべて筒抜けなんですね。


しかも、その事は、署内の刑事も制服組のみんなわかっているんです。


つまり、事実上、広島県の架空の町の警察がヤクザと癒着しつつ、彼らの利権を守りつつ、しかし、本格的な抗争になって、市民を巻き込まない程度にしているのが、菅原文太なんです。


そんなに腐敗してますか、広島県警(笑)


そんな町に、関西のヤクザが勢力拡大を狙っていて(実録ヤクザ映画というのは、ほとんどこの事が描かれます)、コレをなんとか排除して、組長の座を狙っているのが、松方弘樹であり、菅原文太は彼を男にするために活動するという、完全に天地が逆転してしまった、クリストファー・ノーランインセプション』の先駆的な作品です、ある意味で(笑)

 

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金子信雄は元組長で、この時は市議会議員です。市が丸ごと腐敗しているという、ほとんどゴッサムシティなのです(笑)

 


関西のヤクザの幹部が我らがミッキー(マウスじゃありませんよ)で、その手下が川谷拓三なのですが、拓ボンから情報を得るために行う、菅原文太がボコボコにしてしまうシーンは、日本映画史上に残る名シーンです。

 

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あまりにも凄絶すぎて、ココにあげる事ができないです!

 


何しろ、演技ではなく、拓ボンはホントにボコられて、翌日、顔面が腫れ上がっていたそうで。


そんな市警のドロドロは警察上層部の知るところとなっていて(そりゃそうですよね・笑)、なんと、本庁からやってきたのが梅宮辰夫。


あんな極悪な私生活してた人が(笑)!


こういう、ギャグみたいな演出がはしばしに炸裂する作品ですね。


深作欣二の絶頂期です。


そんな清く正しい(?)キャリア警察官が赴任してから、ストーリーがガラッと変わります。


この構成のうまさは、笠原和夫の見事な脚本でありましょう!


ココから、組織人としての倫理(菅原/梅宮」とバディを組長にしたいという友情(?)(菅原/松方)のせめぎ合いが展開していきます。


しかも、そこに第二次世界大戦中/戦後の問題がしっかりと絡んでくるところが、『仁義なき戦い』から一貫する通奏低音です。


コレをたったの80分でまとめ上げてしまうという、手際のよさ。1970年代の東映プログラムピクチャー、恐るべし!


何年か前に書いた、同じく、深作欣二『北陸代理戦争』とともに必見の実録ヤクザ映画です!

 

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