日本映画

黒澤明が90分でスッキリまとめた、東宝プログラムピクチャー的傑作!

黒澤明『椿三十郎』 ちょうど、黒澤明がアカデミー賞の名誉賞を受賞し、『七人の侍』がリヴァイヴァル公開してから、東宝が漸次黒澤明の監督作品をVHSでレンタル/販売を開始した時期が高校生の頃で、彼の作品はほとんどレンタルビデオで借りて見ました。 そ…

小津安二郎はホントに一貫した作家ですよね!

小津安二郎『大人の見る絵本 生まれてはみたけれど』 ジワジワくるタイトル(笑) 2023年に4Kデジタル修復がなされ、リバイバル公開されたものをようやく見ました。 昔、銀座にあった名画座の並木座で、かなりダメージのあるフィルムでの上映で見たのが最初…

圧倒的に残酷な家族崩壊劇!

小津安二郎『東京暮色』 主人公の有馬稲子の飲酒、喫煙シーンが小津作品のパブリックイメージを崩します。 既に戦後の自らのスタイルを確立した小津安二郎の一連の作品だと思って見ると、心底痛い目に遭う、戦後屈指の異色作。 『風の中の雌鶏』は、戦後直後…

ネチョネチョ生きる。

中島貞夫『893愚連隊』 中島貞夫という監督は知ってはいましたが、東映の職人監督で、深作とともに、実録やくざ映画を量産していた人。というイメージがあって、積極的に見てみようと思わなかったんです。 山下毅雄がサントラを担当しているという事で『現代…

森田芳光監督の怪作です!

森田芳光『そろばんずく』 森田作品の中でも破天荒さではトップクラスです。 『それから』で、なんと、夏目漱石の文学世界にまで突入してしまった直後に発表された、森田芳光の痛快作。 ト社とラ社というライバル関係にある広告代理店の対立を軸に描かれるか…

石原慎太郎がこんな軽佻浮薄な小説を書いてたんですね(笑)しかも川島雄三が映画化

川島雄三『接吻泥棒』 石原慎太郎原作の小説の映画化ですけども(松山善三が脚色)、東京都知事の頃の彼しか知らない人には、この猛スピードで展開するラヴコメディとあのタカ派政治家はほとんど結びつきません(笑) なんと、カメオ出演してます(笑) ちな…

手塚治虫オマージュが込められた室町時代のロッキーホラーショー!

湯浅政明『犬王』 なんなのだ、この大傑作は! とにかく浴びるように映画館で見るべし! スマホで見るなど論外です。 「浴びる」事でまずは全身を感動させ、然る後にディテールを確認するためにサントラやDVDで隅々までチェックする。 コレが本作を見るため…

ハウス・オブ・イヌガミ!

市川崑『犬神家の一族』 『エヴァンゲリオン』でも使われた、おなじみの文字組みです。 コレほど、もうすっかり見た気になってしまう古典は現在ないでしょうね(古典というのは、そういうモンですけど)。 しかし、実際に見てみると、あのスケキヨ。と認知さ…

スパッと90分で終わる、川島雄三の遺作!快哉!

川島雄三『イチかバチか』 本作の公開前に亡くなった川島雄三。享年45歳。 川島雄三の遺作にして、なんと社会派。 本作の公開の直前に自宅で急死してしまいました。 もともと、難病のALSを抱えながら映画監督をしていたんですよね。 しかし、そういうものを…

水俣病は実は何も解決していないのです!

原一男『水俣曼荼羅』 強烈な映画を撮り続ける原一男監督は拍子中するほど穏やかでユーモラスな方です。 制作年数なんと20年!(編集だけで5年かかったそうです)、上映時間6時間を超える超大作ドキュメンタリー。 2021年に、フレデリック・ワイズマン『ボス…

川島雄三の大傑作!必見です!!

川島雄三『喜劇とんかつ一代』 タイトルの豚のドアップからしてもう面白いです! いやー、コレはもう最高でした! 平凡なタイトルからは想像もつかないような大傑作です。 登場人物の人間関係がやたらと複雑ですが、見ていてそれで訳がわからなくなってはき…

無節操なまでに題材を次から次へと変えて撮っていくのが中平康の魅力です!

中平康『紅の翼』『あいつと私』『牛乳屋フランキー』 黒澤明にとっての三船敏郎、増村保造にとっての若尾文子がそうであったように、中平康と最高に相性の良かった俳優は我らが石原裕次郎である事はこの2作を見れば明らかです。 『紅の翼』は1958年、『あ…

意味とかリアルを失っても残存する気分こそが映画なのではないのか?

中平康『月曜日のユカ』 このタイトルのカッコよさ! 中平康の生前の評価は芳しいものではなかったようです。 中平康。果たして、満足できた映画をどれだけ作れたのでしょうか。。 たしかに、同世代といってもよい、市川崑、増村保造、岡本喜八という監督と…

座頭市シリーズ史上、最も凄惨な傑作!

勝新太郎『新座頭市物語 折れた杖』 『顔役』に続き、勝新太郎が監督、主演した、おなじみ座頭市。 『顔役』のあまりの凝りっぷり、ナチュラルな壊れっぷり(故に愛さざるを得ないのですが)への酷評に反省したのか(?)、勝新太郎最大の当たり役である座頭…

勝新太郎度120%の振り切れた怪作!

す勝新太郎『顔役』 1971年に公開された、製作、監督、主演、脚本がすべて勝新太郎という、大阪ヤクザの抗争に介入していく型破りな刑事を描いた映画。というと、おお、なかなか面白そうじゃないですか。と思いますよね、普通。 しかしですね、この映画はそ…

永遠の映画少年の遺作にしてまたしても問題作!

大林宣彦『海辺の映画館キネマの宝箱』 いやもう、圧倒されました。 大林宣彦は長編デビュー作『HOUSE』から常に問題作を作り続けていたんですけども、遺作までもが問題作とは! およそ、その穏やかなタイトルからは微塵も読み取れないような、躁病的な実験…

今こそイマヘイ作品のバイタリティを!

今村昌平『赤い殺意』 動物をメタファーとして使うのが実にうまいですね。 1960年代の今村昌平の映画はすべてオススメですけども、たまたま見返した本作は、やっぱり凄かったです。 今となっては、ソープオペラ的な題材でしかないかもしれませんが(事実、何…

峰岸徹オンステージな痛快作!

大林宣彦『ねらわれた学園』 2020年に惜しくも亡くなった大林宣彦の角川映画の痛快青春映画。 『時をかける少女』が余りにも有名で、その陰に隠れてしまった感がありますがこちらも傑作です。 眉村卓の、現在で言うところのラノベを原作としますが、コレも筒…

『東京オリンピック』はこうして見よう!

市川崑『東京オリンピック』 1964年第18回オリンピック東京大会を撮影した、市川崑を代表する作品であり、最晩年に監督の意図する通りの作品としてデジタル・リマスターされ、更に再編集を行ったものが、現行版です。 自らカメラを回す、市川崑。 当時、オリ…

娯楽映画は90分で充分!

三隅研次『剣鬼』 大映はタイトルカットがいつもカッコいいですよね。 剣三部作の第3作目にして、最高傑作。 三隅研次は大映を代表する職人監督ですが、その彼の代表作は何か?と問われたら、本作を含めた剣三部作を挙げない人はいないでしょう。 『斬る』(1…

「後味悪い映画」の中でもコレは相当な上位なのではないか。

野村芳太郎『疑惑』 おなじみの、野村芳太郎の松本清張映画ですが、今回の見どころは、なんと言っても、桃井かおりと岩下志麻のぶつかり合いですね。 バディものでもライバル対決でもないという、かなり異色のドラマです。 というのも、桃井かおりは富山県の…

サム・ペキンパーもビックリな凄絶な戦争映画です!

岡本喜八『血と砂』 経営が傾いてきた東宝を救うべく、三船敏郎は、三船プロダクションを設立し、数百人の従業員を抱える経営者となりました。 コレが、時間拘束がとても長い黒澤明との仕事を困難にしてしまった。というのが映画評論家春日太一氏の説ですが…

内田吐夢の怒りが見事な様式美に昇華した快作!

内田吐夢『浪速の恋の物語』 とにかくね、後半がすごいの。 タメにタメまくった飛脚問屋の婿養子である、中村錦之助の鬱憤が大爆発。 近松門左衛門の『冥途の飛脚』などを原作とした、この頃の内田が連作していた作品の一つなんですけども、どうも評価されて…

ゾンビ映画はアイディアの源泉だなあ。と改めて痛感させられた傑作!

上田慎一郎『カメラを止めるな!』 東京都心部は連日こんな感じらしいです。 当初はたったの2館しか上映していなかったのですが、連日満席となり、とうとう、現在は全国100館を超える上映となってしまった作品。 本作は、実際見ることによってビックリドッキ…

モデルとなる主人公は映画公開後に射殺されます!

深作欣二『北陸代理戦争』 深作欣二実録やくざ映画の最終作。 いきなり組長の西村晃が生き埋め! のちに水戸黄門をやる事になるとは(笑)。 競艇の経営の権利を若頭の松方弘樹に強奪されてしまいました(笑)。 福井のやくざはかなり凄絶です! そこに、大…

天才大林宣彦の凄さを世に知らしめた快作/怪作。

大林宣彦『HOUSE』 映画のイメージ画。こういうキャッチーな見せ方が当時の日本映画には、ほとんど皆無の才能でした。 大林監督の商業映画としてのデビュー作。 彼の自由な感性とテクニックがここまで爆発した作品は他にはないのではないか。というくらいに…

宮崎駿の作品の全てがこの作品に入ってます!

高畑勲『太陽の王子 ホルスの冒険』 もう「の」が多いです。 監督高畑勲、作画監督大塚康生、場面設定宮崎駿、原画小田部羊一という、今となっては信じられないような陣容で作られた、伝説の作品。 音楽はなんと、間宮芳生! 見ていると、宮崎駿が初めて演出…

大映の谷崎原作ものは面白いです!

市川崑『鍵』 市川作品のオープニングのデザインのカッコよさには、いつもしびれますねえ。 谷崎潤一郎の小説の映画化。 原作は1956年に連載されていた作品ですから、公開当時は谷崎の最新作を映画化しているんですね。 『卍』、『刺青』、『痴人の愛』はす…

アイドルを使ってこんな無茶な映画を撮ってしまいました(笑)。

相米慎二『セーラー服と機関銃』 父を交通事故で失い、天涯孤独となった薬師丸ひろ子演じる、星泉。 低予算映画ながら、驚異的なヒットをととなった、薬師丸ひろ子をスターダムに押し上げた傑作。 相米慎二は、結局、大林宣彦は、結局、アイドルである薬師丸…

角川アイドル映画と思ったら、とんでもないしっぺ返しを食らいますぞ!

大林宣彦『時をかける少女』 この映画を彼女の引退作品とするつもりが大当たりしてしまいました。 筒井康隆原作の小説の映画化(結局、筒井作品で未だにコレが一番有名なのでしょうか?) 原田知世初主演にして角川映画。という所に苦手意識が猛烈に上がりま…