トニー・リチャードソン『トム・ジョーンズの華麗な冒険』
この少年の数奇な人生?を描く
コレは忘れられた傑作だと思います。
アカデミー賞の作品賞、監督賞を含む4部門も受賞している割には、極端に知名度が低い作品ですね。
原作が18世紀のイギリスの小説だからでしょうかね。。
トニー・リチャードソンはかなりシニカルな資質を持った監督だと思いますが、その資質が完全に陽性の方に振り切れて絶好調な作品となったのが本作で、とかくシリアスな作品に甘いアカデミーが例外的にこんな躁病的な作品に賞を与えたという事実それ自体が、喝采モノです。
主人公トム・ジョーンズの出自をサイレント調でササっと片付けてしまう鮮やかさ。
長じて、男前で女たらしとなったトム・ジョーンズを、イギリス映画独特の、あの、ジワジワとくる感じで前半は描きます。
色男のトム・ジョーンズ。これで主演男優賞取れなかったのは信じられないなあ。
ウェスタン家のソフィーと恋仲になるが、
モリーとの関係がトムの人生を転落させる事になる。
表面上は『モンティ・パイソン』を思わせるようなユーモラスさなのですが、その根底に底意地の悪さというか(モンティ・パイソンもそういう番組ですけど)、権威とか権力をバカにしきってますよね。
このジョーンズが計略によって養父の大地主のオールワージ氏から勘当されてからが、もう躁病的に面白く(ロンドンというのは、18世紀はこんなにキタナイ都市だったのかと唖然とします。しかも、テーブルマナーなどなく、手づかみで食べてるんですね)、余計なことは一切飛ばして、猛スピードでお話が面白いように転がっていきます。
テーブルマナーなど、まだ地方ではなかったんですね。。
しっちゃかめっちゃの、ドタバタ恋愛喜劇になっちゃったりしてからにてして、こんな陽気な作品がアカデミーというのは、ホントに快挙でありますぞ。
当然、チャンバラもございます!
原作はかなりの長編なのに、2時間くらいの映画にチョンチョーンとうまいこと畳み込み、恐ろしくご都合主義にハッピーエンドになだれ込む演出は、半ば呆れてしまいます(笑)。
リバイバル上映あったら、映画館で大笑いしながら見たいですなあ。
本作同じく、18世紀のイギリスを描いた、スタンリー・キューブリック『バリー リンドン』を見比べるのも面白いですよ。
原作の編集ぶりが秀逸です。