石原慎太郎がこんな軽佻浮薄な小説を書いてたんですね(笑)しかも川島雄三が映画化

川島雄三『接吻泥棒』

 


石原慎太郎原作の小説の映画化ですけども(松山善三が脚色)、東京都知事の頃の彼しか知らない人には、この猛スピードで展開するラヴコメディとあのタカ派政治家はほとんど結びつきません(笑)

 

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なんと、カメオ出演してます(笑)


ちなみに、音楽は川島雄三作品に多い参加している、黛敏郎なのでした。


黛も作曲家として活動しつつも、憲法改正に熱心な方でしたが。


この90分にも満たない東宝のプログラムピクチャーを川島の代表作という人は余り聞いたことはないですけども、彼のベスト5に確実に入る、いわば隠れ傑作と言ってよい作品です。


ウェルター級ボクサー役の宝田明は生涯のベストアクトと言ってよい素晴らしさで心底驚きます。

 

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宝田明と団令子の代表作です!


正直、それほど好きな役者ではないのですが、ここで演じる高田明。というキャラクターは(石原慎太郎が宝田をモデルにして小説を書いたそうです)、どこからが宝田明でどこまでが高田明なのかわからないほどで、彼の評価が私の中で変わりました。


高島忠夫船越英二という、なんだかグニャグニャしている男の系譜というのが川島作品にしばしば登場しますが、その最高の存在が宝田明ですね。


実際の宝田明まんまのプレイボーイ役であり、4人の女性とのドタバタぶりを猛スピードの演出で見せる川島雄三の手腕には、相変わらず素晴らしく、日本映画界で屈指の群像劇の才能を発揮した天才でした。


中でも川島の晩年の作品によく出演している、団令子のやんちゃなキャラクターは、宝田明を絶妙に翻弄します。


川島作品に出てくる女性たちはどれも生き生きとしていて、後半部の3人の愛人と次々と別れていくいう展開での、宝田を三者三様に痛めつけていくシーンは実に痛快です。

 


ジャズやラテン音楽を基調とした黛敏郎も絶好調です。

 

 

その、一見な軽佻浮薄な作風が生前は過小評価されている向きがある人ですけども、本作の「炎上ビジネス」の先駆のようなマスコミのあり方へや、「純潔教育」という、人間の現実のあり方を無視したような教育へのさりげない批判は、今もって色褪せる事はなく、全く古びた過去の作品とは思えません。

 

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作中に出てくるパパラッチ。コージーコーナーってこんな昔からあるんですなあ。


まるで、自分の死期が近い事を悟っているかのように、50年代から 自宅で急死する1963年までの川島の作品はいずれも見応えがあり、本作もその中の一つです。

 

ボクシングの試合のシーンが予想以上にちゃんとしてます。

 

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草笛光子はホントに若い頃のまんまですよね。