ジェームズ・ガン『The Suicide Squad』
前回のは無かったことにしてね!という痛快作!
最高でした!
100億円かけたトロマ映画ですね(笑)。
舌禍事件でディズニーをクビになってしまったジェームズ・ガンを救ったのは、なんと、DCコミックを映画化している、ワーナーでした。
マーヴェルからDC への移籍は驚きです!
ワーナーは、ガンに対して、「どのキャラクターを使ってもいいし、これまでの作品とのつながりも考えなくてもよいので、好きなように撮っていいです」という破格の条件を提示しました。
で、彼が選んだのか、失敗作であった、「スーサイド・スクアット」の作り直しでした。
どうして、ワザワザ火中の栗を。という不安がよぎりましたし、私も期待してませんでした。
しかし、見た人たちの、絶賛がジワジワとネットで伝わってくるんですよ。
コレは見に行った方がよいな。という自分のカンを信じましたら、これが大当たり。
2021年ベスト3に確実に入る痛快作でした。
ストーリーはごくごくシンプルでして、カリブ海にある、とある独裁国家があります。
島国で一族支配している。という、まあ、キューバですね(笑)。
この一族がある兄弟(明らかに兄はフィデル・カストロです)に皆殺しにされ、彼らが実権を握ってしまいました。
ここで、とんでもない兵器を長年開発していた事が判明しました(ズバリ、キューバ危機のアナロジーです)。
この施設を破壊せよ!というミッションがアメリカのCIAなのか、国務省なのかよくわからん組織(最後まで一体なんなのかわからない政府機関ですね)から、極悪犯罪者達に与えられます。
この人たちがスーサイド・スクワットの上司なのですが、普通の人たちにしか見えないです。黒人のおばちゃんがリーダーです(笑)
報酬はたったの10年の減刑であり、刑期がそれを遥かに上回る連中だけで構成される決死隊、即ち、スーサイド・スクワッドによって、行われる事になったんですね。
選抜されたメンバーは拒否する事はできません。
なぜなら、全員、アタマに超小型爆弾が埋め込まれまして、逃げようとしたり、命令違反しようとすると、司令室から爆破ボタンを押して、メンバーを即死できるんです(アメリカがやっている工作を隠蔽できるという利点もあるわけですね)。
社会のはみ出し者たちが協力し合って、あるミッションを遂行する。という映画はアメリカ映画には伝統的に存在してまして、ロバート・オルドリッチ『特攻大作戦』とか、それこそ、人気テレビシリーズの『特攻野郎Aチーム』はその最たるものだと思いますが、本作はそういうアメリカのある種の王道を踏まえているんですね。
この無茶なミッションを指示する、よくわからん国家機関のメンバーのヘッポコさと計画や人選の杜撰さが、なんともC級映画のノリでして(笑)、結果として現場にほぼ丸投げなんです(逆にいうと、現場の創意工夫が大変な事になるという事への伏線です)。
要するに選抜されたメンバーは否応なしにやらざるを得ず、アメリカ政府にはその後の瑕疵はなし。という、現実にもよくある構図であり(笑)、コレが映画の冒頭でいきなり始まります。
いきなり無茶な作戦が映画開始とともにスタートし、見る側を一気にジャックするんです。
いきなり作戦が始まります(笑)
ハーレイ・クインたちは上陸しますががが。
ええ?なんなのこれ?え?え?と思っているうちにドンパチが始まってしまうという。
で、この部隊がいきなり壊滅的な状況になるんですね(ものすげえ血みどろシーンです・笑)
えっ?どういう事?と軽くめまいを起こしていますと、「数日前」となり、前述の経緯がいい調子で説明され、実は2チーム送り込まれていて、1つのチームは 初めから捨て駒なんですよね(笑)
アメリカ政治のハードコアな日常ですね(笑)。みたいな酷さを実にサクサクとした演出で見せるのが、ガン監督のうまさです。
この、「〇日前」とか「〇時間前」みたいな時間の遡りは、タランティーノが結構得意とする手法であり、源流はセルジオ・レオーネでしょうけども、コレを実に効果的に用いるんです。
捨て駒隊がほぼ壊滅した後の(ハーレイ・クインはコッチにいます)、本チャンメンバーの潜入が描かれていくんですけども、コレは映画館で是非見てください。
こっちが本命のスーサイド・スクワットです!このイケでないデザインセンスが素晴らしい!
もう、おもしろいのなんのって(笑)!
スーサイド・スクワッドのメンバーでなんといっても素晴らしいのはサメちゃんで(あだ名とかではないですよ。ホントにサメが歩いているんです!)、声を、ななんと、シルヴェスター・スタローンが担当しております!
SoftBankのCMにおける北大路欣也が、スタローンなのです!
このサメちゃんは、アヴェンジャーズにおけるハルク的なポジションですが、人肉が好きなので、メンバーすら食いそうになるんです(笑)
で、しばしば、このサメちゃんのお食事シーンが出てくるんですよね。
「いただきまーす!」という感じでアタマからがぶりんちょとあっという間に人間1人食べてしまうんで、残酷さみたいなものがどこかに飛んでいってしまって、どこか滑稽ですらあります。
いただきマンモス!
この役に立ってるんだからいないんだかわからないトボけた人喰いザメは本作の助演男優賞でしょう。
で、肝心の主人公である、マーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインは、捨て駒グループのして独裁国家側の捕虜になってしまっているので、しばらく活躍がないんですが、中盤から出てきまして、見事な大活躍場面が用意されております。
ホントにいろんな役ができる人ですよね。
が、ハーレイ・クインは全体としてはそんなにオレがオレが的には出てこなくて、基本はチームプレイの中で、いわば、『大脱走』における、スティーヴ・マクイン(そういえば、こっちも「クイン」ですね)としての役割に徹しています。
それにしても、マーゴット・ロビーという役者はすごいです。
ご存知のように大変なルックスとスタイルの持ち主で、もっとそれをアピールする役を演じてもいいのですが、『アイ、トーニャ』ではトーニャ・ハーディングを演じ、FOXテレビのセクハラ問題を取り上げた『スキャンダル』では助演女優賞にノミネートされるなどの、演技派として活躍していて、トーニャ・ハーディングとシャロン・テイトを演じている人が同一人物と思えないほどです。
あの有名なシーンをマーゴット・ロビーが再現!
かと思ったら、シャロン・テイト!
そんな彼女が、ジョーカーの恋人という設定である、DCコミックのキャラクターである、殺人鬼、ハーレィ・クインを結構なアクションまで平然とこなし、タランティーノ『ワンス〜』では、天使的な役どころである、シャロン・テイトを演じてもいるわけですね。
あのルックスで性格俳優というのは、新しいあり方です。
それと、コレはどうしても特筆しておきたいのは、ガン監督のトロマ愛ですよね。
一部のマニアの間で熱狂的な人気を誇る、『悪魔の毒々モンスター』などのC級どころか、D級、E級映画を量産して、トロマムーヴィーを熱狂的に愛している方のようで、作品全体に漂う低予算映画への偏愛ぶりが、タランティーノよりも更に駄菓子感が剥き出しな形で提示されます。
ハーレイ・クインのデザインは、先行する作品で既に決まっているので、余り変更はできませんが、それ以外のメンバーのほぼ意図的にやっている、ダサいデザインはおよそハイバジェットなハリウッド映画とは思えません。
ピースメイカー。見た目通りのマッチョキャラ!
特殊な機械を使ってネズミを操ります!
このおじさんがスーサイド・スクワッドのリーダーです!武器のエキスパートです!
おかんに改造されてしまった、かわいそうなおっさんなのでした!
監督のトロマ愛が爆発するのはネタバレなので、言えませんが、やはり、終盤でしょうね。
散々カネかけて、ラストはそれですか?というね(笑)
余りにも豪快にくだらなくて、映画館で大笑いしました(笑)
コレは映画館で味わっていただきたいですなあ。
しかも、アメリカの悪行が暴かれていく事にもなっていき、それがお話しの核心部分になっていきます。
また、不意なキャメラの寄りと引きが頻出しますけども、アレは明らかに1970-80年代にイタリアで乱作された、いわゆる、「ユーロクライム」で多用された手法でして、予算がないので、グーンと顔に寄りまくるアングルを使っていたんですが(全体を見せなくていいので、お金を節約できるんですが、伯爵様であるルキーノ・ヴィスコンティも結構多用していました)、明らかにそれを意識したもので、当然ですが、現在の最新鋭の機材でやってますから、チープさは微塵もないです。
ユーロクライムとの関連でいえば、使われているサントラの素晴らしさと言ったらないですね(ユーロクライムのサントラのマニアは結構います)。
コレも「タランティーノ以後」という事はたしかに言えるんですけども、より若くてフレッシュ感覚ですね。
とにかく、本作は、映画館でゲラゲラ笑いながら見るのが一番ですし、それが一番の感染対策かもです。しらんけど!
説明上省きましたが、このアタマにボルトが刺さっているおじさん、シンカーが、「スターフィッシュ計画」を独裁国家で進めていた人です!