ジャン=リュック・ゴダール『ワン+ワン』
みんな若いですね。
一見、ローリング・ストーンズの名作アルバム、『べガース・バンクェット』のメイキング映画見たいな体裁ですけども、ゴダールはローリング・ストーンズにも興味なさそうというか、ロックのことなんてどうでもよかったのではないでしょうか。
ストーンズのメンバーが本作のメインとなる、「Symphaty for a Devil」を作っている映像(ワザと退屈に撮っています。興味がないからなのですが)に、ストーンズと無関係な過激な政治のナレーションが入ったり、唐突にアフリカ系アメリカ人がとつぜんアジテーションをするの映像に変わったり。と、相変わらずのゴダールですけども(なぜ、ここまで非商業的な映画を作れるのかがすごいですよね・笑)。
結果として、最晩年のブライアン・ジョーンズが写っている映像となりました。
アンヌ・ヴィアゼムスキーがひたすら政治的な内容の質問責めになっている(単に女優を困らせて楽しんでいる?)シーンの方がずっといきいきしてします。
また、ストーンズのメイキングシーンは、ずっと、停滞しているのですが、黒人のパーカッションを入れて、ニッキー・ホプキンズがピアノに変え、演奏がガラッとよくなるんですけども(要するに発表された演奏に近づいているんですけども)、なんの説明もないです。
この時代のゴダールをよく、「政治的」とか言われるんですけども、ホントでしょうか。
唐突に挿入される、アンヌ・ヴィアゼムスキーのシーン。
要するに過激な映像のコラージュに見えます。
また、黒人に朗読させている黒人音楽論も相当に観念的で、およそ黒人音楽が好きな人でもありませんし、ブラックパワーにも興味なさそうです。
ゴダールは何者にも影響されない。
むしろ、告発しているのは、映像と音響それ自体がもつ暴力性でしょうね。
とにかく、コレはストーンズのアルバムのメイキングを映したドキュメンタリーでもなんでなく(笑)、相変わらずのゴダール映画以外の何者でもないのでした。
ちなみに、映画とは関係なく、このアルバムはストーンズの中でも傑出した作品となりました。