イエジー・スコリモフスキ『11ミニッツ』
老いて益々盛んというか、作品が全く老成するどころか、若返っているのでは?というスコリモフスキの新作。
ロマン・ポランスキの名声と比べるとなぜか日本では今ひとつ知られていないスコリモフスキ。
またしてもたったの80分くらいの映画なのですが、恐ろしく濃厚な作品です。
最初は1つ1つのエピソードがものすごく断片的で一体何の話なのかがほとんどわかりません。
敢えていうと、映画監督リチャードと女優アーニャの枕営業が話しの中心といえば中心。
女優の枕営業、ホットドッグを売っているオッさん、絵を描いている男、質屋を襲撃したら店長は自殺、出産寸前の女性ととベットで弱っている男を救出する救急隊員たち、何かをバイクで運んでいる若者などなど。
ホットドッグを食べる修道女たち。
そのホットドッグを売ったおじさん。刑務所を出所したばかりらしい。
何かを届けたバイクのお兄ちゃん。
ポルノ映画を見ている2人。
強盗未遂のあんちゃん。
登場人物にはほとんど名前すらなく、主役らしき人物は特にいません。
このほとんど無関係とも思われるそれぞれの話しがどう関係していくのかが不明のまんま、映画は進むのですが、だんだんある事に気がつきます。
ほぼ同じ時間にこれらの出来事が起こっている事を。
それは「午後5時から何分遅れている」というセリフとか、着陸態勢に入っている旅客機が何度も別な角度で出てくるんです。
そこで不可解なタイトル、『11分』という意味がわかってきます。
要するに、たったの11分間の出来事を描いている映画だったんですね。
しかも、それぞれのお話しは、そんなに離れた場所ではない事に気づきます。
それをいろんな人物の主観から見せ、時間は何度も行きつ戻りつしながらも、しかし、確実に時間は冷酷に経過していく。という事だったんですね。
犬を連れている女性。
絵を描いいたおっさん。
とにかく、手法のすごさに驚いてしまうのと、1960年代から映画を取り続けている大ベテランであるスコリモフスキがこんな大胆な手法の映画を撮ってしまった事に、驚嘆せざるを得ません。
あれっ、さっきホットドッグ食べていた修道女たちが。この女性はなにを見ているのでしょうか。
この映画が最後どうなっていくのかは、実際にご覧になっていただくほかありません。
とにかく呆気にとられてしまうような映画でありました。