I'm in Heaven
マーク・サンドリッチ『トップハット』
RKOで制作された、いわゆる「アステア&ロジャース映画」に於ける最高傑作。
全編がアーヴィング・バーリンの作詞作曲
で、マックス・スタイナーが音楽監督です。
1935年という不穏な時代にも関わらず、アステアはそんなものを一切意に介すことなくどこまでも優雅な世界を演じます。
というか、まだ、ドイツや日本の動きが本格化する直前はハリウッドはこんなだったんですね。
まあ、日本の浅草でも、エノケンの映画が盛況だったわけですから、似たようなモンですが(笑)。
アメリカの大スターがイギリスにやってきて、公演をやるという、そんなの普段の貴方の生活そのものじゃないか!という公私混同も甚だしい役をアステアはやっております。
冒頭が面白いですね。
タップダンスの天才のアステアが、「一切音出しちゃいけません」という社交場所で待ち合わせだなんて。
演出家の滞在するホテルに泊まることになり、そこで「ダンス病」の発作が始まり、下の階に泊まっているジンジャー・ロジャースが怒って抗議に行ったら、アステアが一目惚れ。
もう、ご都合主義もココまで滑らかにやられたら見事というほかない。
カミナリの音にロジャースがキャーッ!と驚いてアステアに抱きついたり、もう、読者サービスの嵐です。
こんな天国のような楽しい世界を破壊と殺戮に塗り込めていった戦争を進めていった連中を私は許しません。
アステアとロジャースのダンスのコンビネーションは、もう映画史上最高と言ってよく、もう言葉が追っ付きません。
とても80年も前の映像とは思えないです。
アメリカ芸能の古典の1つでしょう。
コレが雨宿りのシーン。
しかし、楽しいだけではストーリーは進みません。
ロジャースは演出家のハードウィックとアステアを勘違いして、アステアが妻帯者だと思い込んで激おこぷんぷん丸。
フロアでアステアを平手打ちにします。
さあ。2人はどうなってしまうのか?は見てのお楽しみでございまして、こちらをご覧ください。
素晴らしすぎて言葉が出ませんね。。
この映画から数年後、パリはドイツ軍に占領されますが、何かそれを暗示する不気味さを感じるのは、後の歴史を私たちが知っているからでしょう。
マイケル・ジャクスンはアステアに心酔していたそうですが、恐らく、何度も何度もこの映画を見たことでしょう。
ちなみに、ココでの圧倒的なパフォーマンスがアステアのイメージを定着させました。
シルクハットにステッキ、燕尾服。
こんな服のアメリカの映画スターはアステアしかいないでしょう。
ヴェネツィアのシーンのおもちゃ感がすごいですねえ。全部セットです。
ハイ。2人以外の主な出演者です。
ヴィスコンティと真逆の美学ですね。
ココでの、全員の会話が一切噛み合わないシーンが延々と続くところは脚本として白眉だと思います。
ココはワイルダーなんかに継承された面白さですよね。
今見ると、アステアの演技力の足りなさなどで、ちょっと展開がダレてくることは確かですが。。
コレが『カイロの紫のバラ』のラストに出てくるシーン。
とろけるような美しさ!
I'm in Heaven !
とにかくDVDでこの夢の続きをご覧ください!