主人公のユミがホステスをやっている母親のヒモにレイプされた事を知って、逆上して包丁で刺殺しまうのですが(そこまでに映画が10分くらいしかかかってないのが、増村らしいムダを省いたシャープさがあります)、住所が杉並区永福二丁目。と新聞にハッキリ書いてあるのが、昭和マナーですな。
歓楽街の色使いが、私の子供の頃に見た札幌のすすきのを思い出します。
溝口健二は、余りにも偉大な監督で近づくことすらできませんが、増村保造は、なんというか、一緒にお酒飲んでくれそうな、どこか身近な巨匠といいますか(そんな事、ありえないですけどね)、80年代まで現役でしたから、やっぱり、親近感があるんですよね。
母親が痴情のもつれを起こしてしまったんで、ユミは洋裁学校をやめて、母親が元々勤めていたバー(今でいうと、キャバクラですね)へ、内緒で勤め始める。
そして、アレよアレよと出会う男性で立場が極端なかわっていくんですね。
しかしまあ、ホントにトントン拍子で話が進むんですね。
この大胆な編集感覚が増村の真骨頂ですね。
主演の渥美マリの演技はおよそ褒められたものではないけども、増村演出はそういう難点をほとんど感じさせないのがすごいなあ。
こういう極端なシチュエーションをあたかも何でもない普通の事みたいに見せてしまう、増村の感覚はホントに独特で、これを引き継いでいる人は日本の監督ではいないような気がします。
林光の音楽も素晴らしい。
大映がかなり傾いていた時期の作品で、もうちょっと何とかしたかった感がある、増村の苦心作。