増村保造『からっ風野郎』
な、なんと、当時人気作家だった、三島由紀夫(チャーリー・パーカーに似てます)が、ヤクザ役で主演という恐るべき作品。
現在の状況に、コレに類する事がないですよね。
三島由紀夫。という人は、それだけ桁外れなカリスマ性がある作家の、最後の人かもしれませんね。
ピースの又吉さんが主演しても、本作のインパクトを超えるとは思えないですよ(別に又吉さんをディスってるんじゃないので、念のため)。
相変わらず、冒頭の状況説明を10分以内で終わらせる手際はさすがの増村ですが(増村保造に学ぶ、短時間で伝わるプレゼン術という本があったら、間違いなく売れますね)、イヤー、ストリップ小屋の映像の毒々しさが素晴らしい(笑)。
それに輪をかけて水谷 良重(現、二代水谷八重子)の歌がすごい(笑)。
増村のヤクザ映画は、東映とは全然違って、ものすごく軽快で、まったく日本離れしていますね。
こういうヤクザ映画って、ありそうで未だにないような気がしますけども(もっとマネしてもいいのでは?)。
三島の演技は完全に素人ですけども、意外と違和感がないのがすごいですねえ。
我らがあややは、お兄さんが組合活動に従うようなマジメな少女役ですが、三島を少しずつ手玉に取っていく小悪魔ぶりに、すでに大物の鱗片が。
しかし、潜伏先で三島に犯されてしまうのは、なかなか強烈ですなあ。
とにかく、出てくる登場人物があややのお兄さん以外、ことごとく悪党なのが本当に気持ちがイイ(笑)。
ジョン・ヒューストンに『マルタの鷹』という痛快作がありますけども、あの作品も、主演のボギー以下、みんな悪党で、とても清々しい映画です。
こういう、新しもの好きな三島と、盾の会でとんでもないことをやらかす三島はなかなか結びつきませんが、とにかく、彼の主観として、常にカッコよくありたかったのは、多分、同じ地平なのかもしれませんね。
私には、残念ながら、彼の心情はわからないのであります。
あと、余談ですが、当時の東京の道路がこれほど舗装されずに汚かったのか。というのもわかりますよ。