ビートたけしが役者として開眼した作品。
瀬川昌治『哀しい気分でジョーク』
もうこの頃のビートたけしを知らない世代もいるんですよねえ。
小学校の頃の私には、とにかく異様なスピードで喋りまくるこの漫才師は驚異的でありました。
明らかにビートたけし本人と思われる「ひろし」の役は我らがたけちゃん。
FM六本木で人気番組を持っており、コンサートは常に満員。
マネージャー役の柳沢慎吾が全く変わってないことに驚きますね(笑)。
たけちゃんはタレントとしては才気煥発なのに、お父さんとしてはまるっきりいいとこなしな不器用な役がとてもハマっています。
1人息子がむずかしい部位に脳腫瘍ができてしまい、余命いくばくもない事がわかりながらも、父親としてどうしたらいいのかわからないたけちゃん。
と、書いてしまうと近年散々量産されたアレっぽいですが、コレが撮られたのは80年代。
ビートたけしが芸能人としての絶頂期を迎えている頃です。
コレ見てて時代を感じるのは、ガンはまだ本人に告知しない時代なんですよね。
テーマは、どちらかというと、父と子のぎこちないコミュニケーションがメインであって、病気でかわいそう!全米が涙!という感じよりも、哀しい可笑しみ。ですね。
80年代は冷蔵庫に野菜がないと、もう買いに行く事が出来ない(笑)。
SEIYUが24時間やってないんですね。
全然不便なんですよ、この時代は!
柳沢慎吾が実に芸達者です。
というか、ビートたけしはどこまでいっても漫才師なのだと思います。
息子の事をいたわるあまり、仕事が激減して、急激に収入が落ちてしまうという極端な振る舞い(この極端さが、後のフライデー編集部襲撃やバイク事故につながっているような)。
お涙モノではなく、あくまで家庭人としては失格な父(それは、かなりの部分、実際の北野武が反映していると思われます)を描いているところに。とても好感が持てます。
この映画の後半はなんとシドニーロケなのですが(笑)、ココがお話しのキモになります。
観光ショット満載であり、まだまだこの頃の日本はこんな感覚だったんだなあ。という感じはありますが(笑)。
コレ、ラストが結構すごいですよ。お楽しみに。