もはやSF映画の古典!

リドリー・スコットブレードランナー ファイナルカット

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ドゴォォォォ〜ン!!

 

1982年に公開され、未だに世界中のクリエイターに多大な影響を与え続けているSF映画の金字塔。

2019年の11月のロサンジェレスのお話しですから、もう間もなく時代が追いついてしまいますね。

ロサンジェレス。と言えば、あのカラッとした太陽と美しいビーチとハリウッド(と、ビーチ・ボーイズ)のおかげで、全米でも屈指の人種、宗教のるつぼであり、日本人が知る「アメリカ」のイメージは、ニューヨークよりも、ロサンジェレスの方が今日では強いのかもしれません。

しかし、本作のロサンジェレスは、人種と宗教のるつぼである事は更に進んでいますが、全シーンがほぼ厚い雲に覆われていて、雨ばかりが降っている、恐ろしく陰鬱な街です。

 

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どんよりとしているのに美しいという独特の頽廃美を作り出したシド・ミードダグラス・トランブル、撮影監督のジョーダン・クローネンウェスの仕事は特筆すべきでしょう。

 

しかし、1950年代くらいまでのロサンジェレスって、市警が腐敗しきっていて(それはその後も変わりませんが。。)、治安は悪いし、乾燥した気候ですから、風景もかなり殺伐としてました。

コレをうまく取り入れたのが、1940~50年代に大変に流行した「フィルム・ノワール」ですね。

ここから大スターになったのが、ボギーこと、ハンフリー・ボガードです。

第二次大戦後のフランス映画も、このフィルム・ノワールに憧れて、ジャック・ベッケル現金に手を出すな』とか、ジューフズ・ダッシン『男の闘い』と言った傑作が作られたんですね。

本作は、まず、そういうハードボイルド作品が下地にある点がユニークであり、また、サイレント期の大巨匠である、フリッツ・ラングメトロポリス』を彷彿とさせるレトロ・フューチャー感が満点で、ツヤツヤ、ピカピカしたSF映画の映像を変えてしまいました。

 

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メトロポリス』より。かなりレイチェルしてますよね。

 

こういう暗い世界観は、大友克洋AKIRA』でも展開しますが(奇しくも、2020年に東京オリンピックが行われようとしている、2019年からお話が始まるのです!)、両者は、フランスの漫画家、メビウスの影響を相当に受けているんですね。

 

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映画『AKIRA』より。『ブレードランナー』とよく似ていますが、連載は1982年開始ですので、パクりようがないです。

 

話のスジ自体はものすごくシンプルで宇宙船を強奪したレプリカント5名(一名はデッカードが捜査すると前に死亡しています)が地球に潜入してきたので、コレを処分すると事を専門とする、「ブレードランナー」である、ハリソン・フォード扮するデッカード捜査官がコレを処刑していく。というお話しです。

 

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2つで充分ですよ!と叱られるデッカード

 

今回見直してみて気がついたんですけども、デッカードレプリカントのレイチェル恋愛が実にうまくできてるなあ。と思いましたね。

 

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レイチェルの役はショーン・ヤング以外は考えられないですね。

 

デッカードは、反抗したレプリカントを処刑する。という仕事をしているわけですから(人造人間とは言え、外観は人間と全く変わりません。恐らく、それがイヤになって一度ブレードランナーを辞めています)、レプリカントに感情移入すると職業倫理がグチャグチャになりますよね。

ですから、レイチェルにとても冷たいんですね。

 

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 陰鬱で人間味のない世界であるからこそ、立ち上がる「人間的なもの」が本作のテーマです。

 

しかし、2人は結局接近していく事になり、最後は2人で逃亡してしまうんですけども、殺し屋という荒んだ職業をしているデッカード人間性を回復させていくのがレプリカントというところが本作のかなり倒錯したところです。

また、レプリカントのリーダーである、ロイ・バティが最後にデッカードを助けて寿命が尽きてしまいますけど、わずか4年という寿命しかないレプリカントが生きていた存在価値は、実は、他人のために尽くすという事であり、であるから、ロイは安らかに死んでいったのだと思います。

 

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ロイとプリス。2人は長生きして子供を作りたかったのでは。

 

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タイレル博士とロイ。「寿命を延ばすことはできない。短い人生を楽しめ」

 

もう散々語られている圧倒的な映像美に関しては、今更私がいうまでもない事なので、何も言いませんが、2049と見比べた時、2049が余りにも安っぽいのに愕然とした事は記名しておかねばならないでしょう。

 

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