フェデ・アルバレス『ドント・ブリーズ』
ゴーストタウンにたった1人で住んでいるおっさんの家から大金を盗み出そうとする3人。
コレはよく考えられた映画だなあ!
映画の性質上、ネタバレしたら、全く面白くないので、できるだけしないようにしますけども、ホラー映画の「暗い密室」というシチュエーションから、こういう映画がまだできるんだ。という映画ですね。
こんな弱々しそうなオヤジですが。
ホラー映画は、主人公たちが、わけもわからず、怪物たちに襲撃されて、殺されていくわけですけども、本作は、実は、悪いのは主人公たちというのも面白いですね。
銃を所持しての不法侵入と大金を窃盗しているんです。
異様な身のこなし!
この視点の倒錯感は、本を正せばヒッチコックではありますけども、それをより今日的な、「ビンボで希望も夢もないデトロイトの白人の若者」による犯罪にしているんですね。
野生生物ですね。。
足を骨折してヒマな中年のオッさんがカメラの望遠レンズで隣人の生活を覗く。という、言わずと知れた『裏窓』みたいな優雅さではなく、ガチのデトロイトの厳しさが背景ですね(そういう意味で、もうかつてのアメリカ映画のような世界は、もうアメリカには存在しないというこの事でも)。
この家に住んでいる男性もまた、気の毒な人です。
あの愚かなイラク戦争で負傷して、失明してしまっているんですね。
で、家族はいるようなんですが、天涯孤独になってしまっています(なぜこうなったのかは、本編の核心なので見てください)。
登場人物はたったの4人(実はそうではないのですが)。
舞台は、ほぼおっさんの家の中。
経済破綻したデトロイトから逃げたじているので、周りは誰も住んでいないんですね。
盲目のおっさんは、自衛のために戦っているのですが、シチュエーションが完全にホラー映画のモンスターが、主人公たちを襲撃しているのと同じなので、なぜか悪い人逃げたじて見えてしまうという、ホラー映画というものの持つ構造の強さが、価値観を転動させているのがとても面白いですね。
かなり正確に銃を撃ってきます!
こういう発想はちょっと思いつかなかったです。
最近のアメリカ映画には珍しい、わずか90分の映画で、恐らくはかなりの低予算映画ですが、シャレにならないほどの超高密度です。
近接戦闘で勝てる見込みはほぼありません!
プロデューサーにサム・ライミがいるのも納得。
それにしても、今のアメリカの貧しい白人がのし上がるには、ココまでしなくてはならないのか。という所がウウムではありましたね。。