私の子供の頃、映画ベスト100みたいなものに必ずと言ってよいほど常連の映画でありまして、有名なテーマ曲とともに結構見た気にさせてしまう映画で、実際は見てません。という人は多いのではないでしょうか。
駅前のバッタものを売っているようなところでも、本作は売ってますが、そういう見方はオススメできません。
というのも、本作の凄さは白黒撮影の究極のような映像の連続なんですね。
是非ともBlu-rayでご覧ください。
とにかく、構図という構図が完璧です。
これぞ映画における構図である。という絵でしか構成されてません。
微塵の乱れもなく、ちょっとこわいですね。ここまでくると。
キャロル・リードは英国の監督らしく、手堅い監督ですが、その職人的な手堅さも、ここまでくると究極的なのだ。という凄さですね。
ものすごくカチッと作られた脚本で、大変緻密ですので、アメリカ映画の大らかさを愛する人には息苦しいでしょうね。
こういう緻密は、アメリカ映画には求め得ないです。
アメリカ映画と上手く融合して巨匠となるのがヒチコックなわけですが。
三流作家のアメリカ人の主人公が、占領期のウィーンにいるという設定のうまさ(フレンチ・コネクション2なんかは、これの影響受けてるんだと思います)。
普通のアメリカ映画だと、モスクワだろうとウィーンだろうと、登場人物がみんな都合よく英語を話しますが、この映画はアメリカ人の主人公がドイツ語がまったくわからない外国人である事が、ストーリーとしてうまく使われてますね。
そして、当時撮影していた『オセロ』の制作費を工面するために後半だけ出演して、全部かっさらっていく、オーソン・ウェルズのお茶目な悪漢は見事と言うほかなし。
有名なラストシーンは、その後、ロバート・オルトマンが男女をひっくり返してパクってます。
占領期のウィーンで撮影された夜は見事と言うほかなく、光と闇の芸術の1つの究極であって、どれがすごいとかそういうレベルではないですね。
今見ても全く色褪せない名作。