岩下志麻、マジでコワイっす!
野村芳太郎『鬼畜』
英題『The Devil』。ヒィィ。。
松本清張原作映画と言えば、野村芳太郎ですが、コレはとにかく岩下志麻のコワさが際立つというか、その一点で突き抜けている作品ですね。
記憶が曖昧なんですけども、この映画がテレビ放映されたのを何となく見ていたんですけども、ストーリーは一切覚えなくても、岩下志麻が異様なまでにコワイ!という事が未だに忘れられず、最近、なぜかクリスマス・イヴにテレ朝が常盤貴子主演で『鬼畜』を放映するという素晴らしい暴挙に出ていたので、アマゾンプライムで30年以上ぶりに見たわけです。
緒形拳演じる竹下宗吉には、実はもう1人奥さんがいまして、なんと、子供が3人もいたんです。
コレが岩下志麻演じる妻のお梅を狂わせてしまいました。
まあ、だらしのない男が、岩下志麻を鬼畜にしてしまったわけです。
緒形拳が商売がヘタで酒に呑まれてしまうダメな男を演じるというのは珍しいですけども、これが意外とよくて、彼にとっても芸の幅を広げたのではないでしょうか。
緒形拳はやっぱりうまいですねえ。
冒頭の本妻お梅と宗吉、お妾の菊代(小川真由美です)が3人の子供を連れてのドロドロは、ベタですけどもやはりいいですねえ(笑)。
いきなり修羅場です!
こういうのを撮らせると野村芳太郎はホントにうまい。
鬼畜その1の菊代は、「この子たちはアンタの子なんだら、全部置いてくよ!」と吐き捨てて、3人の子供たちを置き去りにして、話しを強制終了してしまいます。
鬼畜その1!
甲斐性のない宗吉に愛想が尽きてしまったのでしょう。
零細印刷工場を営むオヤジにお妾とこの子たちを養う能力などあるはずがありません。
こうしてお梅こと、岩下志麻は次第にザ・鬼畜に次第に変貌していくんです。ヒイッ。
鬼畜その2!!!
まあ、岩下志麻のヴォルテージがゆっくりゆっくり上がっていくのが、まあ、こわいのなんのって(笑)。
長男が見事な演技です。
鬼畜ヴォルテージがドンドンと上がっていきます。
これは女優だったら、いっぺんはやってみたいですよ。
小津安二郎の遺作となった『秋刀魚の味』に出演していた頃、こわなコワイ役をやるようになるなんて、誰が想像できましたか。
日本映画史上ベスト5に入るであろう、セクシーダイナマイト女優であるかたせ梨乃とキャットファイトをしたり、和服に拳銃でドスの効いたセリフを吐くという女優さん。というイメージか私だとついてしまっていますけど、そこから『秋刀魚の味』を見た時の衝撃たるや。
本作は、松竹のある意味典型的とも言える清純派だった岩下志麻が年齢を重ねることで野村芳太郎組の常連となり、ココで「山田五十鈴とは一味違うシャープでコワい姐御キャラ」というものを確立していく岩下志麻が出演で大爆発した。という事が言えるでしょうね。
本編で最も凍りつくシーンは末っ子に無理矢理ご飯を口に押し込むこのシーンでしょう。。
蟹江敬三が従業員役です。
さて。
こういう過酷な状況に於いて、最も被害を受けるのは、もう誰なのかはおわかりでしょうから、この修羅場についての説明はやめますけども、今も昔もこういう話というのは、古今東西なくなりませんね。残念ながら。
ですので、このお話しは、事あるごとに映画やドラマとしてリメイクされていくのでしょう。
最後の緒形拳が受ける「罰」はこの上なく重いです。
『砂の器』のようなドラマ性はありませんが、であるが故に後味の悪さが尋常ではない、野村芳太郎の逸品。
大竹しのぶが出てます。