前半のトレンディ感も注目。

ジョン・ウー『英雄本色 A Better Tommorrow』



邦題『男たちの挽歌』は素晴らしいですね。

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サム・ペキンパー深作欣二が一挙に襲いかかってきたような凄絶なアクションで有名な作品ですが、お話しの全体に漂う80年代的な軽さがある事に再見して改めて気づきました。

前半の、アクション以外のやや躁病がかったコミカルな描写も結構魅力的で、そういう状況に、チョウ・ユンファレスリー・チャンが、とてもよくハマっているところがいいですね。

今見ると、ちょっと『あぶない刑事』というか、バブリーでチャラいヤクザの出てるトレンディドラマなんですよね(笑)。

何しろ、あの、デカい携帯電話が出てきますよ!

それが後半のあの『ワイルドバンチ』も驚くような銃撃戦になだれ込んでいくこのギャップですよね。

コミカルさと凄みが同居するチョウ・ユンファが素晴らしいですね。

実は、第1作のユンファの出番は、全体的には少なめなのですが(どう没落したのがあまり説明なく進むのが、うまいですね)、それでも圧倒的なインパクトがあります。

彼が世界的なスターになるのは、当然でしょう。

それにしても、レスリー・チャンの可愛らしさ(としか言いようがなく、アクション映画的には、「おっちょこちょいな正義漢」の役割です)は、なんですかね。

自分の容姿が衰えることを悲観して亡くなってしまうなんて、この映像からは微塵も感じられません。

さて、何と言っても本編のすごさは、ガンアクションですが、銃の扱いは、実は日本のアクションと同じで、敢えてリアリティのないものになってますね。

ショットガン撃ってるのに、全く散弾になってなかったり、打った後の反動がなかったり、サイレンサーのついた銃が「ドカーン!」となったり、口径と破壊力がてんでチグハグだったり。

アメリカのアクション映画で培われてきたリアリズムとは全く違う、どこかマンガ的なアクションですね。

仲間にダマされて零落してしまったヤクザの復讐劇というシンプルな筋書き(アクション映画のスジはできるだけシンプルなのがよろしい)を非常にテキパキと見せる手腕は見事としか言いようがない。


ストーリーの軸はそのニセ札ビジネスをやっているヤクザと警官の弟の愛憎劇で、ココのプロセスが怒りを蓄積させ、爆発させる装置になってます。

そこにアナーキーチョウ・ユンファが絡むことで極上の美となるわけですね。

おいおい、そのショット、その展開はベタ過ぎるだろ!が結構出てきますが、ジョン・ウーはなぜか許せてしまいます。

それもまた魅力であり、才能ですね。

とにかく面白いことこの上ないので、是非ご覧ください。

タランティーノが如何にこの映画が好きかよくわかると思います。

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