今見ても驚くような作品。

ウディ・アレンアニー・ホール

大学の時に見て以来、久々に見直してますが、最近のウディ・アレンの映画と比べるととてつもなくアクが強い作品ですよね。

もう、ウディは監督に徹してますが、この頃の作品は自ら主演する作品が多く、ウディ・アレンの神経質で自意識過剰なキャラクター(ワザと増幅させてイライラさせてるところが彼らしいです)が画面に横溢していて、苦手な人は内容それ以前に拒否反応が出そうですね。

本作でも、生まれも育ちもニューヨークのユダヤ系の家庭に生まれ、6歳で中二病を発症して、長じてコメディアンになった男を演じております。

ユダヤフロイトベルイマンフェリーニマルクス兄弟ベケットマクルーハン、田舎嫌い、そして、セックスと、彼の映画を語る上で重要なタームのオンパレードの映画ですが(要するに中二病が大二病に変容しただけなのですが)、ホンモノのマクルーハンまで出演させてしまうパワー(コレ、フェリーニの手法ですねちなみに、。ホンモノのカポーティもチラッと出てきます)が本作にはありますね。

ウディ・アレン自身がナレーションする回想がこの映画の全体の構成なのに、その回想シーンのウディが聴衆に向かって話しかけたり、小学生の自分と現在の自分が同じシーンにいたり、もう、ほとんど、みなもと太郎のマンガです(彼の未だに連載されている『風雲児たち』でのみなもと太郎本人の登場回数はハンパではないです)。

ウディの初期の作品はもっとやりたい放題ですが、本作とて多少抑制こそされてますが、コレだけのやりたい放題映画がアカデミー作品賞をとり、かの、チャップリンに大絶賛されたというのは、ウディ・アレンの並外れた才能を、ハリウッドも認めざるを得なかったということなのでしょう。

現在は、イギリスに移住して、80歳を優に超えているにもかかわらず、結構なペースで映画を撮っておりますが、最近の肩の力が抜けきった、味わい深い作品も素晴らしいですけども、若き日の暴れまわっていた頃のウディ・アレン作品を見てこそですよね。

ゴードン・ウィリスの落ち着いた色調の映像は、このけたたましい作品に品位を与えており、ホッとします。

ゴッドファーザー』の撮影監督とメインキャストの1人がこの映画で重要な役割を果たしているのは、偶然なのでしょうか。

この話のキモである、ウディとダイアン・キートンの会話のシーンの演出は、ジョン・カサヴェテスの影響を感じますね。

この作品を有名にした、セリフと字幕が全く違うという演出は意外とパクられてないような気がします(あるんでしょうか?)。

それにしても、ユダヤ系の男性が女性と別れる事になった経緯を、コレだけ饒舌に語った映画もないでしょうけども、全体として、フェリーニの『81/2』のオマージュにもなってますよね。

映画業界を描いているわけではないですが、ウディ・アレンの半生を過去、現在を行き来しながら描いてますし。

ただし、フェリーニにみたいにそれが嘘八百にエスカレートしていくようなことはありませんが。

後半のロサンジェレスの描き方がすごい。こんなに嫌悪感と違和感たっぷりに描いた監督がいたでしょうか(ウディは、胃の調子すら悪くなり、仕事を降板しているのです。そんなに西海岸がイヤなんですか・笑)。

各シーンは、そんなに決めないで撮っているように見えますが、その後の編集がものすごいる作品ですよね。

90分くらいの映画なのに、3時間くらいの内容を見たような濃密さがあります。

よく見ると、クリストファー・ウォーケンが出てたんですね(笑)。

コレだけ斬新な演出満載の映画がアカデミー作品賞と脚本賞取れたなんて、たまにはアカデミー賞もいい事するんですね。

おっさんになって見ると、違った意味で沁みてくる作品です。

西にオルトマン、東にウディ・アレンという、大変よき時代でした。

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