菅原文太出番少なめですが、面白いです。

深作欣二『仁義なき闘い 広島死闘編』

 

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またしてもオープニングが原爆投下!

 

広島の村岡組と大友組のサグライフ&バイオレンスを中心に描く第2作。

深作欣二の演出は相変わらずハイヴォルテージで役者たちは実に嬉しそうに画面狭しと暴れ回っております。

アクションシーンは、明らかに前作よりもエスカレートしていて、とにかくすさまじく、キャメラワークのアングルの凝り方も、前作以上です。

広能組は港湾で細々と仕事をしているビンボな組でして(犬の肉を食っているほどです)、やむなく山守組の仕事を請け負う事で、この抗争に少しだけ関わる事になります。

今回は、村岡組が如何に広島市を牛耳っていくのか?がメインですので、菅原文太はあんまり出てきません。

しかし、その代わりに、大友組の組長を演じる、千葉真一がとりわけ躁病的なヤクザを演じておりまして、暴れたい放題です。

 

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楽しそうにやってますよね。

 

村岡組の組員を吊るし上げにして銃で嬉々として虐殺するシーンはかなりすさまじいです。

 

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川谷拓三を拷問の末、惨殺!

 

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 シリーズ屈指の惨殺シーン!

 

このシリーズでも屈指の残虐で凶暴な武闘派として、暴れまわり、とうとう逮捕されてしまい、大友組は壊滅してしまいます。

これと対照的なのが、村岡組の若衆、山中を演じる北大路欣也の愚直な狂犬ぶりが素晴らしいです。

 

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「人斬り以蔵」を演じる北大路欣也。村岡組の野望に使われる鉄砲玉を見事に演じました。

 

北大路は村岡組によっていいように利用されているだけの都合の良い道具でしかない姿を、見事に演じております。

北大路は決して演技がうまい役者とは言い難いですが、多分、本作で彼の体当たりの演技は畢生のものなのではないでしょうか。

また、全体をワザとザラザラとした質感の映像で撮影したキャメラも特筆すべきでしょう。

 

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村岡組は、山中のお陰で広島市の支配者となったのだが。

 

トランプ大統領就任を祝しまして。

ロバート・ゼメキスバック・トゥ・ザ・フューチャー3部作』

 

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ドナルド。という大統領が共和党から誕生したことを記念して(?)、かなり久しぶりに見たくなりました(注、前回は「ロナルド」でしたね)。

今見ると、マイケル・J・フォックスちゃんの可愛らしさが、たまらんですね。お年玉をあげたくなります。

後にわかることですが、実は、若年性のパーキンソン病がすでにこの作品の撮影中に発覚していて、part 2とpart3が余り間をおかずに公開されたのは、彼の病気の進行が進む前に撮影を終えてしまうためだったんですね。

最近は、治療のかいがあってか、俳優の仕事に徐々に復帰しているようで、よかったですね。

もう古典と言ってよい映画でしょうから、細かく説明する必要もないでしょうけども、タイムマシンを使って、1985年から1955年にアクシデントによってタイムスリップさせる事で起こるおかしさを見せることが主眼ですよね。

part1で一番アブないところは、主人公マーティ・マクフライの母親ロレインの高校時代に出くわしてしまって、母親が自分に好意を持ってしまうという所です。

そこをSFドタバタ風にして、なんとか父と母を恋人同士にすることに専念しつつ、なんとか1985年に戻るという事が主眼ですけども、実際、どうなんでしょうね、息子が突然高校生の頃の母親に出会ってしまう時の気持ちって。

コレは逆に娘が高校生の頃の父親に出会ってしまうという事ですが、コレはあくまでの娯楽に徹しているのでそこは掘り下げるよりもシチュエーションのおかしさにしかシチュエーション利用していませんけども、フロイト的にとても興味が出てきますよね。

娘は父親に似ますし、息子は母親に似ますから(中年以降はコレが入れ替わってくるのが不思議です)、間違いなく他人とは高校生の父/母は思わないでしょうね。

この作品でも、父ジョージはマーティが何者であるのかには全く興味を持ってませんけども、ロレインは、「カルヴァン・クライン」にねほりんぱほりんになっていきますね。

大林宣彦だったら、ココをもっともっと掘り下げていくんでしょう(そういう人間の生々しさには一切関わらないのが、スピルバーグと門下生のセオリーですね)。

あと、とてもイミシンなのは、この3部作で出てくるのは、1885年、1955年、1985年、2015年なんですけども、1960〜70年代がないんですよね。

ゼメキス、というか、スピルバーグとその門下生(そしてジョージ・ルーカスも加えていいと思いますが)には、公民権運動やヴェトナム戦争がないんです。

フィスティーズとエイティーズを3部作の中心に据えて、そこに西部開拓時代と軽くディストピアックな近未来をくっつけると、それは現在まで続く、「スピルバーグアメリカ史」ですよね。

スピルバーグは2016年に至るまで、この時代を映画にした事はありません。

ゼメキス監督はご存知のように『フォレスト・ガンプ』でアカデミー作品賞を取るわけですが、あそこには、やっぱり公民権運動などのアメリカ国内のドロドロは出てきませんし(フォレスト・ガンプの主観にはないのだ。という事でエクスキューズしてますよね)、ヴェトナム戦争の描き方は、『ディアハンター』や『フルメタル・ジャケット』、『ナシュヴィル』などを見てしまった後では、違和感があります。

part 1に何気なく「ジョン・F・ケネディって誰だ?」というセリフが出てきますし、part 2でビフによって変えられてしまった歴史によって、ジョージ・マクフライが銃で殺されてしまうのも、1974年であるのは、偶然ではないですよね。

こう考えていくと、結構意味深いかもしれませんね。

 

アメリカの歴史は、1950年代から一挙に80年代につながれば最高に素晴らしい。なぜなら、この2つの時代はほとんどおんなじだから。というメッセージが、「ケネディは知らないけども「ロナルド・レーガン」はよく知っているというセリフからの実は如実に表れているような気がします。

また、マーティが演奏するチャック・ベリーの曲がやがてヴァン・ヘイレンになっていくことでも具体的に示していますよね(ここにもジミ・ヘンドリクスの意図的なオミットがあります)。

そして、その楽しい時代が2015年につながるとどうなるのか?

というところになってくるとだんだんと話はまことに物騒になって参りますので、この辺で(笑)。

頑張ってくださいませ、ドナルド大統領閣下。

 

追伸1
ロバート・ゼメキススピルバーグとは異なり、ジワリジワリと60〜70年代を描く方向に進んでおります。

1974年にワールドトレードセンターを綱渡りしたという、ローラン・プティの事件を2015年に『ザ・ウォーク』として映画化しております。

 

追伸2

作中で出てくる「ジゴワット」という単位はありません。

「ギガワット」の間違いですが、そんな事はどうでもいいのです(笑)。

 

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追伸3

なんと、スピルバーグワシントン・ポスト紙による、ニクソン政権への攻撃。という映画を撮りました!

大人になったんだなあ、スピルバーグも。しかも、いい映画でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タワーレコードへの愛に満ち溢れたドキュメンタリー。

Collin Hanks『All Things Must Pass』

 

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タワーレコードの栄枯盛衰記をひたすら草創期の人々の証言を中心に巧みに構成されたドキュメンタリー。

なんと、最初はドラッグストアの一角で、中古のシングル売ってたのが始まりだったんですね。

それが、アメリカ西海岸という、自由な環境な中でドンドン大きくなっていく様が実に生き生きと描写されていて、実に面白かったですね。

服装に一切決まりもなく、売れない頃のミュージシャンが結構働いていて(デイヴ・グロールはワシントンDC店の店員でした)、店員も二日酔いで働いていたり、事務所で寝泊まりしているような豪傑もいたようです。

ミュージシャンも多くきていたようで、中でもエルトン・ジョンはサンセット大通りにあるタワーレコードにデカイ車で乗り付けて、自宅用、別荘用に必ず2~3枚をセットにして買いまくり、とんでもない量のレコードを毎回買っていたようです。

 

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エルトン・ジョン

 

まあ、要するにヒッピーの溜まり場になっていて、ある種の水滸伝の豪傑みたいな人たちの坩堝だったんですね、当時のタワーレコードは。

 

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いやー、行きたかったなあ、この頃のタワーレコード

経理を担当している方がかなり現実的な人だったので、創業者ラス・ソロモンの梁山泊の頭目のようなあり方をうまくコントロールしていたようで、だからこそ、ビジネスでもちゃんと成功できていたようです。

とはいえ、この経理担当の方も、私生活は毎年スポーツカーを買っているようなド派手な生活してたみたいですけど(笑)。

やはり、日本への出店のくだりは、日本人としては興味深かったです。

回転とともに渋谷店にお客が押し寄せた映像は感慨深いものがあります。

この日本への進出が余りにもうまく言ったのが、タワーレコードを調子に乗せてしまったのでしょう、そこからの人々の証言が、儲け話ばかりになって言って、ドンドンつまらなくなっていきます。

 

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絶頂期のラス・ソロモン。

 

経理担当のバドがタワーレコードを辞めてしまい(数年後に亡くなります)、時代がインターネットへと移行していくと転げ落ちるようにタワーレコードの業績は悪化していき、正直見ていられなくないですね。辛い。

タワーレコードの転落はそのまま現在の音楽業界全体の危機であったので、どんなに堅実に経営していても、やはり、厳しい状況に置かれたのは、間違いないでしょう。

第1号店のサクラメント店が閉店するに辺りが店頭を飾ったのが、タイトルである「All Things Must Pass」だったんですね。

ロックファンの方でしたら、コレがジョージ・ハリスンの大作アルバム『All Things Must Pass』から取った事はすぐにわかると思いますけども、ラストにラス・ソロモンが日本のタワーレコード平和島の本社を訪れるシーンは、音楽好きには涙なくして見ることはできないでしょう。

 

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コレがタイトルの元となったジョージ・ハリスンのアルバム。

 

バックに流れていたのは、そのジョージ・ハリスンの「All Things Must Pass」でしたね。

実はこのアルバム、ビートルズ時代に作っていながら、ジョンやポールに反対されてアルバムに入れることができなかったものばかりでして、ビートルズ時代の無念を晴らしたアルバムとしても大変有名です。

LP3枚組にもかかわらず、なんと全米1位を獲得し、「My Sweet Lord」はシングルとして大ヒットしました。

今後、こういう録音された音楽がどのように聴かれていくのかは、私にはわかりませんが、「いい音楽を人々に分かち合っていく」という、ラス・ソロモンの思想は無くなることはないでしょう。

 

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今見ると、むしろ現実がこれに近づいている気が。

マーティン・スコシージ『タクシードライバー』

 

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このオープニングの映像が素晴らしい!

 

久しぶりに見ました。

最近のスコシージの作品は特に見る気は起きませんが、コレはホントにインパクトのある作品でしたたな。

今考えてみると、ヴェトナム戦争によるPTSDを描いた作品なんですよね、コレ。

冒頭の雨降る中をタクシーか真夜中のニューヨークを写した映像の美しさが素晴らしいですね。

ココにアルト・サックスソロがフィーチャーされた曲がかぶるのですが、ココがヘタすると1番好きかもわかりませんね。

恐らくは戦争体験が関係していると思いますが、不眠症になってしまったロバート・デニーロ演ずるトラヴィスは、夜も平気なので、ニューヨークでタクシードライバーになります。

 

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 ヴェトナム戦争から帰還した現実は厳しかった。

 

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休みの日にポルノ映画に行くくらいがトラヴィスの楽しみ。

 

26。という設定が今ではオドロキですよね。もっと年齢が上に見えます。

20代前半であの地獄を味わうという事は、もう一生忘れる事はできないでしょう。。

大統領選挙に立候補したパランタイン上院議員の事務所で働いている女性、ベツィ事が気になって、ヴォランティアしたいとかなんとかでまかせを言って、彼女に接近します。

 

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しかし、いかんせん、高校をドロップアウトしたような海兵隊出身者と選挙事務所で働いている大卒の女性では会話が今ひとつ噛み合うはずもなく。

 

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しかも、映画に誘うのですが、ポルノ映画(しかもイタリアのとりわけエグイやつです)に誘うという感覚。

まあ、どうしようもないですよね。。

スコシージ監督が黒人と不倫をしている奥さんを殺す。とトラヴィスに告白する男を演じているのですが、コレがイイですね。

 

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左がスコシージ監督。

 

とにかく、当時の荒んでいるニューヨークがやや戯画化されてスケッチ風に描写されているわけですけども(通りに売春婦がめちゃめちゃいますよ。多分、ホンモノを撮っているのでしょう)、そこで出会った、当時13歳のジョディ・フォースター演じる売春婦との出会いがこのお話しをあらぬ方向に変えていきます。

 

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 天才子役であったジョディ・フォースター。

 

ジョディ・フォースターは後にアカデミー主演女優賞を受賞しますが、もうこの頃からものすごい才能を発揮していますね。

70年代後半にニューヨークはパンクなどの強烈な音楽が生まれる事になりますが、この映画は、そういうエネルギーが弾ける直前を見事に表現していて、そういう意味で、本作は、パンク映画と言ってよいのではないでしょうか。

スコシージ本人は、ブルースとザ・バンドみたいなロックやジャズが好きな人なので、パンクなんて大嫌いでしょうけども、この頃のニューヨークを舞台にアタマのおかしくなった男が暴走する映画を撮れば、それはどうしたってパンクになってしまいますよね。

音楽がバーナード・ハーマンというヒッチコックとのコンビなどで大変見事な仕事をした人が担当しているんですけども、あのヒッチコック作品のイメージからすると、名前を伏せたら彼音楽とは分からないかもしれません。

正直、もう「過去の人」になりつつあるハーマンを起用したのは、スコシージが熱狂的なシネフィルで、ヒッチコックを溺愛していたからなのだと思いますが、ハーマンの仕事は、全盛期に匹敵する見事な仕事ぶりで、これが遺作です。

なんと、サントラをスタジオで録音して数時間後に亡くなったそうです。

ハーマンお得意の分厚いストリングスが作り出す不協和音が、アルトサックスの美しいソロへとつながっていくサントラは、70年代の映画でもベスト3に確実に入る傑作で、私はついついサントラも買ってしまいました。

この映画のコワいところは、なぜ、トラヴィスが突然たくさんの拳銃を購入して、身体を鍛え始めるのかが余り明確に説明していないことですね。

 

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妙に生き生きしだすトラヴィス

 

身体を鍛えて銃を撃つ訓練を始めたトラヴィスがこれまでのドンヨリとした表情から、妙に生き生きしてきているのが、なんともコワいですが、ニコニコしている人がコワい。というのは、デニーロが後に得意とするところではあります。

You talkin' to me ? と言いながら、自宅で袖に仕込み銃を隠しているのを何度も出すシーンはまことに異様です。

 

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You takin' to me ?

 

この映画、今見ると、突然単独で自爆テロや無差別に銃を乱射するテロリストの心理を描いているようにも見えますよね。

ハッキリ描いてませんけども、ヴェトナム戦争海兵隊員として戦い、名誉除隊しているにもかかわらず、彼がやっている仕事はしがないタクシードライバーです。

その不条理と社会へのルサンチマンは、現在の欧米に生活するムスリムの人々と変わらないでしょう。

それがなぜか、三島由紀夫もビックリな肉体改造になっていくのが、トラヴィスの異様さです。

軍隊生活の緊迫感がないと落ち着かなくなっているのでしょうね。

そういえば、顔色が良くなっているということは、不眠症も改善しているのでしょう。

 

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こんなデカい拳銃が手に入るというのはどうなんでしょうね。。

こういうトラヴィスのような男は、イラク戦争でも生み出されているらしく、多くの殺人事件が実際に起こっているという、ショッキングな報告があります。

奇しくも、本作も大統領選中のお話しというのが、これまたコワいわけですが。

このトラヴィスの暴走ぶりというか、パンクぶりが本作のヤマ場なのですが、それは見てのお楽しみです。

それにしても、70年代の最も治安の悪い頃のニューヨークのロケーションがとにかく見事で、これとバーナード・ハーマンの全盛期を思わせる素晴らしいサントラが本編の価値を相当に高めたことは、間違いないでしょう。

今見直すと、アメリカがこの頃から今日に至るまで、ドンドン荒んでいってることがよくわかる作品です。

 

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 脚本を担当したポール・シュローダーは後に『Mishima』を撮ります。

ミシマも身体をムキムキに鍛えて自衛隊の駐屯地を襲撃したわけですが。。

 

 

 

『男はつらいよ』に接近した異色作。

鈴木則文『突撃一番星』

 

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『トラック野郎』の第7作目。

実は結構異色作でして、今までは必ず、ボルサリーノや子連れ狼のようなライバルのトラック野郎が出てくるんですが、この回は出てきません。

 

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 せんだみつお(笑)。

 

その代わりに、せんだみつおや川谷拓三がその役に近いことを分担して行います(2人ともトラック野郎ではありません)。

 

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なんと、真珠の研究をしている川谷拓三!

 

マンネリを打破しようとしているのでしょうか、冒頭にUFOが出てきます(笑)。

 

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飛びます!

 

当時、『未知との遭遇』大ヒットしたり、多分、ユリ・ゲラーの超能力ブームだったこともあり、鈴木則文は、とにかくサービス精神の塊なので、すぐに飛びついて、本作に取り込んでしまったのでしょう(笑)。

マドンナ役は、イルカの飼育員の原田美枝子ですが、圧倒的存在感愕然あるのは、樹木希林です(一応、イルカを研究しているのです・笑)。

 

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樹木希林は若い頃から異彩を放っていた。

 

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 健康的なエロスを放つ原田美枝子

 

当時の彼女はかなり若いと思うのですが、もうすでに怪優としての存在感は生半可ではありません。

今回の舞台は三重県の志摩と岐阜県の高山です。

全体的に人情話のトーンが強く、いつもよりおとなしめですけども、そのかわりドラマがとてもよくできていて驚きます。

とはいえ、相変わらずのお下品なエロと笑いは健全です。

この路線をやり続けていたら、もしかすると、『男はつらいよ』のような長期シリーズになった可能性もあった、ある意味、転換期となった作品。

 

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雑な作りが返す返すも残念!

山口和彦『女必殺拳』

 

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志穂美悦子の名を世に知らしめた、「女必殺拳シリーズ」の記念すべき第1作。

監督が鈴木則文と思っていたら、彼は脚本のみで参加してるんですね。

千葉真一率いるJACの名の名声を「サニー千葉」とともに世界中に轟かせたの功績は決して小さいものではありません。

志穂美悦子のアクションがガチですごいのは、もうオープニングで充分証明されてますので、是非とも。

 

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それにしても、中国に返還される前の香港はいいですよね、怪しくて。

『Gメン75』の特別番組でも、やたらと香港ロケがあったような気がしますけども、そういう、「エキゾチズム」を身近に感じさせる都市でした。

ただし、本作では香港ロケは一切ございません!残念!

志穂美悦子の兄は、「セントラル貿易」という会社が行なっていると思われる麻薬密売の捜査のためにGメンとして東京に行ったのですが、行方不明になってしまいました。

 

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 兄の行方不明を伝えられる志穂美悦子

 

なぜか、拳法の使い手をたくさん養っている貿易会社なのが不思議なんですけども、昔の娯楽映画は、そういう敢えて脇が甘くできているところが素晴らしいですよ。

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ご覧ください!このバカ煽り!!

 

ストーリーはですね、どうって事はないんですよ(笑)。

それは悪口ではなくて、そこにそんなに力点はないんです。

もう、志穂美悦子の素晴らしいアクションを見て欲しいんです。

 

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ヌンチャクの見事なさばきを見よ!

 

身のこなしが生半可でなさすぎて、もう振り切れてます。

中国人と日本人の混血という設定も要するに拳法の使い手。という事にしたいが為のご都合主義なのであって、特に意味もありませんし、演技もさしてうまいわけではない(後に、アクションから演技派にシフトしていきますが)。

というか、そこを千葉真一鈴木則文も求めていなくて、その初々しさ、演技ではないアクションの純粋な素晴らしさを彼女に体現してもらいたかったんだと思います。

彼女の身体能力は、ちょっとやそっとの特訓などで身についたものではなく尋常なレベルではありません。

ちょうど、フレッド・アステアダンスをトコトンまで極めたのと似ています。

当然の事ながら、千葉真一のアクションも出てきますので、ご安心を。

 

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都合のよいタイミングで現れる千葉真一


なので、撮影もアクション以外はかなりボヤッとしていて、テレビの『仮面ライダー』くらいのクオリティではあります(笑)。

その点で、ジャッキー・チェン主演のカンフー映画と比べると、見劣りする所があります。

未熟な拳法家のジャッキーが老師匠にしごかれて敵討ちをするという決まりのストーリー展開ではあるんですが、その話しのディテールの詰め方が、シッカリしてるんですよね。

この点が、スッカリ斜陽になってしまった、当時の日本映画の厳しい現実ではあるんですけども、それでも藤田敏八などはそれを逆手に取った映画を撮ってますからね。

しかし、彼女を後継するようなスターは未だに日本には存在しない事を考えると、志穂美悦子の日本映画史における凄さがわかるというものです。

現在は、長渕剛の奥さんとして、芸能界を引退してしまいました座が、その決して長くはない芸能活動において、刻印した強烈な映像は今以て強烈なインパクトを与えます。

鈴木則文が自ら撮っていたら、もっと長くて面白いシリーズになった可能性があるんですけども、当時、「トラック野郎シリーズ」があったので、ホントにもったいないですね。

 

追伸

この作品に出てくる「少林寺拳法」は、日本で生まれた拳法です。念のため。

 

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鈴木則文が今ほど求められている時代はない。

鈴木則文『桃次郎男一匹』


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テーマ曲は阿木燿子と宇崎竜童のコンビ

https://youtu.be/S2X0P4TuE44


おなじみ、『トラック野郎』第6作目。

以前も同じ事書いてますけども、このシリーズはどこから見てもいいですし、全部面白いです(笑)。

今回の舞台は佐賀、鹿児島が中心。

マドンナは、なんと、夏目雅子!まだ20歳です!!

 

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毎度おなじみの桃さんの主観から見たマドンナ(笑)。


唐津藩の剣術師範の家柄にして、の剣道の腕前という設定になっており、相変わらず桃次郎と釣り合いが全く取れておりません。

桃さんは調子こいてマドンナと剣道の稽古したら(地質学者です!とか、またしてもデマカセを言ってますが・笑)、夏目雅子にシコタマ打ち込まれると、桃さんはなぜか山に篭って剣術修行をして悟り(?)を開いたのですが、遭難します(笑)。

 

 

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若山富三郎に襲いかかろうとする菅原文太。自分たちのやってきたやくざ映画すらギャグにしてしまう素晴らしさ!

 

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若山富三郎菅原文太が殴り合うとか、なんちゅうおおらかな時代でしょうか。

それを偶然助けたのが、同じトラック野郎の若山富三郎で、あだ名は「子連れ狼」(笑)。

ちなみに彼は夏目雅子の義兄という無茶な設定です。

もう、いちいちサービスが満天で、笑わせ、泣かせのタイミングがもう絶妙です。
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当然、ト◯コのシーンもございます。


ベタなフィルムと音楽の早回しとか、若山富三郎の当たり役をそのまんまあだ名にしてみたり、チョイ役がいちいちツボ。

 

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マチャアキもチョイ役。桃さんを30日免停にしてしまう。


ギャグ、ラブコメ、アクション、人情もの、ホームドラマがたったの90分にぶち込まれた、いわば、遊園地(もう死語に近づいてますが)のジェットコースターに乗っているような楽しさです。

 

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ジョナサンの大家族も今回は出番少ないですが出てきます。桃さんの隣にいる女性が誰なのかは見てのお楽しみ。

明らかに『男はつらいよ』のアンチテーゼとして作られた、お下品映画なわけですが、「男はつらいよみたいに長く続けるのはよくない)との菅原文太の一声でシリーズは10作という区切りの良いところで終わってしまったんですが、だからこそ、レギュラー、スタッフ陣の全盛期を遺すことができたのは、むしろ、幸いであったでしょう。

 

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唐津くんちのシーンもあります!

 

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そして危険きわまりない、モチの早飲み競争!


もう、こんな痛快な映画を日本は作ることができないのでしょうか?

菅原文太とキンキンがのびのびと大暴れしている姿を是非ともご覧ください。

 

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