トランプ大統領就任を祝しまして。

ロバート・ゼメキスバック・トゥ・ザ・フューチャー3部作』

 

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ドナルド。という大統領が共和党から誕生したことを記念して(?)、かなり久しぶりに見たくなりました(注、前回は「ロナルド」でしたね)。

今見ると、マイケル・J・フォックスちゃんの可愛らしさが、たまらんですね。お年玉をあげたくなります。

後にわかることですが、実は、若年性のパーキンソン病がすでにこの作品の撮影中に発覚していて、part 2とpart3が余り間をおかずに公開されたのは、彼の病気の進行が進む前に撮影を終えてしまうためだったんですね。

最近は、治療のかいがあってか、俳優の仕事に徐々に復帰しているようで、よかったですね。

もう古典と言ってよい映画でしょうから、細かく説明する必要もないでしょうけども、タイムマシンを使って、1985年から1955年にアクシデントによってタイムスリップさせる事で起こるおかしさを見せることが主眼ですよね。

part1で一番アブないところは、主人公マーティ・マクフライの母親ロレインの高校時代に出くわしてしまって、母親が自分に好意を持ってしまうという所です。

そこをSFドタバタ風にして、なんとか父と母を恋人同士にすることに専念しつつ、なんとか1985年に戻るという事が主眼ですけども、実際、どうなんでしょうね、息子が突然高校生の頃の母親に出会ってしまう時の気持ちって。

コレは逆に娘が高校生の頃の父親に出会ってしまうという事ですが、コレはあくまでの娯楽に徹しているのでそこは掘り下げるよりもシチュエーションのおかしさにしかシチュエーション利用していませんけども、フロイト的にとても興味が出てきますよね。

娘は父親に似ますし、息子は母親に似ますから(中年以降はコレが入れ替わってくるのが不思議です)、間違いなく他人とは高校生の父/母は思わないでしょうね。

この作品でも、父ジョージはマーティが何者であるのかには全く興味を持ってませんけども、ロレインは、「カルヴァン・クライン」にねほりんぱほりんになっていきますね。

大林宣彦だったら、ココをもっともっと掘り下げていくんでしょう(そういう人間の生々しさには一切関わらないのが、スピルバーグと門下生のセオリーですね)。

あと、とてもイミシンなのは、この3部作で出てくるのは、1885年、1955年、1985年、2015年なんですけども、1960〜70年代がないんですよね。

ゼメキス、というか、スピルバーグとその門下生(そしてジョージ・ルーカスも加えていいと思いますが)には、公民権運動やヴェトナム戦争がないんです。

フィスティーズとエイティーズを3部作の中心に据えて、そこに西部開拓時代と軽くディストピアックな近未来をくっつけると、それは現在まで続く、「スピルバーグアメリカ史」ですよね。

スピルバーグは2016年に至るまで、この時代を映画にした事はありません。

ゼメキス監督はご存知のように『フォレスト・ガンプ』でアカデミー作品賞を取るわけですが、あそこには、やっぱり公民権運動などのアメリカ国内のドロドロは出てきませんし(フォレスト・ガンプの主観にはないのだ。という事でエクスキューズしてますよね)、ヴェトナム戦争の描き方は、『ディアハンター』や『フルメタル・ジャケット』、『ナシュヴィル』などを見てしまった後では、違和感があります。

part 1に何気なく「ジョン・F・ケネディって誰だ?」というセリフが出てきますし、part 2でビフによって変えられてしまった歴史によって、ジョージ・マクフライが銃で殺されてしまうのも、1974年であるのは、偶然ではないですよね。

こう考えていくと、結構意味深いかもしれませんね。

 

アメリカの歴史は、1950年代から一挙に80年代につながれば最高に素晴らしい。なぜなら、この2つの時代はほとんどおんなじだから。というメッセージが、「ケネディは知らないけども「ロナルド・レーガン」はよく知っているというセリフからの実は如実に表れているような気がします。

また、マーティが演奏するチャック・ベリーの曲がやがてヴァン・ヘイレンになっていくことでも具体的に示していますよね(ここにもジミ・ヘンドリクスの意図的なオミットがあります)。

そして、その楽しい時代が2015年につながるとどうなるのか?

というところになってくるとだんだんと話はまことに物騒になって参りますので、この辺で(笑)。

頑張ってくださいませ、ドナルド大統領閣下。

 

追伸1
ロバート・ゼメキススピルバーグとは異なり、ジワリジワリと60〜70年代を描く方向に進んでおります。

1974年にワールドトレードセンターを綱渡りしたという、ローラン・プティの事件を2015年に『ザ・ウォーク』として映画化しております。

 

追伸2

作中で出てくる「ジゴワット」という単位はありません。

「ギガワット」の間違いですが、そんな事はどうでもいいのです(笑)。

 

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追伸3

なんと、スピルバーグワシントン・ポスト紙による、ニクソン政権への攻撃。という映画を撮りました!

大人になったんだなあ、スピルバーグも。しかも、いい映画でした。