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うますぎてクローネンバーグじゃないみたいです。

デイヴィッド・クローネンバーグイースタン・プロミス


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ロンドンで暗躍するロシアン・マフィアの世界(麻薬と売春のシンジケートです)を描いているのですが、粗暴で暗くて残酷で。

そういう世界を淡々と撮れるクローネンバーグという人は、相変わらずすごいですね。

入り込んでいかないんです。

しかし、ロンドンのロシア系の社会を撮っている監督はカナダ人。というのは、よく考えてみるとすごい。

登場人物の大半が、母語として英語を話しておらず、しかも、ロシア人ではない人もいます。

つまり、役者はこういう状況にあります。

母国でない国を舞台とし、ロシア人ではないのに、ロシア訛りの英語を話している演技をしている。

そして、撮っている監督はカナダ人(笑)。

イタリア系アメリカ人の監督がハリウッドで映画を撮ると、イタリア系の役者で固めてイタリア訛りのタップリの英語が行き交う映画を撮ったりしますが、もう、本作まで来てしまうと、ほとんど日活の無国籍アクションだと思います。

ナオミ・ワッツイングランド人ですが、役柄はやっぱりロシア系というねじれ(メインキャストは全員ロシア人ではありません)。

でも、ヨーロッパは都市部はほとんどこんな感じなのかもしれませんね。

国籍とか人種がだんだんコスプレみたいになってきて、それをアメリカで撮ってないのも面白いですね。


それにしても、ナオミ・ワッツはすごいですよ。

何しろ、ド変態監督のリンチ、クローネンバーグの作品に出演しております。

あらっ、よく見たら、イエジー・スコリモフスキが頑迷な老人を演じてます。

クローネンバーグ作品にしては、人間関係がとても複雑で、そこがお話のキモになっているのが、結構異色だったりしますね。

虚構と現実の混濁というのは、過去の作品にありますが、現実の人間関係をテーマにしていると言うのが、ベタな言い方ですが、クローネンバーグの作家としての成熟を感じます。

しかし、こういう作品をイタリア系やロシア系の監督が作ると、とかく思い入れが過剰になりますが、カナダ人の彼には、そういったものはほとんどなく描いていているのが、私には、好感が持てます。

とはいえ、ヴィゴ・モーテンセンがファミリーの一員になる時の加入の儀式の「静かな変態ぶり」は、やはり、相変わらずだなと。

本作は、ストーリーテリングが実にうまくできていて、何だかクローネンバーグの映画じゃないみたいですが(笑)、ほとほとそこに感心しますね。

なんというか、ロマン・ポランスキの『チャイナタウン』とか、『フランティック』みたいにうまくできていているんですよ。

後半のどんでん返しは、うまいですねえ。

全体がとても抑制されたトーンでそれをやってるのがさすがです。

また、終わり方がとてもうまいですね。

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