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アルファビルとブレードランナーをつなぐ傑作

ライナー・ウェルナー・ファスビンダー『あやつり糸の世界』第1部、第2部

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ものすごくペースで映画を撮りまくり、しかも、同時に舞台の演出までやり、太く短い人生を送った、ファスビンダーのSF大作がようやく公開と相成りました。

3時間をゆうに超える作品で、2部合わせて2700円はチト高かったですが、まあ、滅多に上演されることもなかろうと思い、見たわけです。

しかし、ホントに誰とも似ていない独特な作家ですよね。

コレだけオリジナルに世界を持った人は、あとはフェリーニとかタルコフスキーくらいなものではないでしょうか。

クローネンバーグの『スキャナーズ』とか『ビデオドローム』『デッドゾーン』は影響を受けてると思います。

独特のドラッグ感、音楽の使い方も似てますね。

誰からも理解されず苦悩する主人公とか。

ファスビンダーがトコトンこだわっているのは、第一次世界大戦後のドイツのキャバレー文化ですよね。

女優さんのメイクや衣装が完全にディートリッヒしてます。

あらすじは、『トータル・リコール』ではありますが、当然のように、シュワちゃんのようなトントン拍子の展開も(それ自体を皮肉として扱っているのがこの映画のキモですが)アクションもなく、あの映画の序盤が延々3時間続くわけですね(笑)。

ドイツと思しき国で政府をあげてある研究が行われています。

それは、コンピュータのヴァーチャルな世界に、人間の世界を再現して、ヴァーチャル人間も住まわせてしまおうと。

そういうゲームがありますが、それの究極版です。

当人たちは完全に意思を持って行動し、自分たちをリアルな存在として認識するところまで持っていってしまうんです。

コレによって、このヴァーチャル世界の中でいろんな実験を行って、未来予測ができると考えているんですね。

しかし、その研究を行っている研究所の技術部門の責任者フォルマーが不可解な死を遂げます。

後任となったフリードリヒ・シュティラーが、この死を調べていると、通常では説明でにないような奇妙な事がいくつも起きていくのですが、次第にシュティラーは真実に近づいていきます。

しかし、コレによって彼は狂人扱いされ、誰からも理解されなくなっていきます。

ココまで書くと、ホントにクローネンバーグの若い頃の作品ソックリです。

このプロセスを描く執念がはファスビンダーは、ハンパじゃないんですね。

何せ3時間越えです。

第2部を見ていて、オイオイ、どうやって終わるんだよ、この映画は!と、思ってしまうほど、不穏なんですよね、後半の展開が。

もっとも重要なトリックは、第一部のラストに明らかになってしまうので、それ自体は、結構ありきたりではあるんですが、やっぱり、見せ方がすごいですよ。

カメラワークがかなり独特で時々謎ですね(笑)。

ソレ、ホントに要るのかと(笑)。

しかしながら、コレがなかったら、多分、『ブレードランナー』はなかったかもしれませんし、『トータル・リコール』のアイディアも恐らくはディックと言うよりもコレのような気がします。

こんなトンデモない映画が1973年にすでに作られていたという事実に驚きました。

惜しくも亡くなったデイヴィッド・ボウイがなんでドイツに引き寄せられたのか、コレを見て少しわかった気がします。

ゴダール『アルファビル』へのオマージュでしょう、主演だったエディ・コンスタンティヌが出演してます。

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