ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファレス『Battle of Sexes』
WTAという女子テニスの協会を使ったことが、テニス協会を刺激しました。
バトル・オブ・セクシーズ。という邦題は昨年公開された『ドリーム』と同じくらいひどい!
「セクシーズ」て(笑)。午後ローじゃないんだから。
はい。
本作は、1973年に行われた、男女によるテニスの試合、Battle of Sexesに基づいた映画です。
セクシー金髪水着美女軍団は出てきません(笑)。
史実ですから、当時、現役女子プロテニス・プレイヤーのトップ選手である、ビリー・ジーン・キングが、往年の名選手である、ボビー・リッグスに勝利して、当時としては破格の賞金10万ドルを獲得した事は、ウィキペディアにすら書いてあります。
当然、この手の作品は、役者の力量、監督の演出力の確かさ、美術や撮影のこだわりが問われるわけですが、結論からいうと、これらすべてがおしなべて高水準!
本年公開した新作の中でもベスト3は確実なのではないでしょうか。
主演の2人、エマ・ストーンとスティーヴ・カレルは共にキャリアハイを叩き出しております。
エマ・ストーンの演じる、ビリー・ジーンを見ていると、ジョディ・フォスターが思い出されますね。
だんだんジョディー・フォスターに似てくるんですよ。
恐らくですが、レズビアンでもある彼女は、この役やりたかったでしょうね。
しかし、ジョディはかなり小柄な人なので、どうしてもテニスプレイヤーを演じるには難しかったでしょうし、まだ時代的にこの企画は難しかったのでしょう。
この手の話しは何と言ってもヒールが立ってないと面白くないですが、ボビー・リッグスを演じるスティーヴ・カレルの、「おもしろ憎たらしいオヤジ」ブリがまあ見事でした。
ヒールがギャンブル依存症のおもしろおじさんという設定がよかったですね。
お祭り生活に愛想をつかされてしまう、リッグス。
彼のコミカルさが、とかく、真面目すぎるフェミニズム映画になりかねない作品を、そうではない方向に持って行くことに成功してますよね。
型通りのマッチョな白人オヤジvsフェミニズムの闘士。など、誰も見たいとは思わないです。
マーガレット・コートがリッグスに滅多打ちにされる試合を見て、覚悟を決めるビリー・ジーン。
キングの恋人として出てくるアンドレア・ライズボローさんがものすごくよかったですね。
実は、南アの元テニス選手でした。
映画では美容師としてのみ出てきて省略されてますけど、彼女もテニス選手でした。
あと、本作で特筆すべきは、1970年代の風俗を見事に再現しているのと、1970年代のアメリカ映画のザラついた質感の映像を、デジタル技術で再現していることですね。
WTAのスタッフには、ゲイの方もいたんですね。
そして、更にすごいのは、その凄さがこれ見よがしなところが全然なくて、ものすごく自然なのが驚きました。
自然に見えることにデジタル技術を駆使する。という方向が実に面白かったですね。
ウィキペディアを見ているだけでこの2人人生は相当に面白いのですが、そういう部分はほとんどカットして、どこまでも、この世紀の一戦がもつ歴史的な意味(それはラストシーンで、ゲイのスタッフがビリー・ジーンに語りかけるセリフに凝縮されています)に焦点を当てつつ、それをロバート・オルドリッチ『ロンゲスト・ヤード』のように清々しく見せたところがよかったですね。
日本ではタイトルのせいもあってか、今ひとつ注目されていない映画ですが、こんなに清々しいアメリカ映画見たのは久しぶりです。
この試合がなかったら、女子テニスの賞金は相当低いままだったでしょう。