ジャック・ベッケル『肉体の冠』
ジャンヌ・モローの先駆的な存在ですね。神取忍に似ている気がします。
妙なタイトルですが、原題は「黄金の兜」でして、主演のシモーヌ・シニョレの髪型をタイトルにしてるんですね。
ファム・ファタールをめぐってのお話しです。
なんといってもシニョレの存在感が見事ですね。
若い方にはもうピンとこない女優さんだと思いますけども、彼女の凄さは、ジャン=ピエール・メルヴィル『影の軍隊』でのレジスタンス役でもよくわかります。
戦後のフランスを代表する名優でした。
いわゆる美人という感じではなくて、鉄火肌の姐さん役が似合う人で、ここでも実在した娼婦役です。
絵作りが彼の師匠である、ジャン・ルノワールを思わせるのですが、バイオレンス描写が、とてもフィルムノワールしていて、何か過渡的な表現になっているのが、面白いですね。
お師匠さんの未完の作品『ピクニック』に似てますね。
こういう船遊びとか。
後の『現金に手を出すな』のような塩辛いタッチの萌芽がすでに見え始めています。
大工のマンダとシニョレの逃避行は、『俺たちに明日はない』などにものすごく影響与えてますね。
犯罪によって起こった逃避行なのに、どこか呑気なところは似ています。
マンダとマリー。
マンダの親友のレイモン。
この映画の真骨頂は後半なのですけども、それは見てのお楽しみ。
ここから、本格的なフィルムノワールになっていきます。
ベッケルは、若くして亡くなってしまったので、あまり多くの作品を残すことはできなかったのですが、その残された作品は今見ても素晴らしいので、是非ともご覧下さい。
こういうシーンは、完全にベッケルですね。