加藤+鈴木コンビが生んだ、シリーズ最高作!

加藤泰『緋牡丹博徒 お竜参上』

 

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シリーズ第6作目ですが、内容は「花札勝負」の後日談。

イカサマ賭博で儲けている「ニセお竜」と「バケ安」の娘で病気で盲目となっていた五十嵐君子(高倉健が手術代を出してくれた事で手術を受けて視力が回復しております)をお竜さんが探す。というところから話しが始まります。

 

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今回は、鈴木則文加藤泰が脚本を書いた入魂の一作でシリーズ最高傑作という人もいますね。

もうどこからが加藤泰なのか鈴木則文なのかが判然としないほど完全に融合してしまっていて、驚きます。

私も加藤泰の最高傑作の1つは、コレだと思います。

冒頭の花札勝負のシーンは相変わらず身震いするほど美しいです。

 

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このシリーズは、いろんな東映はスターとお竜さんの共演がお約束になってますが、お竜さんとの相性は、この菅原文太が一番素晴らしい。

 

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このみかんを渡すシーンの美しさ!

 

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 加藤泰のローアングル!

 

仁義なき戦い』でのギラギラしたキャラクターが強烈すぎるのですが、ここでの抑えた演技もいいんですよね。

それにしても、明治時代の浅草を再現した美術が見事!

 

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東映の美術で感心した事はあんまりないんですが、やっぱり加藤泰は違いますね。

もう、全編いい構図の連発で、完璧という領域に達してしまっていて、ケチのつけようがございません。

 

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加藤泰の美学は本作をもって完成したと言っても過言ではないでしょう。

お君とお竜の出会いのシーンの驚異的な長回しは、東映任侠映画史上というよりも、日本映史上に残る名シーンでしょう!

鈴木則文映画の常連の京唄子鳳啓助山城新伍やシルクハットの大親分は、相変わらず楽しいですね。

 

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上海に行くらしい、大親分(笑)。

 

鈴木則文ワールドが加藤泰美学に違和感なく溶け込んでいるのがまことに楽しゅうございます(笑)。

これから間も無くして、深作欣二の『仁義なき戦い』が大ヒットして、こういうファンタジックな様式美の世界である任侠映画はあっという間に消えてしまい、主演の藤純子も呆気なく引退してしまいました(その後、司会者として復活し、役者としても芸名も富司純子と改めて復帰しました)。

 

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ラカンから劇場の興行権を奪い取ろうとする鮫洲一家。

 

お竜さん=藤純子というのは、余りにも強烈に結びつきすぎてしまっており、任侠映画とともに消えていかざるを得なかったんですね。

その意味でも、次のスターである菅原文太との共演というのは、とても象徴的な意味がありますよね。

太く短く燦然と輝いたからこそ、「緋牡丹のお竜」は未だに輝き続けるのだと思います。

 

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