お竜さん!

加藤泰『緋牡丹博徒 花札勝負』

 

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緋牡丹博徒シリーズの第3作目。

加藤泰の極端なローアングルのワンシーンワンショットが冴えまくってますね!

冒頭のお竜さんの口上のシーンから、もうしびれました!

 

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この人物をちょっと真ん中からズラす構図が加藤泰美学!

 

戦後、いろんなスタイルを持った映画監督がいましたが、ワンショットだけでこの監督です!とわかる人のチャンピオンは、恐らく、加藤泰でしょうね。

 

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このローアングルは加藤泰の専売特許!

 

加藤泰のローアングルと独特のアップは画面に独特の緊迫感をホントに与えますね。

似たような撮り方の人が後にも先にもまったくいないです。

こういう撮り方は、当然のことながら、とても時間がかかったと思うのですが(構図にものすごくこだわっていると思われ、少しでも監督のイメージと違うとテイクがかさみそうです)、加藤はこのスタイルをやめませんでしたね。

本作の脚本はある意味、加藤泰と真逆の美学を持つ鈴木則文です。

ほとんど「お約束」のような脚本にして、シリーズの途中から見ても観客がついてこれるようにする、サービス精神の塊のような人でしたが、これを使って、様式美を作っていくと言う方向に持っていった加藤演出は見事という他ありません。

 

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賭博のもつ独特の緊張感も本作の魅力。

本職のヤクザに花札の指導を受けているそうです

 

渡世人としての修行を行なっている緋牡丹のお竜が、なぜかいつも嵐寛寿郎が親分の組みにワラジを脱いで、その地域のヤクザ同士の揉め事に巻き込まれていくという(アラカン前近代的なヤクザであるのに対し、相手はかならず近代的なヤクザ組織を目指していて、洋服を着ていたりします)、筋書きはもう完全に決まっているのですから、加藤の仕事は、後はそれをいかに見せるのか。という事に専念できるという事であり、そこにトコトンこだわる加藤泰にとって東映任侠映画とジャンルは、やはり適性があったのだと思います。

 

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 アップと引きだけで映画を構成していくというのも独特ですよね。

 

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 お竜さんと健さん手のアップだけで表現する仄かな恋心!しびれます!!

 

コレは今更いう事でもありませんが、藤純子という、「お竜さん」を演じるために生まれてきたような人が主役であった事が、本作の人気を決定づけましたね。

女性の侠客。という得意なキャラクターによって、和服を着てのまったく独自の殺陣、そして、それを極端なアップと引きのワンショットのつみ重ねで撮る加藤演出は、まことにユニークという他ありません。

 

また、バケ安こと、五十嵐安次との花札勝負は、必見。

 

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 水道橋博士にロレックスなバケ安。

 

そこに鈴木則文のギャグ(若山富三郎演じる、「シルクハットの大親分」という名物キャラなど)がそこかしこに用意されていて、2人の良さも見事に生きているところが素晴らしいです。

 

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 ズルイよね、このメイク(笑)。

 

どこもかしこも加藤泰の美意識にあふれたショットの連続にクラクラしますが、シルクハットの大親分の舎弟、不死身の富士松との最後の討ち入りシーンは(途中から健さんも参加します)、もう加藤泰!というしかない美学が溢れる名ショットですので、是非!

 

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始めと終わりのキメの構図が同じなのだ!