本作をもって『仁義なき戦い』は完結です。

深作欣二仁義なき戦い 頂上作戦』

 

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警察の捜査を受ける打本組の事務所(タクシー会社なのですが)。

 

第4作。これまでは土着のヤクザとナアナアで癒着しきっていた警察も、抗争がエスカレートしてしまい、東京オリンピックを開催するという国際的な体面もあり、ついに「頂上作戦」という一斉検挙が始まるというところから物語が始まります。

 

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警察の検挙にやがて追い詰められていく広能

 

前作の最後の凄まじい銃撃戦が全国各地で起こってしまうと(要するに、山口組が広域暴力団化していんですね)、さすがに自○党もビビってしまったのでしょう。

しかし、それでも広島、呉の抗争は一向に収まらず、広能は山守組傘下の槇原組に常に命を狙われるような状態になってしまいます。

そこで、広能がもともと懇意にしている明石組の若頭の梅宮辰夫を介して、広島で賭博を中心に勢力を持つ義西会と連合する必要が出てきました。

この義西会の幹部として、第1作で死んでしまった松方弘樹が復活します。やはり、異様なまでにメイクが濃いです。肝硬変かと(笑)。

 

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 黒すぎ(笑)。

 

義西会の組長も、小池朝雄でコレも復活です(村岡組の幹部でしたが、第2作目で北大路欣也に殺されています)。

ややこしくなった抗争の構図をココでいっぺん整理しましょう。

この代理戦争は明石組と神和会の対立です。


明石組--打本組、川田組、広能組、義西会

神和会--山守組、武田組、槇原組、早川組、江田組


実際に対立しているのは、明石組と神和会のですが、コレが山守組と広能組とそれに伴う山守組系の槇原組との抗争という形で現れているんですね。

ココで、主人公である広能が、実は事実上、山口組の勢力拡大の最前線にいたという冷厳たる事実が分かるわけです。

要するに、主人公広能はヤクザ組織を巨大化させただけなんですね。。

当然、全体像は彼には見えていないですし、本人は生き残るためにやっていたに過ぎませんが、結局はそういう事なんですね。

滾る若いヤクザは、思いのままに、第1作の菅原文太のように暴れまわった結果、両陣営の幹部も続々と逮捕され、いずれも身動きが取れなくなっていきます。

遂に広能は暴行傷害罪。という広島県警による別件逮捕によって形勢は一挙に逆転し、広島、呉における神和会-山守組に覇権は確立したんですが残された広能組の組員が凶暴化し、暴れ回ります。

 

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遂に逮捕!それでも終わらないのがとても斬新ですね。司馬遼太郎を参考にしたのでしょうか。

 

更に義西会会長が殺害される事で、義西会、打本組、広能組の組長たちへの抑えが効かなくなっていくんですね。

未遂に終わりますが、とうとう山守組組長である、金子信雄まで襲撃を受けます(未遂に終わったのは、事前に打本が幹部のマイトガイ武田に密告したからです)。

 

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加藤武演じる打本の煮え切らない態度が終始、陣営を不利にしている。

 

と、ストーリーを追うのはもうやめますが、菅原文太がストーリーの中盤で逮捕されても話が続いていくという、この冷徹さが本作の素晴らしいところで、かつての東映では絶対にありえない事を連発したが故に、この大河ドラマは無類に面白いのでしょう。

前作と比べると、ストーリー展開がやや単調で、実録なので仕方がないのですが、菅原文太がいなくなってしまうと、俄然魅力が落ちてしまうのは止むを得ませんね。

本作をもってこの大河ドラマは、一応、終結といってよいのですが、ココから東映の悪いクセが出てきまして、この後も笠原和夫深作欣二が抜けながらも作り続けてしまいます。

菅原文太は、この事を後悔していたのでしょう、『トラック野郎』シリーズという、大変安定感のあるクオリティを持つ作品を第10作目をもってやめてしまいました。

そういう意味で、私も、本作をもって『仁義なき戦い』は完結したという事にしたいと思います。

 

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広島=怖い街。というイメージを決定づけましたよね(笑)。