三隅研次『剣』
KEN !!!!!
「剣三部作」の第二作目。
なんと、原作は三島由紀夫!
本作は現代で、白黒映画になります。
舞台は東大を模した東和大学。
「太陽の本質」を知ってしまった市川雷蔵は、剣道部の主将です。
私は、雷蔵は現代劇の方が素晴らしいと思ってます。
ちなみに、実家は胃腸科を開業しています。
雷蔵は生来胃腸が弱く、直腸癌が転移した事で亡くなるのですが、コレ、三隅監督のギャグですね、多分(笑)。
その余りにもストイックな生き方は、半ば崇拝され、と同時にバカにされている面もあります。
副将の川津祐介は、マージャンをしながら、その事を批判したりしています。
大島渚『青春残酷物語』の放埓な主人公でしたね。
ある日、雷蔵を崇拝する部員と余りにも真面目すぎる剣道部の運営に批判的な部員のケンカが始まり、後者が退部してしまいました。
果たして、自分は間違っているのか?と自問する雷蔵の元にバーン!という音とともに鳩がポトリと落ちてきました。
なんと、キャンパス内で猟銃をハンティングしてるんですね、バカ学生(そんな奴、東大にはさすがにいないと思いますが・笑)が、「鳥を返せよ!」と、銃を向けるのです(笑)。
銃と剣。
まさに近代と前近代の相克ですね。
三島の美学が端的に現れた描写です。
鳩を返す雷蔵。
雷蔵は、大人になって汚れていく事を恐れてます。
それはまるで、ボディビルで自信を鍛え、老いや衰えを恐れていた三島自身のようです。
雷蔵が剣道部の顧問の家にお呼ばれされている時(雷蔵は左利きですね)、顧問がこんな事を言います。
「社会がスポーツのように単純明快であるといいのだが」
「人生はたった1つの事がわかればいいのだ」
とくに雷蔵は、後者に共鳴し、「人間が単純で素朴な願いを持つことは素晴らしいことです」とすら言います。
「ボクには今しかない。『剣』以外にないんだ」
雷蔵に心酔する後輩。後の三島の「盾の会」を彷彿とさせる。
私は、ちょっと、ジャズの巨人、ジョン・コルトレインを思い出しました。
三島は、意外と時代のトレンドに乗っかって生きていた、タレント文化人の側面を持っていた人だったと思いますが(事実、娯楽映画に原作まで提供してますし、映画の主演すらしてますからね)、この映画に描かれる相克は、三島自身のものであったんですね。
三島由紀夫、どう考えても楽しそうなんですが(笑)。
この映画、面白いのですが、三隅研次や市川雷蔵の魅力よりも、三島由紀夫の個性が強烈すぎる気がします。
三隅監督が三島にものすごく傾倒していたというのはあるでしょうね。
それだけ三島という作家のインパクトは並外れているということなのですが。
ココから先が物語としては佳境でございますので、ゆっくりとご覧ください。
海が近いのに、海にも行かずに猛練習なのだ!!
三島由紀夫と梶原一騎は実は近いという事がわかる、なかなかの怪作。