エリック・ロメール『緑の光線』
傑作揃いの「喜劇と格言」の第5作目。
(恐らく1984年の)7月2日月曜日から8月4日土曜日までを描くドラマ。
この映画のこの日付の入れ方は、モロにホン・サンスがパクってますよね。
タイトルの緑の光線というのは、ジュール・ヴェルヌの小説に出てくるのだそうです。
同じシリーズの『海辺のポーリーヌ』と同じで、ヴァカンスのお話しです。
冒頭に出てくる元タクシーの運転手が「ワシは山なんてキライじゃ!根っからパリっ子だからね」と言って笑ってるのがいいですね。
海や山登りヴァカンスばかり撮っているロメールの、やや自虐的なセンスですね。
たしかに、ロメールは、ヴァカンスというシチュエーションを利用しているだけで、登場人物はほぼ都市の住人たちなんですよね。
案外、このセリフはロメールのホンネだったりしそうです。しらんけど。
今回は、相手にドタキャンを喰らってしまったので、ヴァカンスはどこにしようかな?というOLさん(実は結構なベジタリアンです)のデルフィーヌのお話し。
いつもはヴァカンスを描くところを、ヴァカンス前を描いているところがちょっと違うのですが、結局、「ヴァカンスはどこにしようかしら?スペイン?アイルランド?ニース?」みたいな会話の繰り返しですから、やっぱりいつもの通りではあります。
ただ、会話がパリなので、もっとアグレッシブなのが明らかに違いますね。
ヴァカンスどうしよう。。
ホン・サンス作品が一番影響受けてるロメール作品は多分これでしょう。
そういう、ちょっとした違い、テクストを巧みにズラす面白さがわかると、ロメールは全部見ざるを得なくなり、そういうところがホン監督もおんなじです。
それにしても、女性はフランスでも占いが大好きなんですね。
どうしたら、王子様に出会えるかしら?って、今も昔も変わんないですね。女は女である。
今で言うところの女子会のシーンとかホントに上手いですよね。
で、結局、シェルヴールに行くのですが。
すぐに逆ナンしてしまう女友達のフランソワーズ。
なんなのだ、この業界人的なファッションは(笑)。
男と女がくっついたり離れたりしてるのを黙って撮ってればいくらでも映画になるんだ。と言わんばかりのムダのなさ。
オマセな女の子がデルフィーヌに「ねえ、カレシいるの?どうなの?」とねほりんはほりんしてるシーン。
しかし、デルフィーヌはどうも楽しくなれず、パリに帰ってしまい、今度はアルプスの麓の小さな町に行きますが、これもすぐに飽きてパリに帰ってしまいます。
すると、偶然出会った今度は友人の家を借りる事が出来て、南西部にあるリゾート地のビアリッツへ。
しかし、なんでそんな行ったり来たりする金が20代前半であるのか?というのは野暮ですが、それにしても、ヴァカンスという文化はなかなか日本人には馴染めませんね。
ビアリッツは一大観光地なので、夏の江ノ島みたいに人が多くて、やっぱりデルフィーヌはどうも馴染めません。
そんなとある日に。というところまでですね、お話しできるのは。
ロメール作品の中ではジックリ長々会話シーンが少なく、おっさん視点のエロ度が低いので、初めて見るには最適かもしれません?
ロメール特有のインテリがあまり出てこないのもそこが苦手な人にはいいかもわからんです。
タイトルが意味するところは、ちゃんと後半に出てきて、そこがお話の重要な転換点になります(ココが独特の「ロメール講義」になりますが、面白いです)。
まさか、ジュール・ヴェルヌがこんな風に使われるなんて、並大抵のセンスではありませんな。
コレが「緑色の光」です。
サラサラっと、スケッチ風に描いてるのに、実は神経が行き届いた、コレまた必見の作品。
というか、80年代のロメールにハズレはほぼないです。