ジャック・ドゥミ『ロシュフォールの恋人たち』
またしても、ドゥミ=ルグラン=ドヌーヴで作られた作品で、ジョージ・チャキリス、フランソワーズ・ドルレアック、ミシェル・ピコリ、ジャック・ペランと、一挙にキャスティングが豪華絢爛になった、ミュージカル映画。
前作の『シェルヴールの雨傘』は、オペレッタ映画。とでもいうような(オペレッタは喜劇が基本ですけども)、ドゥミが編み出した、全くの異色作ですけども、今度は、「ドゥミ・ミュージカル」です。
なんと、ジーン・ケリーが振り付けです!
しかも、出演!
もう、とにかく、『シェルヴール』で稼いだカネを一挙につぎ込んで、オレはやりたい事をやる。という意気込みがもうオープニングからみなぎっています。
登場人物の動きがまるで、競技前のウォーミングアップをしているようにすら見えるのは気のせいでしょうか。
『ウェストサイド物語』感が満点なオープニング!
タイトルが出てきて、ジョージュ・チャキリスがクルッと回り始めると、ミシェル・ルグランの曲が流れ始めます。
なんちゅうか、こんなにみなぎるような映画って、戦後のフランスにあったっけ?というくらいすごいですよ。
『ウェストサイド物語』が相当好きなのでしょうね。
ゴダールやトリュフォーは大好きですが、みなぎってはいないですよ(笑)。
『サウンド・オブ・ミュージック』という、ハリウッド製ミュージカルの「白鳥の歌」と同じ年に、この作品の代表曲の1つ「My Favorite Things」を生涯にわたって演奏し続けたジョン・コルトレインが亡くなりましたが、これらと同じ年に、天才ジャック・ドゥミが、本格的に取り組んだというのは、すごいことですが、それにもまして、傑作であるという事ですね。
ルグランの音楽は『シェルヴール』を遥かに凌ぐ絶好調ぶりで、ドゥミとの相性は、最高です。
バレーの先生役であるドヌーヴと作曲家志望のドルレアック(ちなみに本当の姉妹です)を、ゆっくりとクレーン撮影でキャメラがアパルトマンの窓に寄って行ってレッスン風景を写すという初登場シーンは見事ですね。
色使いが素晴らしい。
この双子の姉妹が出てきてから歌が始まる、憎い演出です。
「ミファソラミレ、レミファソソソレド」で有名なルグランの代表曲です。
残念な事にドルレアックは交通事故で亡くなってしまいます。。
とにかく、技巧を凝らして撮る監督ですね。
舞台はまたしても港町、ロシュフォール。
双子の姉妹はそれぞれ作曲家とバレリーナとして成功すべく、パリに出る事を考えています。
しかし、同時に恋人も探しております。
高名な作曲家(ジーン・ケリー)の紹介を頼っております。
実はバッタリ出会っていました。
出会いとすれ違い。が本作のテーマです。
そんな祭りが近づいているロシュフォールにイベント業のジョージュ・チャキリスたちがやってきました。
チャキリスのダンスは相変わらず素晴らしい。
しかし、雇っていた女の子2人が、水兵と恋に落ちてしまって、突然辞めると言い出してしまいます。
そこで、たまたま入店したカフェの経営者の双子の娘、すなわち、ドルレアックとドヌーヴに代わりに出てくれないか?という事に。
音楽も素晴らしい名シーン!
この軽やかさがたまらんですなあ。
本作が単に楽しく歌って踊るだけの映画ではないのは、ドゥミの脚本による、非常に良くできた人間関係の面白さにあります。
ロシュフォールという、小さな港町という、非常に限定された空間の中でそれが展開するドゥミの才能には驚嘆してしまいます。
ジャック・ペランとジーン・ケリー。
あの映画監督となったトトがこんなに若いのです!
登場人物が画家、楽器店の店主、曲芸師、作曲家、バレリーナ、カフェ店主というのも、素晴らしい。
ドゥミの作品は、登場人物が再登場することがありますが、ローラの話が悲劇として出てきます。。
様々な出会いとすれ違いがロシュフォールという小さな町の中で繰り広げられる可愛らしさ。
金曜から月曜日までのたったの4日間の出来事なのですが、圧巻は、日曜日。
もうとにかく見てもらうしかないのです!
このシーン、ドンだけパクられでしょうか。古典!
そして、月曜。
5月革命直前のフランスの最後の徒花。
to be continued..で終わるのもいい。