ペドロ・アルモドバル
『アイム・ソー・エキサイテッド』
2000年代以降、に最も打率と打点の高い監督は誰かと言われたら、恐らくは、ペドロ・アルモドバルの名前はほぼ確実に出てくるでしょうね。
とにかく、どこかエキセントリックで独特の語り口を持つアルモドバルのこの所の作品は全部で面白く、どれもオススメです。
本作もまた全然趣向が変わっていて、なんと、旅客機の中。
ゲイの客室乗務員がなぜか三人もいるのですが、その内の1人(アル中です)が機長の所に食事を運んでいると、何やら飛行機にモンダイがあるかのような事を仄めかしていてるのですが、そこに女性の乗客が入り込んできます。
彼女が言うには、「私は未来の運命を見抜く能力がある」とかなんとか言い始めるのです。
機長たちは、「まさか、飛行機の異状を見抜いているのでは?でもどこまで?」と不安を覚えるんですね。
この飛行機は、メキシコまでの便なのですが、彼女は何をしに行くのかというと、その「能力」を使って行方不明になった家族を探しに行く仕事なのだと。
そうこうしていると、クレーマーが部屋に入ってきたり、飛行機の操縦経験がある人が故障に気づいて操縦席にやってきたりと、もう騒々しいのなんの(笑)。
で、話しが冒頭に戻るのですが、一見、なんの関係もないような出来事が描かれている割には、役者が妙にすごいので、一体なんなのか?と思っていたのですが、コレがこの便の飛行機の故障の原因でした。
飛行機の整備士がアントニオ・バンデラス(笑)。
そして、乗客の荷物を飛行機に運ぶ係がペネローペ・クルズ(笑)。
ペネローペの運転する車がスマホをいじってる職員を避けようとしたら荷物が飛び出し、職員に一斉に降り注ぎました。
大したケガにはなりませんでしたが、この事とペネローペが妊娠したことを突然知った事に気をとられたバンデラスのミスで着陸時に車輪が出なくなりました(笑)。
という事がわかるんですね、途中で。
アレが原因だったのかと(笑)。
そこから機内、及び、その外側で起こる様々なてんやわんや(死語)が面白いので一切書きません。
アドモドバル作品に一貫する色使いの独特な華やかさ、アルベルト・イグレシアスのサントラの素晴らしさは今回もやはり健在で、日本映画にいつも欠けているのは、こういう技術的な側面だなあ。と思います。
とにかく、人間関係の機微の悲喜こもごもを描かせたら、現在右に出るものはないというくらいうまいですね。
ゲイの描き方がホントにうまいですよね。
アドモドバルの人間造形はどこかコミカルですが、どこかそれでいて荒唐無稽に見えないところが、彼の並外れたところです。
彼にしては珍しく、主人公が特にいない群像劇ですが、90分にキチッとまとめていて、とても面白かったですね。