これは岡本喜八の隠れ傑作!

岡本喜八『殺人狂時代』

チャップリンの同タイトルの映画がありますが、全く関係ありません。

もともとは、日活の企画だったらしいです。

ナチスが出てきたりと、いい加減な設定が、宍戸錠主演のアクション映画っぽい感じですが(これ、もしかして、鈴木清順で撮る予定だったのでは?)、これがなぜか岡本喜八に回ってきて、仲代達矢主演のアクション映画になってしまいました。

興行的には惨憺たる結果だったらしく、これをもって、岡本喜八東宝を去る結果になったのですが、作品としては、彼を代表する作品と言ってよい内容です。

ボロアパートに住んで、安い給料で犯罪心理学の講師をしている仲代達矢が演じるしょうもない男が、なぜか、元ナチスに追い回されるというお話しで、仲代達矢は小汚いヒゲぼうぼうが、途中からアラン・ドロンとステーヴ・マクインを合わせたようにカッコよくなり、奇妙な殺し屋を次々と倒していくのですが、殺し屋の頭目が天本英世(笑)。

精神病院の院長をしながら、独自の理論で殺人稼業をしている狂人。という、ほとんどショッカー一歩手前の設定のキャラを見事に演じております。

しかし、何と言っても、こんな荒唐無稽としか言いようのない話を、ここまで面白くしてしまう岡本喜八のすごさですよね。

話しの展開にほとんどムダがなく、アクションシーンも今見ても全然見劣りしないシャープなカットの連続で、惚れ惚れしました。

『人間の条件』とか『切腹』のようなシリアスな演技が多い仲代達矢が、あんなにコミカルな演技してるの、初めて見ましたよ。

もっと、こういう仲代を見てみたいものです。

映像も構図がとても変わっていて(イタリア料理屋で肉を切るシーンは必見)、精神病院などの美術も、かなり鈴木清順っぽい、どこか日本映画ばなれしたものを感じます。

岡本喜八が日活時代の鈴木清順アクション撮ったら、こんな面白い映画になってしまいました。というと、見たくなる人、結構いるんじゃないでしょうか。

あのラストは、ウソを言ってるとも取れるしホントのような気もするシーンでうまいですね。

是非、実際に見てご確認を。

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