3作すべて見ることをオススメします!

アッバス・キアロスタミそして人生はつづく

 


『友だちのいえはどこ』の撮影を行ったコケル周辺が1990年に、大地震の被害を受けました。

 


なんと、死者は約3万人以上!

 


その安否を確かめるために映画監督(キアロスタミではなく役者が演じてます)とその息子が現地に向かうという、ドキュメンタリーとフィクションの境界がかなり曖昧な作品。

 


本作と次作の『オリーブの林をぬけて』、そして、『友だちのいえはどこ』は同じ場所の大地震以前/以後を撮影した1つの3部作ととらえてよく、劇映画でありながら、ドキュメンタリーとしての要素もあり、本作は地震直後という事もあり、ドキュメンタリーの要素が一番色濃い作品です。

 


監督は、『友だちのいえはどこ』で主演した少年を探そうとしています。

 

f:id:mclean_chance:20190425214405j:image

本作の中で『友だちのいえはどこ』がフィクションとして取り込まれています。


実際のキアロスタミも探そうしているでしょうし、作中の監督もまた彼を探しています。


しかし、コケルが近づくにつれ、近隣の村のポシュテも相当な被害を受けている事がわかってきます。


まず嬉しいのは、『友だちのいえはどこ』の後半に出てくる、主人公の少年をムダに連れ回すおじいちゃんが出てきます。


このおじいちゃんが実際に住んでいる家が、なんだが見覚えがあるんですよね。


そうです。


オリーブの林をぬけて』のあの若い新婚夫婦役2人の撮影シーンの完成版が出てくるのです!

 

f:id:mclean_chance:20190425214951j:image

完成版は監督とタヘレの会話シーンがあるんです。


つまり、『オリーブの林をぬけて』は本作を作っている様子を映画にしていたんですね。

 


実際の時間軸と作品の作られた順番が逆さまになっている、もしく、次回作が前作をフィクションとして飲み込んでいく。という、キアロスタミのちょっとしたイタズラがはいって、この三部作が出来上がっていたんです。

 


この三部作の、とりわけ、後の2作は、目的を達成できたのかどうかが、明確に描かれていません。

 


この2作の終わり方はとても似ているというか、ほとんど同じです。

 


にもかかわらず、突き放したような感じやペシミズムは全くないんですね。

 


ここにキアロスタミという監督の真骨頂がある気がします。

 


この三部作(当然ですが、それぞれを単独の作品としても十分に楽しむことができるようにもなってます)はすべて見ることで初めて奥行きのある世界観が理解できるようになっており、是非とも、すべてを見ることをオススメします。

 

f:id:mclean_chance:20190425214919j:image

あのジグザグの道がまた出てきます!