ハンブルグ→カンヌン

ホン・サンス夜の浜辺でひとり

 


2017年にホン・サンスはキム・ミニ主演で3本も映画をとりましたが、本作はその1つです。


映画は「1」「2」にハッキリとわかれてまして、ハンブルク編とカンヌン(江陵)編になってます。

 

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近年のホン・サンス作品のような、同じストーリー複数やるとか、時間軸がズレていて、どうなってんの?みたいなブニュエルとかリンチみたいな構造にはなっていなくて、芸能スキャンダルに巻き込まれた女優が先輩のいるハンブルクに逃亡した時のお話と、その後、韓国の江陵の友人達との交流を描いているお話しという、シンプルな構造で、出来上がってます。

 

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海外だと少し絵が良くなりますね(笑)。

 


が、やはり、そこはホン・サンスでして、やっぱり観客にイタズラを仕掛けてきます。


「2」の最初はキム・ミニ演じるヨンヒが映画を見終わったところから始まるのですが、あたかも、「1」が彼女自身が見ていた映画であるかのようにも見えるんですね。

 

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「1」は彼女が見た映画に見えなくもない。

 

自分の主演作を見ているかのような。


映画監督との不倫が発覚して、ハンブルクに逃亡した女優。という自身が主演した映画を見ているという。


そして、ラストシーンがアッ。と思わせるオチになっているので、それは実際に見て確認してください。


また、やはり、ホン監督特有の反復がやはりありまして、それはどちらも水辺のシーンが出てきます。

 

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ハンブルグは湖畔です。

 

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カンヌンは浜辺です。


そこで、砂浜で監督の似顔絵を描くシーンがどちらも出てくるのですが、ハンブルクは髪の毛を描いていないのですが、江陵では描いてたりして、ちょっと反復をズラしてます。


今回、あまり構造を弄らずにシンプルな構造で見せた理由はハッキリしていて、それは、 女優キム・ミニの演技力に焦点を当てて撮っているからです。

 

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久しぶりに出会う先輩。


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このシーンは必見(笑)。


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パク・チャヌク『お嬢さん』での体当たりの演技が記憶に新しいキム・ミニが、女優を復帰しようかどうしようかと逡巡しているという、特にヤマもないし(ヤマはとっくに過ぎ去っているんですね)、劇的なオチも一切期待できない、要するに、パク・チャヌク作品と真逆の作品で、どれだけやれるのか?というところをホン・サンスは見せたかったんですね。


そう意味では、ホン監督作品にしては結構野心がある、ギラギラした映画ではあります。


で、実際、キム・ミニの演技は素晴らしく、小津安二郎『晩秋』における原節子のように、感情をむき出しにする(と言ってもホン・サンスなので、激情むき出しとかではないですけど)熱演を、特に、江陵編で見ることができます。


ホン・サンスは、恐らく、小津安二郎にとっての原節子のような存在として、キム・ミニを見出したと思われ、しばらくは、彼女を主演に撮り続けるものと思われます。

 

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