テーマは「父と子」!

ライアン・クーグラーブラックパンサー

 

※公開してそれほど経ってませんので、写真は少なめです!

 

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ワカンダの最新テクノロジーを駆使したスーツは、アイアンマン以上の性能を持つ。

 


すでに「アベンジャーズ」などの作品で登場していた、ブラックパンサーが満を持して公開。

 

監督は、なんと、『クリード』の監督です。


『ロッキー』のスピンオフ作品という、正直かなりイカモノ臭ふんぷんたるイメージを覆す、見事な傑作を撮り上げた気鋭のアフリカ系の映画監督が起用されたと聞いて、見ないわけにはいかないではないですか。


ブラックパンサーは、マーベルコミックのヒーローの中でも異色の存在で、アフリカの王国、ワカンダの王様です。


アベンジャーズでもチラッとワカンダ王国は出てきますが、謎の鉱石ヴィヴラニウムが採掘される、ほとんど鎖国状態の国です。

 

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各部族の首長のデザインも秀逸です!


外見上は、アフリカ内陸に存在する、貧しい小国なのですが、実際は、桁外れの科学技術をもった国家でして(笑)、ブラックパンサーのスーツも、そのテクノロジーを駆使してできています。

 

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桁外れな未来都市を形成するワカンダ王国!

 

『シビル・ウォー』を見るとわかるように、国王ティチャカがウィーンの国連の会議で演説中にテロリストに暗殺されてしまい、王子のティチャラが急遽、国王にならなくてはならなくなりました。


お話は、その『シビル・ウォー』の直後から始まります。


本作のテーマは「父と子」です。


ヴィブラニウムをめぐるすったもんだも面白いわけですけども、本作のメインは、やはり、ティチャラが真にワカンダの王の継承者なのか?という事が問われ る事です。


本作の冒頭は、なぜか1992年のオークランドから始まり、先代のティチャカがブラックパンサーの頃を描いています。


それが意味するところがしばらくわからないまま、お話が進むのですが、ヴィブラニウムを追う中で現れるアフリカ系アメリカ人の存在が浮かび上がった時に突如、その意味がわかってきます。


ここからお話は、「王位継承」にうつっていくんですが、ここからが本作の見せ場になっていくといえましょう。


この、「父と子」の問題をここから実に、丁寧に描いていく手腕には心底驚きました。


ライアン・クーグラーはマーヴェル映画という、巨大なプロジェクトに乗りながらも、実は、見事なまでに自分のテーマに引き込み、完全に自分の表現にまで高めている事に驚きました。


また、登場人物の多くがワカンダ王国という架空の王国の人々で、一応、英語で話すのですが、アフリカの英語圏の人々の訛りをかなり忠実に再現し、英語自体も文法がかなりピジン化しており、細部がキチンとしているのは、ホントに関心しました。

 

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主人公ティチャラの熱演が光ります。すちゃらか社長と並ぶマーヴェル映画最強キャラの誕生です。


さて。

 

ここまで書いてきて、一番引っかかるのが、本作のタイトルである、「ブラックパンサー」と、1960年代に実際に誕生した政治結社ブラックパンサー党の関係です。


クーグラー監督は否定しますが、ブラックパンサー党が誕生したのは、本作の冒頭シーンである、カリフォルニア州オークランドで誕生した事は偶然の一致とは思えません。ブラックパンサー党は、アフリカ系アメリカ人が銃で武装する事を主張していた事から、とても過激なイメージが強いのですが、彼から彼女らが一番力を入れていたのは、アフリカ系アメリカ人貧困層への支援でした。

 


コレはネタバレしても問題ないと思うので、してしまいますが、ティチャラは、これまでワカンダが頑なに守ってきた、他国への不干渉主義をとうとう破り、オークランドにワカンダ王国初の「国際支援センター」の支部を作ります。


明らかにブラックパンサー党を意識しているラストシーンだと思うのですが、あんまり指摘されてないようです。


また、王位継承をめぐる大河ドラマとして、『バーフバリ』二部作もありましたが、あちらのとにかく豪快で痛快な面白さとは一味違う奥行きが感じられます。


マーヴェル映画の中でも屈指の傑作であり、2018年公開映画では、間違いなくベスト5に入ると思います。

 

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