『監獄のお姫様』の元ネタと思われる、エクセントリックな復讐劇!

パク・チャヌク(朴贊郁)『親切なクムジャさん

 

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チャングムの誓い』とは全く違う役を見事に演じる、イ・ヨンエ

 

「復習3部作」の第3作目。

日本では、『チャングムの誓い』でおなじみのイ・ヨンエが、ガラッとイメージを変えております。

何しろ、冒頭で刑務所から出所です(笑)。

13年も服役していたというのは、かなりの重犯罪です。

なんと、少年誘拐殺人です。

お話は2014年に、主人公イ・クムジャが出所する時点から始まりますが、時間がものすごく前後し、初めは何の話なのかほとんどわからないまんま、しかも、クムジャの内面がほとんどわからないまんまドンドンと話がすすんでいきます。

しかし、その断片的なシーンの連続がやがてある事に帰結していきます。

 

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刑務所の中で、牢名主として台頭し、「親切なクムジャさん」と呼ばれるようになります。

 

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各シーンがアドモドバル並みにぶっ飛んでます。

 

それは、クムジャが実は冤罪である事でして、しかも、本当は身代金さえ取れれば、それでよいはずの誘拐が、実は共犯者の裏切りによって破綻してしまったのだと事だったんですね。

この事を言えないまま、黙って服役して出所した彼女の主犯への復讐がこのお話のメインテーマなんですね。

 

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普段は英語の塾講師をしている真犯人。

 

全く先の読めない展開、エキセントリックな演出と、パク・チャヌクの映画はもう誰とも似ていない全く独自のものですね。

あえて言えば、タランティーノとアドモドバルなのですが、バイオレンスがもつ痛みとかリアルが、タランティーノは意外と日本映画的なフィクションに近いのですが、パク・チャヌクは圧倒的に重いですね。

コレは韓国映画全体に言える事ではあるのですが。

 

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この共犯者の男は、実は子供を4人も殺害しており、クムジャはその最後の4人目の少年の誘拐と殺人の罪をすべて被ったんですけども、実はヨンエの復讐はその4人目だけではなく、全員の復讐を晴らす事に最後は結実していくんですが、そこがどうなっていくのは見てのお楽しみでして、それが本作のタイトルに、なぜ「親切」とついているのかがだんだんとわかってくるわけですね。

恐らく、本作からインスピレーションを得て作られたのが、宮藤官九郎脚本でTBSで放映された『監獄のお姫様』だと思います。

冤罪を晴らすために出獄後、真犯人に復讐するという構図が全く同じです。

パク・チャヌクの演出は基本的にかなりドギツいので、それは覚悟して見なくてはいけませんが、結局、この予想のつかない展開に持っていかれてしまう腕力がこの監督にはあります。

 

最近、あまり多くない、女優の力量で見せる映画になっているのも素晴らしいですね。

 

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