大林宣彦『時をかける少女』
この映画を彼女の引退作品とするつもりが大当たりしてしまいました。
筒井康隆原作の小説の映画化(結局、筒井作品で未だにコレが一番有名なのでしょうか?)
原田知世初主演にして角川映画。という所に苦手意識が猛烈に上がりますが(笑)、大林監督は自分の与えられた環境でいかに好き放題やるのかという事にかけては天才的な人で、冒頭から白黒撮影に一部着色した映像を作るなど、実験精神旺盛です。
同時上映が薬師丸ひろ子と松田優作ダブル主演の『探偵物語』で興行収入が手堅かった事で、映像的にかなり攻めた作品にしました。
この、そんなに期待されてないチャラいアイドル映画という免罪符を使って実験してやろうという不敵な精神が侮れません。
この作品は、実は大林監督のライフワークの一つである、「尾道もの」でして、最初の3部作の第2作目にあたります(『さびしんぼう 』が第3作目です)。
とにかく、ロケーションがうまい!「聖地巡礼」の先駆でしょうね。
それにしても、原田知世の可愛らしさ、初々しさ!
弓道のシーンなどなど、サービスも忘れません。
タイトル通り、時をかける能力が、土曜日の理科室の掃除の時に原田知世に発動してしまうのですが、そのその契機となる、明らかにマルセル・プルースト『失われた時を求めて』のパクりである、「ラベンダーのにおい」(プルーストは「マドレーヌのにおい」ですが)という、1980年代とは思えない、前時代的なロマンティックな設定(それは尾美としのり演じるクラスメートの「醤油のにおい」というセリフもリンクしてきます)が、なぜが大林演出の中では無理なく共存できるのかが、面白いです。
「ラベンダーの香り」とは?
やはり、尾美としのりがクラスメートととして出演してます。
事前に知っても瑕疵のない程度に核心部を言うと、この彼女の「時をかける」という能力によって、彼女自身が記憶を改変していた事に気がつくんですけども、ココにタイムパラドクスがとても上手く使われているの所がホントに唸りました。
SFの「F」を見事にファンタジーにしてしまったんですね。
アイドルを前面に立てた、チャラい映画だと思っていると、とんでもない返り討ち(そして、それは見事で嬉しい返り討ちです)を受ける事必定の、大林宣彦の代表作にして、原田知世を一躍スターにした作品。
なんと、ラストはPVで終わるというギャフン感で照れ隠しをしてます。