ウァウテル・サレス・ジュニオール『モーターサイクル・ダイアリーズ』
ブエノスアイレスからカラカスまでの旅を描く。
ゲバラが生化学者である先輩のアルベルト・グラナード(後に、ハバナにサンチャゴ医学校を創設した偉人です)と一緒にバイク一台で南米を旅行したという事実に基づいたお話し。
ゲバラはこの時の旅行を日記にしていまして、その道中は、わかっています。
グラナードも後に旅行記を本にして出版しています。
革命家の鱗片すらない、ブエノスアイレスの医学生(専門はハンセン病でした)であったゲバラは23歳。
キューバ革命を成し遂げた後の実際のチェ。ものすごい男前!
お坊っちゃまだったんですね。
あんまり知られてませんが、アルゼンチン人でした。
そういえば魯迅も医者でした。
東北帝国大学の医学部にいたんです。
映画ではお調子者役になっているグラナードですが、大変な人物です。
なんと、グラナードは2011年まで存命で、キューバの医療に尽力した偉人でした!
現在のように、道路が舗装されているわけではないし(よく転んでます)、ドライブインもコンビニもありませんし、街だってそんなにないんですから、相当大変です。
その大変な道中を描いたロードムービーです。
しかも、ゲバラは喘息もちでしたから、かなりキツかったはずで、そういうシーンは出てきます。
チリでとうとうポデローサ号は使いものにならなくなり、クズ鉄として売るしかなくなりました。
なんと、途中から徒歩になっていたんですね。
その途上で出会った共産主義者の夫婦。
そして、銅山。
ペルーのインディヘナとの出会い。
様々な、理不尽な地主たちの弾圧。
こういう出会いが、ゲバラの中で何かを変えていったのでしょうね。
特に重要だったのは、ペルーにあるハンセン病の人々を収容する施設でしょうね。
後にカストロとともにキューバ革命を成し遂げてしまう偉大な革命家ではなくて、真面目で感受性豊かな医学生が南米各地をの厳しい現実をじかに目にする姿を、淡々と描いているところにとても好感が持てました。
お坊っちゃまのゲバラ青年が旅を経て、だんだん私たちの知っているゲバラの顔立ちに近づいてくるのが、とてもうまいですね。
次第にラテン・アメリカ諸国の団結に目覚めていきます。
ゲバラを演じるガエル・ガルシア・ベルナルの繊細さが光ります。
いろんな場所で音楽やダンスのシーンが出てくるんですが、やはり、素晴らしいです。
プロデューサーは、ロバート・レッドフォードで、監督はブラジル人というのもとても面白いですね。