エドガー・ライト『Baby Driver』
大感動!
音楽への、そして、SONYへの、愛、愛、愛。
別に泣かせる映画だとは思いませんが、なぜかラストが泣けました。
タイトルと宣伝を見ても、正直、アンマリ面白そうな映画ではなかったので、期待してませんでした。
たしかに、主演は新人です。
風貌は全然似てませんが、どこか、ジョン・ベルーシを思わせます。
普段は茫洋としていて、木偶の坊みたいなんですけども、イザという時の140%くらいに跳ね上がるテンションが素晴らしい。
運動神経なさそうに見えて、予想以上に動き回るところも、オッ!すごいじゃないか。と思わせます。
主人公のベイビィ。本名は。。
出だしの圧倒的なカーアクション(なんと、ジョン・スペンサー・ブルース・イクスプロージョンがかかります)で、一挙に引き込まれてしまいます。
ベイビィ。とは主人公のあだ名でして、彼の職業は犯人の逃し屋です。
ある事が原因で仕事中は常に音楽を聴き続けていないといけないという体質になっており、つまり、全編にわたって、ベイビィが聴いている音楽を私たちは聴いている事になります。
その音楽の使い方がものすごいセンス満点で、しかも、歌詞の内容とシーンがピッタリ合っているんです。
オペラやミュージカルは、まず脚本があってそこに音楽をつけていくわけですけども、コレは、出来上がっている曲と脚本があっているという作り方なんですよ!
音楽のようにスムースなカーアクションは、驚きですね。
こんな作り方、見た事がない。
犯罪者を逃す。という仕事柄、当然ですが、ドンパチがなかなか激しいんですけども、音楽と銃撃の音が合っているとか、ちょっと考えられないような映像と音楽のシンクロが起こっているんですね。
それはカーチェイスでもそういうシンクロが全てではありませんが起こっているんです。
ベイビィは、とてつもないドラテクのある天才で、その運転シーンは、たとえば、ジェイソン・ボーンシリーズやミッション・インポッシブル(両者の「すごさ」には明らかに哲学の違いがありますけども、それを論じるのは本旨から大幅にズレますので、省略します)、などともまた違った、まるで、ダンスしているような動きで、もう別次元です。
見た目は、ふつうの青年であるベイビィがなぜこんな危険な稼業をしているのかが、このお話しのカギですので、ココは言えませんけども、こういう主人公の一見無茶な設定に対する説得力が絶妙で、天才的なドライヴァーである事と無類の音楽マニア(しかも、カセットテープでミックステープを作るのが趣味なのです)という事がムリなくむすびついているのが素晴らしいです。
犯罪組織の頭目がケヴィン・スペイシィ。このセールスマンみたいな風貌がよい。
そして、そんなマンガみたいなキャラクターを演じる、主演のアンセル・エルゴートに違和感ないどころか、いつの間にか彼の不思議な存在感にスッカリひきつけられてしまうのです!
コレには参りました。
そんなベイビィの恋人になる、デボラという女の子がまたいいんですよ!
ベイビィとデボラ。
ベイビィとデボラがコインランドリーでT-Rexを聴くシーンは、必見でございます!
あと、ジョーという、ベイビィと一緒に暮らしている耳の不自由なおじいちゃんがものすごくいいですねえ。
ジョーとベイビィは手話でコミュニケーションを取っている。
このおじいちゃんは、スピーカーの振動を手から感じ取って音楽を楽しんでいるですが、そういう細かい演出がホントにニクイ。
強盗として、ちょこっとだけレッド・ホット・チリ・ペパーズのフリーが出演してますよ。
あっ、フリーだ。
とにかく、これまで見た事のないような映画で、それでいて、青春映画の王道としても見事な映画でありました。
とにかく映画館で見ることを強くオススメいたします。
なんというか、映画と音楽の関係がまた1つ次元が上がりましたね。
唯一、惜しむらくは、サントラの曲の字幕があまりキチンとついてない事ですね。
歌詞の意味が、そのままシーンとリンクしているのですから、DVDにする際全曲つけた方がいいですね。
エドガー・ライト、恐るべき才能の持ち主です。