スゲエわ、アントニオーニ(笑)。

ミケランジェロ・アントニオーニ『L'eclipse

 

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オープニングがいつもカッコいいんですよね、アントニオーニは。

 

邦題は誠に不愉快!

『暴力脱獄』(原題Cool Hand Luke)と並ぶ、最悪邦題と言ってよい(このタイトルのせいで、ツタヤでは、アクション映画のコーナーに平然と置いてある)。

当時、撮る映画がどれもこれも傑作という絶頂期のアントニオーニに対して、余りにも失礼という他ないです。

直訳の『蝕』の方が、ずっと素晴らしいのではないか。

アラン・ドロンにも失礼でしょう。

じゃあ、この前に『サムライ』がヒットしていたら、『サムライはひとりぼっち』にでもしたのだろうか(ちょっとこのタイトルの映画は見てみたい気がするが)。

閑話休題

何事にも飽きてしまう、モニカ・ヴィッティ演じるローマのブルジョワジーの生活が描かれています。

 

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 婚約を反故にしてしまうヴィッティ。

 

友人宅でのアフリカ人のモノマネ(ホントのアフリカの音楽です)、別れたリカルドがいつまでもつきまとったり、自家用セスナ機に乗ったり、そして、証券取引所に行ったり。

 

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なかなかぶっ飛んでます。

 

ある日、株価が暴落しました。

アラン・ドロン演じる証券会社の社員もかなりの損害を出したようです。

 

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コンピュータが導入されるまでは、ホントにこうやって株を売買してたんですよ。

 

ヴィッティの母親は、ドロンの顧客なんですね。

支払いの回収が始まるんですね。

それにしも、ここでのドロンはホントに野卑だなあ。

そういうどこか下品なところがある役者ではあるんですけども、こんなにドロンを下品に撮った映画もないのではないか(笑)。

最初の90分くらいは比較的普通に作っていて(といっても、凡庸に作ってるって事ではないですよ)、アレッと思うくらいなんですけども、ココからが真骨頂です。

異様なまでにガラーンとした町。

 

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街全体がオブジェ作品みたいになってしまうんです。

前半は、証券取引所が出てきますから、過剰なまでに人間が出てくるのですが、ドロンの車が酔っ払いに盗まれて、暴走させた挙句、川に転落して、引き上げられるシーンから、唐突にほとんどヴィッティとドロンしか登場人物がいなくなります。

 

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イタリアじゃないみたいです。。

 

唖然とする事必定です。こんな展開の映画、見た事がない(笑)。

ずっと、「ゴーッ」という音がうっすら入っているのが、リンチみたいです(影響受けてるのかな?)。

この、なんとも言語化しづらい、アントニオーニ的としか言いようのない、観客を置いてきぼりにする映画をご覧ください。

 

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