オリンピックってなんだっけ?

ヒュー・ハドソン炎のランナー

 

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ヴァンゲリスの音楽と映像が一体化!

 

本作は戦後であり、そして、戦前でもある1924年のオリンピックパリ大会を描いた、実話に基づいたお話です。

ホントにジェントルマンシップが満ち溢れていた頃のオリンピックというものは、どういうものであったのか。という原点を確認したくなって久しぶりには見ました。

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パリ大会のポスター。

 

ケンブリッジ大学に入学したハロルド・エイブラハムズは、入学早々、第一次世界大戦で亡くなった学生たちの名簿を見るのですが、実は相当数の学生が第一次大戦で亡くなっているんですね。

 

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実際のハロルド・エイブラハムズ。のちにスポーツジャーナリストとなります。

 

デイヴィッド・アテンボローの『素晴らしき戦争』という映画も、第一次大戦を描いた名作でした。

血みどろの戦闘シーンなど一切出てきませんが、近代戦争の虚しさ、恐ろしさが伝わってきます。

本作もフレッシュメンの晩餐会での学寮長のスピーチで、多くの戦死者を悼んでおりますね。

もう一方の主人公である、宣教師の息子として、北京で生まれたスコットランド人のエリック・リデル。

 

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実際のエリック・リデル。彼は後に北京で布教を行なっているところを日本軍に捕まり、収容所で1945年に病死するんですね。。

 

彼はスコットランドでは俊足で有名なラグビー選手でした。

イギリス映画を見ていると、その英語の発音の美しさが魅力ですけども、イングランドスコットランドの英語は全く違いますね。

日本人には、スコットランドの英語のほうが聞き取りやすいですし、言葉遣いが明らかに優しいです。

 

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布教をしながら走る、リデル。

 

イングランドは、なんでしょうか、京都のようなエゲツないものを感じますよね(笑)。

「いけずの精神」というのでしょうか。

 

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ケンブリッジの名物行事で、恐るべき俊足ぶりを発揮するエイブラハムズ。

 

かたや、ケンブリッジ大学に行くほどのエリートのユダヤ人。

もう一方は、長老派のプロテスタントの宣教師の家に生まれた、純朴なラガーマンで、父の言いつけ通り、「神の栄光」のために短距離走の選手となります。

こういう、イギリス好きをうまいことくすぐる設定がニクいですよね。実話なんですけど。

個人的にはリデルの素朴な人柄に惹かれますが、ユダヤ教徒である事でイングランドでは差別されている事をエネルギーにしているエイブラハムズの闘志もまた素晴らしいです。

 

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こんなですけども、国際的な大会だったりします。テレビもラジオもありません。

 

1920年代の陸上競技を忠実に再現しているんでしょうけども、ビックリするほど素朴で、その辺のグランドみたいなところで、スコットランド代表とフランス代表の試合がおこなれているのが面白いですね。

そういえば、テレビはないし、ラジオだってまだまだ普及しきっていない時代で、 電報とか電話が最新の通信機器なんですよね。

わずか100年ほどで私たちの生活は驚くほど変わってしまったんですね。

それにしても、全編に漂う高潔な精神。

そして、浮つかず、落ち着き払った絵作りが素晴らしい。

 

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サークルの勧誘というのは、この頃の大学もやってるんですね。

 

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 オペレッタ「ミカド」の上映シーン。当時、欧米では大変人気がありました。

 

エイブラハムズとリデルの初の対決は1923年のロンドンでのイングランドスコットランドの対決。

ここでは、リデルが勝ちます。

しかし、エイブラハムズは、マサビーニをコーチとして、フォームの改造を行います。

今となっては当たり前の事ですけども、この事が「アマチュアニズムに反する」として、ケンブリッジ大学の不興を買うことになります。

さて、そんなこんなで1924年のパリ大会(日本も参加しております!)リデル、エイブラハムズはともに英国代表に選ばれますが、思わぬ事態が訪れるのですが、コレは見てのお楽しみです。

陸上競技は、事実上、イギリスとアメリカの対決になるんですけども、さてどうなるのかは是非とご覧ください。

英国の権威主義や保守的なところがとても出てくる映画なのに、見終わった後にはそんなことはきれいサッパリ忘れてしまって、ココロには清々しさばかりが残る名作。

 

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