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コレが原点。

映画

三隅研次座頭市物語

 

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勝新太郎をスターダムに押し上げた異形のヒーローの記念すべき第1作。

勝新が驚くほど若く、まだスーパーマン的な部分がなく、テレビ版に漂っているような、あの独特の虚無感はまだ漂っていないですが、やはり原点というのは、見ておくものです。

 

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座頭市というお話しの基本はもう完成していて(座頭市は、スジはいつもシンプルです)、旅から旅の生活をしている、盲目の按摩師(それを座頭というんですね)にして侠客(そして天才的な居合の達人)である、市という男が宿場町にたどり着いて、地元のヤクザにわらじを拭ぎ、そこの抗争に巻き込まれていく。という筋書きですね。

 

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飯岡助五郎一家。 

 

ある意味、この長大なシリーズは、そのヴァリエーションだけで成り立っていると言ってよく、なので、この作品の魅力は、細部にあります。

冒頭のサイコロ博打での、市がワザとサイコロを外にこぼして全員にサイコロの目がわかるようにして大負けし、今度は騙して全員からカネを巻き上げるというシーンは、市のこれまでのヒーロー像を覆る痛快なシーンですが、コレがこのお話しの価値観の基準なんですね。

また、飯岡助五郎から出入りの時の為の褒美を倍に跳ね上げるなど、抜け目のないキャラクターとして、これまでのヒーロー像を見事に変えていきました。

本作は、飯岡一家と笹川一家の抗争に座頭の市が巻き込まれていくというお話しですが、やはり見どころは、笹川一家の用心棒に没落した浪人の平手造酒(ひらてみき。と読みます)を演じる、天知茂でしょう。

 

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 座頭市と平手造酒の奇妙な友情。

 

ちなみにいうと、この平手造酒は実在する人物でして、飯岡助五郎と笹川繁蔵の抗争によって、1844年に死んでおります。

この武士でありながら、ヤクザ同士のケンカで死んだという得意なキャラクターは、講談や映画の格好の素材でして、戦前から無数の作品が作られました。

そういう大定番のキャラクターに、盲目の居合の達人を戦わせるという、キワモノ寸前の、今風に言えば、ほとんどマンガみたいな設定のお話しです。

コレを普通にやってしまうと、ホントにマンガ以下というか、どうしようもない感じですけども、勝新太郎は、この非現実的なキャラクターにどうやったら説得力を持たせることができるのかな、徹底的に腐心したようです。

あの、座頭市特有の異様な殺人は、勝新太郎自身で編み出したもののようでして、「盲目が圧倒的に強いという事はどういう事なのか?」を真剣に考えたんですね。

天知茂は、ある意味、これまで培われてきた結核になりながらも酒に溺れている剣豪。というすでに定番となったキャラクターを演じるという安定感があります。

しかも、役者としてのキャリアは明らかに天知茂が上ですし、それは画面からハッキリ伺えます。

 

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あの怪物、勝新太郎は、まだまだ天知茂を圧倒するには至っておりません。

そういう、まだまだ未完成な部分も踏まえて本作を楽しんでもらいたいですね。

三隅研次の、暗さを活かした画面演出も、素晴らしいです。

大映のプログラム・ピクチャーに過ぎなかった作品(当時の大映のスターは市川雷蔵なのであって、勝新太郎は、正直、三番手、四番手の俳優でした)が、映画26作、テレビドラマ100話にまで広がり、世界中にファンを獲得するまでになった第1作目を是非ともご覧ください。

 

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