原恵一『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』
驚いた。。
なんというか、ものすごく丁寧なんですよ。
1つ1つのセリフに一切子供だましの手抜きがないんですよ。
モーレツにすごい!とかじゃなくて日常描写がものすごくシッカリしてるんです。
「おまたのおじさん」や「れんちゃん」としんのすけの交流が素晴らしい。
しんのすけが自宅の裏庭からタイムスリップしてしまった天正2年、1574年の春日合戦という史実を絡めるという構想。
しんのすけを預かっている無骨者の武士、井尻又兵衛(しんちゃんはおまたのおじさんと呼んでます)、彼が密かに恋心を寄せる廉姫(れんちゃん)との身分の違う恋愛を、しんのすけの視点(それは現代人の視点でもありますが)からとてもデリケートに描いていることに驚嘆します。
武士同士の約束を交わす2人。アホアホ幼稚園児がしっかりとした男の子になっていく描写が素晴らしい。
なんというかですね、あまりにもちゃんと作っていて、腰が抜けますよ(笑)。
脚本は監督の原恵一が自ら書いていますが、ものすごい実力者です。というか、実写も含めて、日本でもトップクラスの方と言ってよい。
こんな、手堅い仕事ができる監督が日本にいたんですね。
しかも、『クレヨンしんちゃん』の映画で行なっているというのが、なんともすごい。
そこに野原一家もタイムスリップしてから、ドタバタ度が上がってきて、ちゃんと子供を飽きさせないように配慮して作っているところがうまい。
ホントに合戦に巻き込まれてしまった野原一家。
車ごとタイムスリップしていて、なんだか『戦国自衛隊』を彷彿とさせるのもいいですね。
こういう丹念な描写とともに、戦闘シーンが恐ろしく緻密でかなり時代考証にこだわって描かれていることにも驚いてしまいますね。
合戦シーンの描写の確かさにも驚いてしまう。
何度も言いますが、『クレヨンしんちゃん』ですよ、コレ(笑)。
しかし、やっぱり一番驚くのは、人間描写ですよね。
ひろしに刀を渡す又兵衛。こういうサムライの高潔な精神が随所に光る作品だ。
それがあればこその合戦シーンの素晴らしさですし、そこに野原一家が突撃する荒唐無稽さが生きるんですよね。
しかも、泣けますからね、この映画。
『クレヨンしんちゃん』を使ってここまで自在に自分の絵を描ききった原恵一の才能に脱帽です。
山中貞雄『丹下左膳余話・百万両の壺』や宮崎駿『ルパン三世 カリオストロの城』の系譜の作品と言えると思います。
いやー、ホントに面白かった!見てない方は是非ともご覧ください。
キッズコーナーからDVD借りるのに少々勇気が要りますが。
れんちゃんがかわゆす。。