F.ギャリー・グレイ『Straight Outta Compton』
「ギャングスタ・ラップ」というスタイルとその人気を全国区に広げた伝説的なヒップホップグループ「N.W.A」を描いた、ハードコアな青春群像。
N.W.Aのメンバー。
アイス・キューブ、Dr.ドレー、イージーEと言ったスターが在籍していましたが、突然入ってきた莫大な大金の配分や、マネージャーによは不正な帳簿操作などによってアイス・キューブ、ドレーが相次いで脱退した事で短命に終わってしまったグループですが、本作はエイズによって31歳という若さで亡くなったイージーEを主人公としており、それにキューブ、ドレーが準主役としてお話しが進んでいきます。
左から、Dr.ドレー、アイス・キューブ、イージーE。ちなみにイージーEはホンモノの麻薬の売人でした。。
ストーリーは、大金を得る事で没落していくイージーE、そして、脱退してソロとして大成功の後、俳優に転身したアイス・キューブ、そして、独立してレーベルを立ち上げ、スヌープドック、2PACをスターダムに押し上げ、自らのソロも大ヒットさせるDr.ドレーという、対照的な姿を描いていきますが、多分、事実そのままを特に劇的に盛り上げる必要もなく、そのまま描いても充分に劇的なのがすごいですよね。
お話は、いわゆる東西抗争寸前のいいところで終わるのですが(ドレーがカッコよすぎるのがズルいです)、なんだか、2PACとビギーを主人公とした作品もこの後あるのか?と期待させてくれる終わり方で、イージーの死という悲劇にも関わらず、前向きな終わり方なのがよいですね。
残酷な物言いかもしれませんが、イージーEのヒップホップにおける役割はもうすでに終わっていたのであって、すでに西海岸は2PACやヌープたちが活躍しつつある時代になっていたので、彼の余りにも若い死は残念ですが、ちゃんと仕事はやり遂げた方であると思います。
それにしても、警察のアフリカ系に対する過剰な取り調べは、2016年現在もまったく変わってないのがすごいですよね。。
突然、道端で白昼堂々と地面に伏せなくてはならいというのは。。
本作の通奏低音には、1991年の、アフリカ系アメリカ人のロドニー・キングへのロサンジェレス市警の過剰な暴行とその裁判(なんと、無罪でした)、そして、アメリカ各地での暴動があるのですが、実は、この現実は、何も変わっておらず、故に、N.W.Aの名前を全米に轟かせた名曲「Fuck The Police」の中で告発される警察官の横暴は、残念ながら、今でも有効なのですね。
コンプトンの厳しい現実をラップするアイスキューブ。ちなみに息子さんが演じてます。そりゃ似てるよ(笑)!
この映画が全米で大ヒットしている最中にも、丸腰のアフリカ系アメリカ人が射殺されたり、窒息死したりという痛ましい事件がアメリカ各地で連続しましたが、アメリカは、そろそろ、銃と麻薬犯罪をなんとかしないといけない時が来ているのではないでしょうか。
彼らのデビュー作。映画のタイトルはここから取ってます。