アンジェイ・ワイダ『夜の終わりに』
2016年に90歳で大往生した反骨の作家、アンジェイ・ワイダの若き日の作品。
フランスのヌーヴェルヴァーグは、世界中に多大な影響を与えましたが、かのワイダもモロに影響を受けていたんですね。
音楽はクシシュトフ・コメダ以下、ポーランドのジャズの名手が参加。
コレ、ホンモノのジャズメンなのでしょうかね。妙に雰囲気があるんですよ。どなたが教えてください。
ジャズメンがサントラに全面参加。というコレ自体がまさにルイ・マルの手法です。
『地下水道』『灰とダイヤモンド』という社会派の映画を作っているイメージから本作は大分かけ離れますけども、まだ、こういう事が出来る自由が当時のポーランドにはあったんでしょうね。
主人公は若いお医者さんのバジリで、ボクシングの試合前の学生の診察を行なっています。
で、趣味でジャズドラムをやってるのですが、役者さんは完全に当て振りでして(ジャズドラムなんて、そんな簡単にできるモンじゃないですので)、完全に「チンだ!ボディだ!ボディだ!チンだ!」状態です(笑)。
と言いますか、この映画のトーンは多分に「オレたちまヌーヴェルヴァーグだ!」という意気込みなのでしょうけども、どこか垢抜けなくて、どっちかというと、日活映画っぽくて、私にはとても好ましく思えます。
ワイダ、もっとこういう映画、撮って欲しかったなあ。
ホロコーストとかポーランドの共産党の圧政とか、やっぱりシンドイんですよね、ワイダは。。
『灰とダイヤモンド』世界的な大スターになったスビグニエフ・チブルスキが、バジリの友人役として、出番多くないですけども出ていて、コレがまたいいんですね。
うまいですよ、チブルスキは。
ストーリーはそれほどでもなくて、夜中のバジリとペラギアという女の子の会話が中心で、要するに、ゴダールをやってるんですね。
ペラギア。
ただし、会話がいささか大島渚っぽいのが、ワイダの味で、ある他愛のないゲームに、政治的な意味を持たせていますね。
こういう、「日活映画」が世界中でたくさん作られたのだと思いますが、本作はその中でも非常に優れた一作だと思います。
ワイダは、こういう肩の力の抜けた作品をもっと作って欲しかったというのが、偽らざるホンネではあります。
まだまだアタマで映画作ってる感じが否めない作品ですけども、ここで描かれるどうでもいい会話は、誰でも共感できるのではないでしょうか?
若い頃って、こうやって無意味に時間を浪費してるだけ。という感じがとてもよく描けているんですね。
クシシュトフ・コメダがカメオでちょっぴり出てきます。
なかなかの名シーンです。