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撮影、大変だったでしょうね。。

アレハンドロ・ゴンサーレス・イニャリトゥ『レヴェナント』

 

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 昭和っぽいポスターがナイスです(笑)。

 

 

ビーバーの毛皮を獲っていた男たちがネイティヴ・アメリカンの部族のアリカラ族たちに襲撃を受けて大半が死にました。

ビーバーの毛皮を狙われたんですね。

生き残った一行は命辛々船で川を下りましたが、安全策をとって途中から山道で逃げる事にしました。

相当な回り道になりますが、アリカラ族たちは船を降りたとこを再び襲撃する危険性がありした。

彼ら彼女らのテリトリーなのですね、この流域は。

毛皮を上陸した場所に埋めて、後で取りに来る事にしてここから徒歩で移動です。

その生き残りの1人が主人公のヒュー・グラスこと、レオナルド・ディカプリオで(オーソン・ウェルズに妙に似てますね)、奥さんはネイティヴ・アメリカンのポーニー族で、2人にはホークという息子がいます。

ディカプリオはネイティヴ・アメリカンの部族の言葉を話すことができ、ホークとはポーニー族の言語で話します。

現在のアメリカを見ると、「白人」と言われる人々のかなり割合で、このような家族が実際にいたものと思われます。

有名人でも、ケヴィン・コスナーキム・ベイシンガーという役者さんやロックバンドのパールジャムのリーダーのエディ・ヴェターは、先祖にネイティヴ・アメリカがいることを公言しています。

カナダ人ですが、シンガーソングライターのニール・ヤングもそうです。

 

なので、「白人」などというのは、かなりいい加減な概念なのだなあと思うのですが。

閑話休題

19世紀のアメリカ。を舞台とした映画はそれこそ山のようにあって、それらの多くは、「西部劇」という一大ジャンルになってますが、本作は動物を山の中に追い回して毛皮を獲っている連中の話しなので、およそ西部劇のマナーではほとんどお目にかかることのない世界であり(賞金首も保安官も出てきません)、かなり異色なシチュエーションです。

敢えて近いものを考えると、ジム・ジャームッシュ『デッドマン』ですが、こちらはファンタジーです。

またしても横道にそれましたが、この山道を進んでいると、ディカプリオが熊の家族に遭遇してしまい、熊に襲われてしまいました。

 

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 うわー!

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すごいキャメラアングル!

 

コレ、一体、どうやって撮ってるのでしょうか。

CGと組み合っているにしても、余りにもよくできていて、すごいのですが(笑)。

なんとかナイフで急所を突いて熊を殺すことができましたが、ディカプリオは重症です。

なんとか応急処置をしましたが、歩くことすらできないほどです。

仲間は途中まで運びますが、もう限界にきてしまいました。

グラスを連れているとこの山道を超える事に支障をきたしてきたのです。

止むを得ず、グラスを置いていくこととし、亡くなるまで3名が残って面倒をみる事にしました。

ここからが問題になります。

ディカプリオをラクにしてやろうと、殺そうとする者が出てきました。フィッツジェラルドトム・ハーディ)です。

これを目撃したホークがとめたのですが、ホークをナイフで刺して殺してしまいます。

グラスは重症の上、縄で縛られており、首を負傷して声もほとんど出ませんからどうすることもできません。

 

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すごいですね、ディカプリオ。。

 

食糧を確保するために離れていたブリジャーが戻ってきて、ホークの居場所を聞きますが、フィッツジェラルドはトボけます。

 

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マッドマックスの面影を全く感じさせないのが脅威的なトム・ハーディ。しばらく気がつきませんでした。

 

程なくしてアリカラ族が迫ってきてしまい、2人はグラスを置き去りにせざるを得なくなりました(実はフィッツジェラルドがでっちあげたウソであることがわかりますが)。

 

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這いつくばってでも生きる!

 

脚を骨折して歩くこともできないグラスは一体どうなってしまうのか。という、途方ない絶望を描いているのが本作のメインテーマです。

 

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またしても、アリカラ族の襲撃!

 

要するに、ここからはディカプリオの一人芝居とフィッツジェラルド、ブリージャーのトンズラ劇、本隊のトンズラ劇、そして、アリカラ族のフランス系カナダ人(映画を見ている限りではハッキリしませんが、多分そうなのでしょう)への追跡という4つが同時並行で進行していきます。

 

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だんだん装備が良くなっていきます。

 

こういう複数の話が同時進行するという手法はイニャリトゥの得意とする所ですが、本作は今までよりもずっとたくみで有機的につながっていきます。

『バードマン』以前はどこかアタマだけで映画を撮っていたフシのあるイニャリトゥですが、本作で彼の才能の開花がホンモノである事は証明されましたね。

それにしてもトム・ハーディはタフですね。

『マッドマックス』はアフリカの砂漠で撮影しているんですよ(笑)。

その後に冬山です。

よくやりますねえ、ホント。

とにかく、本作は凄絶というものを通り越していますよ。

ここまでの極限状態と映画としたという例は、あまりない。

ロベール・ブレッソンの不朽の名作『抵抗』はレジスタンス活動をしていたオトコがいかにして独房から脱獄するのか?という映画でしたが(実際は成り行きで2人で脱獄するのですが)、監獄の外にはスグにシャバの生活があるわけです。

こっちは、何もない冬山です。大自然のど真ん中です。ある意味究極のエコであり、そこにいる人間はむしろバグですが(笑)。

 

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 このディカプリオとポーニー族との出会いは本作の数少ないホッとするシーン。

 

身体が不自由で口もきけず、極限状態の環境にいる。という、アカデミー会員が査定を上げやすい設定の中で全身全霊をかけてディカプリオが実在の人物(コレも査定がよくなるポイントだと思います)を演じての、念願の主演男優賞は、ここまでやんなきゃアカデミーって獲れないのか。と、少々ぼくは途方に暮れました(笑)。

ロバート・デニーロが激ヤセ激太りで驚かせた『レイジングブル』すら、もはや稚戯にも等しくすら思わせてしまいますね。。

前作『バードマン』もそうでしたが、まあ、キャメラがすごい。

 

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とにかく、映像のクオリティが信じられない水準!

 

相当機材が小型化して移動が楽になっているとはいえ、ここまでできるのかと、呆然とする凄さです(撮影監督は前作同様エマュエル・ルベツキで撮影賞を3年連続受賞)。

イニャリトゥも監督賞を2年連続受賞。

日本人には、白戸三平や矢口高雄の「自然の驚異」を描いたドキュメンタリータッチのマンガに「北米大陸の白人の原罪」を加味して映像化したように見えてしまう、ガチ『デッドマン』& 復讐劇。

しかも、タルコフスキーのような崇高さすらあります。

コレを描いているのが、メキシコ人の監督と撮影監督なのですね。

イニャリトゥはコレで本物のアメリカ映画の巨匠になったのではないでしょうか

 

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 毛皮商人たちが大量に殺害したバイソンの頭骨の山。現代文明の始まりである。