三隅研次『斬る』
冒頭からいきなりアクション!
市川雷蔵の「剣三部作」の第1作目。
いきなり女性同士のアクションから始まって、あっという話に20年以上年月が経ってしまう、べらぼうなまでにサクッと進んでしまう、手際がよいを通り越した割りきりぶりがすごい。
さて、市川雷蔵は、「なんとなく」自分探しの3年(!)の旅に出てしまいます。
今ひとつどういう話しなのかわからないまんま、見る側をほとんど置いてきぼりにしていきます。
で、その旅も「お兄様、どうしてるかな〜」と妹が言ったと思ったら、もう次のシーンで雷蔵が「戻ったぞ」と旅が終わってます(笑)。
三隅研次、すげえなあ。。
3年があっという間(笑)。
しかし、そんな平和ボケしきったところに、水戸藩から流れてきた剣豪を藩が召しかかえました。
彼と藩士たちが御前試合するのですが、剣豪は異様までに強く、全員打ちのめされてしまいます。
そこで殿様が、雷蔵にやらせてみろ。と、言うので、雷蔵は異様な構えで剣豪と対峙するのですが、剣豪は雷蔵の並々ならぬ迫力に蹴落とされ、審判も「そこまで!」をと声をかけて試合をとめてしまいました。
雷蔵の殿様の寵愛が強くなるのは必然です。
しかし、コレが面白くないのが、雷蔵の家の隣に住む武士です。
彼の息子も試合に出たのですが、剣豪に呆気なく撃沈された事が面白くありません。
その腹いせに、同僚たちに雷蔵の出生の秘密(彼も完全に知っているわけではなく、推測を含めて言ってます)をペラペラとしゃべるんですね。
これをたまたま雷蔵が通りかかって聞いてしまうんです。
この「出自の謎」が雷蔵をなんとなくの自分探しの旅に駆り立てていたのだ。という事がここでようやくわかりますね。
この事が雷蔵一家の崩壊の始まりでして、詳しい話は敢えて省略しますが、エラくややこしい出生の秘密が、養父が一挙に語られる異様な話しが、冒頭とようやくつながります。
この2人が雷蔵の実の親。天知茂が雷蔵の父親ってスゴイ(笑)。
ここから、なんとなくの自分探しではなく、ホントの放浪の物語となっていくんですね。
とにかくせわしなくも異様な展開の連続で見てると大変な作品です(笑)!
なぜか出てくる謎のお色気シーン!
雷蔵は、幕末の動乱にすら巻き込まれるのです(水戸藩の大目付に用心棒として仕えています)。
こんな急展開の連続なのに、80分も上映時間がない事も驚きでありますが、多少乱暴でも面白けりゃいいんだという三隅演出は、非常に型破りです。
いちいちキャメラアングルがカッコいいのもこの映画の特徴です。
でました、三絃の構え!
アッと驚く呆気ないラストにも驚きました。
かなりの異色作ですが必見です。